飲食店が使える補助金·助成金はたくさんあるのですが、自分や自社が使える補助金·助成金があることを知らない飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。
国や自治体は、補助金·助成金を活用して事業を拡大させ、経済発展や雇用状況の改善に貢献してもらいたいと考えています。
コロナ対策やよりよいメニュー作り、店舗運営、サービス提供、従業員の労働環境改善·雇用拡大のために、補助金·助成金の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事では、飲食店が使える補助金·助成金の概要と、具体的に何ができるのか活用例を解説します。
- 目次 -
飲食店は補助金·助成金を使って何ができるのか
飲食店が使える補助金·助成金は非常にたくさんあるので、飲食店の経営者が「こんなことをやってみたい」と思ったら、それに該当する補助金や助成金がないか、確認してみるといいでしょう。飲食店が補助金·助成金を活用する具体的な方法として、以下のようなものがあります。
- IT導入(オーダーのためのタブレットを導入する、事務作業のツールを導入するなど)
- 新しい業態へのチャレンジ(デリバリーや軒先販売など)
- 店舗の改善(大部屋を個室にする、空気清浄器を設置したり換気システムをよくするなど)
- 機材の導入(冷凍庫や真空充填機の導入など)
- 事業承継(M&A)
- 雇用改善(パートを正社員にしたり、キャリアアップ制度を設けたりなど)
以下の章で、くわしく説明していきます。
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飲食店が使える5つの補助金
飲食店が使える補助金を5つ紹介します。
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業承継·引継ぎ補助金(M&A補助金)
①事業再構築補助金~ポストコロナ時代を生き抜くために
事業再構築補助金は、ポストコロナ·ウイズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために事業の再構築を行う事業者を支援するものです。
飲食事業を再構築することも「事業再構築」になるので、飲食店もこの補助金を使えます。
制度の概要
事業再構築補助金制度は、新分野展開、業態転換、事業·業種転換、事業再編への取り組みを行い、事業再構築に挑戦する中小企業等を支援するものです。
事業再構築補助金には「通常枠」「大規模賃金引上枠」「回復·再生応援枠」「最低賃金枠」「グリーン成長枠」「緊急対策枠」があり、自身·自社の飲食店に当てはまる枠を選んで申請することになります。
そのほかに次の2つの条件があります。
- 2020年4月以降の連続する6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年、または2020年1月~3月)の同3カ月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
- 事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関などと共同で策定すること
通常枠の補助金の額
- 従業員20人以下:100万~2,000万円
- 従業員21~50人:100万~4,000万円
- 従業員51~100人:100万~6,000万円
- 従業員101人以上:100万~8,000万円
通常枠の補助率
- 中小企業者等:2/3(ただし6,000万円超は1/2)
- 中堅企業等:1/2(ただし4,000万円超は1/3)
スケジュール
第7回の応募締切は2022年9月30日ですが、今年度は第8回までが予定されています。
通常枠の補助対象経費
建物費、機械装置·システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝·販売促進費、研修費
事業再構築のなかで上記の経費が発生したときに補助金が支給される、という仕組みになります。
事業再構築補助金の飲食店活用事例
※活用例1
青森県の飲食店·食料品製造の会社は、コロナ禍で、カフェと土産店の売上が40%減ってしまいました。そこで自社の密閉製法技術を使って、レトルト食品事業を新規に始め、EC販売をすることに事業再構築補助金を活用しました。
※活用例2
埼玉県のイタリア料理店は8店舗を運営していましたが、売上が最大7割減ることもありました。そこで冷凍品の軒先販売と宅配を新規に始めることにして、この補助金を活用しました。
参考)https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
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②小規模事業者持続化補助金~経営を持続するために
小規模事業者持続化補助金とは、経営を持続するために経営計画を作成し、販路拡大や生産性向上などの取り組みを行う小規模事業者を対象に、その経費の一部が補助されるというものです。※9/15一部修正済み
一般型
一般型は販路開拓などを支援します。
制度の概要
一般型には「通常枠」、「卒業枠」、「創業枠」などがあります。
一般型(通常枠)の補助上限額と補助率
通常枠の補助金の上限額は50万円で、補助率は原則2/3です。
スケジュール
- 第9回公募:2022年9月20日
- 10回目受付締切回以降については今後発表
補助対象経費
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会·商談会などを含む)、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託·外注費
小規模事業者持続化補助金の飲食店活用事例
※活用例1
東京都内に店を構えるスペインバルは、衛生向上や省スペース化のためのショーケースの設置や、生産販売拡大のための鍋·オーブン·冷凍冷蔵庫の新設にこの補助金を活用しました。
※活用例2
名古屋市のアイスクリーム店は、チラシ制作の外注費用·発送、Webサイトの検索エンジン対策、展示会への出展などにこの補助金を活用しました。
参考)https://r3.jizokukahojokin.info/
③ものづくり補助金~革新的サービスを生み出すために
正式名称は「ものづくり·商業·サービス生産性向上促進補助金」で、商業のなかに飲食業も入るので、飲食店も対象になります。
制度の概要
ものづくり補助金には一般型(通常枠、回復型賃上げ·雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠)とグローバル展開型があります。
ここでは、飲食店が使いやすいと思われる一般型·通常枠について解説します。
補助金の対象となるのは、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入)などに対応するため、革新的サービス開発·試作品開発·生産プロセスの改善を行うための設備投資などを行う中小企業·小規模事業者などです。
一般型·通常枠の補助上限額と補助率補助上限額
750万~1,250万円(従業員の人数による)
補助率
中小企業などは1/2、小規模事業者などは2/3
スケジュール
応募締切は2022年10月24日
補助対象経費
機械装置·システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
ものづくり補助金の飲食店活用事例
※活用例1
地魚専門居酒屋の会社は、骨まで丸ごと食べられる地魚の加工食品をつくるのにこの補助金を活用しました。
※活用例2
店内飲食専門のカフェが、大型のオーブンを導入して一度に大量生産できるようにしてケーキのテイクアウトに対応しました。
④IT導入補助金~ITツールを導入するときに
IT導入補助金は、中小企業と小規模事業者がITツールを導入するときに使える補助金です。
IT補助金には「通常枠」、「セキュリティ推進対策枠」、「デジタル化基盤導入枠」がありますが、ここでは飲食店が使いやすいと思われる通常枠について解説します。
制度の概要
通常枠の対象になるのは、業務効率化や売上アップに貢献するITツールを導入する中小企業と小規模事業者です。
補助金額と補助率
- プロセス数が1つ以上の場合:30万~150万円
- 4つ以上の場合:150万~450万円
- 補助率はどちらも1/2。
スケジュール
- 5次締切分:2022年9月5日
- 6次締切分:2022年10月3日
補助対象経費
ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費
IT導入補助金の飲食店活用事例
※活用例1
札幌市のカレー店は店が混み合う時間帯の人員不足に頭を悩ませていた。そこでタブレット端末から料理を注文できるセルフオーダーシステムを導入するのにこの補助金を活用。注文をデジタルデータとして収集、蓄積できるので、お客さまの注文の傾向などを分析、マーケティングに利用した。
※活用例2
たこ焼き屋を5店舗運営するさいたま市の会社は、アルバイトスタッフの勤怠管理や給与計算、給与明細の配布などに苦労している。そこで給与計算、給与明細、スタッフの勤怠管理などをクラウド上で管理·確認できるシステムを導入。事務手続きを圧縮でき、スタッフもスマホで全て管理できるで喜んだ。
参考)https://www.it-hojo.jp/overview/
⑤事業承継・引継ぎ補助金(M&A補助金)~経営資源を引き継ぐために
事業承継·引継ぎ補助金はM&A補助金と呼ばれることもあります。M&Aとは合併と買収のことです。
制度の概要
事業承継·引継ぎ補助金は以下のような制度体系になっています。
- 1)事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)、2)事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)、3)事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ)の3つがある
- 3つのうち1)事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)には、A)創業支援型、B)経営者交代型、C)M&A型の3つがある
- 3つのうち2)事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)には、D)買い手支援型、E)売り手支援型の2つがある
補助金額と補助率
1)事業承継・引継ぎ補助金(経営革新) 2)事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用) |
100万~600万円、2/3(廃業費は上乗せで、プラス150万円以内) |
3)事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ) |
50万~150万円、2/3 |
スケジュール
応募締切は1)2)3)共通です。
- 2次公募:2022年9月2日
- 3次公募:2022年11月下旬
- 4次公募:2023年2月上旬
補助対象経費
1)事業承継・引継ぎ補助金(経営革新) |
■事業費 人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注費、委託費 ■廃業費 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転·移設費用 |
2)事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用) |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転·移設費用) |
3)事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ) |
廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転·移設費用) |
事業承継・引継ぎ補助金の活用例
- 法人の設立や個人事業主として開業する
- 廃業を予定している者から株式譲渡、事業譲渡などで経営資源を引き継ぐ
- 事業再編や事業統合のM&A
- 経営資源を譲り受けたあとにシナジーを活かした経営革新を行う
- 地域の雇用や地域経済を牽引する事業を行っていて、これを第三者が引き継ぐとき
- 会社を廃業するために、廃業登記、在庫処分、建物や設備の解体などを行う
飲食店が使える3つの助成金
飲食店が使える助成金を3つ紹介します。
①東京都:飲食事業者の業態転換支援事業~テイクアウトや宅配を始めるために
国だけでなく自治体のなかにも飲食店をサポートする助成金を用意しているところがあります。
そのうち東京都が行っている飲食店に限定した支援制度の「飲食事業者の業態転換支援事業」を紹介します。
制度の概要と活用方法
飲食店が新たにテイクアウト、宅配、移動販売を始めるときに活用できます。
補助金の上限額は100万円で補助率は4/5。
応募締切は2022年10月31日。
補助対象経費は以下のとおりです。
販売促進費(印刷物制作費、PR映像制作費、広告掲載費など)、車両費(宅配用バイクリース料、台車など)、器具備品費(Wi-Fi導入費、タブレット端末、梱包·包装資材など)その他、宅配代行サービスの初期登録料、月額使用料、配送手数料など。
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/conversion.html
②雇用調整助成金~コロナ禍でも雇用を維持するために
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)は、コロナ禍によって事業の縮小が余儀なくされながらも、従業員の雇用を維持する事業者を支援します。
制度の概要と活用方法
雇用調整助成金を受けられるのは、労使間の協定に基づき雇用調整(休業)を実施して、休業手当などを支給した事業主です。
労使間の協定とは、経営者と労働者の代表の間の取り決めのことです。
飲食店でも休業手当を労働者に支給したら対象になります。
助成額は条件によってさまざまですが、基本的な上限額は労働者1人1日当たり9,000円です。
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)の対象期間は、2022年9月30日までとなります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html#abstract
③キャリアアップ助成金~非正規を正規社員にするなら
キャリアアップ助成金は、事業者が、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を正社員にしたり、その処遇を改善したりしたときに支給されます。
制度の概要
キャリアアップ助成金には次のようなコースがあります。( )内は助成金の額です
■正社員化支援
- 正社員化コース(1人57万円など)
■処遇改善支援
- 賃金規定等改定コース(1人32,000円など)
- 賃金規定等共通化コース(1事業所当たり57万円など)
- 賞与·退職金制度導入コース(1事業所当たり38万円など)
- 選択的適用拡大導入時処遇改善コース(1事業所当たり19万円など)
- 短時間労働者労働時間延長コース(1人当たり22.5万円など)
応募締切は案内されていません。
キャリアアップ助成金の活用方法
- 派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する
- すべてまたは一部の有期雇用労働者の基本給の賃金規定などを2%以上増額改定し、昇給させる
- 有期雇用労働者に関して正規雇用労働者との共通の職務に応じた賃金規定などを新たに作成して適用させる
- 有期雇用労働者に関して賞与·退職金制度を新たに設け、支給または積立てを実施する
- 社会保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取り組みを実施する
- 短時間労働者の週所定労働時間を延長するとともに、処遇の改善を図り、新たに社会保険の被保険者にする
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
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補助金の専門家、助成金の専門家など数多く在籍しています。初回のメール相談は無料です。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局 月見里
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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