AIを使ったシステムを導入して生産性やサービスの向上を図ったり、AIそのものの開発をしたりする企業等が利用できる補助金として、IT導入補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金などがあります。
AI導入もAI開発も相応のコストがかかるため、企業の負担は小さくありません。補助金を活用できれば、その負担を軽減可能です。
この記事では、AI導入および開発に使うことが可能な補助金の詳細を紹介します。
- 目次 -
AI導入・AI開発に使える3つの補助金とは
2024年に企業がAIを導入したり、AIを開発したりする際に使える補助金は次の3つです。
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
この3つの補助金は、AI導入やAI開発企業だけでなく、他の取り組みに対しても幅広く使うことができます。たとえばAI開発を行って新製品を作った場合、その製作コストのみならず、新製品の販売促進のためのプロモーションや専門家のアドバイス費用なども補助対象経費となる可能性があります。
なお、いずれも「単純なAIの導入や開発だけで補助金が交付される」しくみにはなっていません。それぞれの補助金には要件があり、補助金交付の対象となるAI導入やAI開発はその要件をクリアしたものでなければなりません。
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IT導入補助金
IT導入補助金の目的は、中小企業等のITツールの導入を支援することです。AIはITツールに含まれるため、AI導入企業はIT導入補助金を使える可能性があります。
また、非AIであってもITに関するものであれば対象になる可能性があります。
対象となる事業者
IT導入補助金の対象になる企業は、中小企業と小規模事業者です。中小企業とは、製造業・建設業・運輸業なら資本金3億円以下、常勤従業員300人以下と規定されています。小規模事業者とは、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)であれば常勤従業員5人以下となっています。
対象事業、要件
IT導入補助金は、審査に通った企業が対象事業をおこない、補助金の対象になると判定されたときに交付されます。対象事業を紹介します。
IT導入補助金には複数の枠が存在します。そのうちのひとつである通常枠の対象事業は、業務の効率化や売上アップに資する、自社の課題にあったITツールの導入になります。
また、そのITツールは業務プロセスをサポートするものでなければなりません。業務プロセスには、顧客対応、販売、決済、債権債務、資金回収管理、供給、在庫、物流、会計、財務、経営、総務、人事、給与、労務、教育訓練、法務などがあります。
通常枠以外にも次の枠が存在します。
- インボイス枠(インボイス対応類型):インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトを導入し労働生産性の向上をサポートする
- インボイス枠(電子取引類型):インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援する
- セキュリティ対策推進枠:サイバー攻撃の増加にともなう潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援
- 複数社連携IT導入枠:サプライチェーンや商業集積地に属する複数の企業が連携してITツールを導入する取り組みを支援する
補助金の上限額
IT導入補助金の補助金の上限額と補助率を紹介します。
補助金の上限額 | 補助率 | |
通常枠 | ●1プロセス以上:5万円以上、150万円未満
●4プロセス以上:150万円以上、450万円未満 |
1/2以内 |
インボイス枠
(インボイス対応類型) |
●インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフト | |
50万円以下 | 3/4以内、または4/5以内 | |
50万円超~350万円以下 | 2/3以内 | |
●パソコンやタブレットなど:10万円以下
●レジや券売機など:20万円以下 |
1/2以内 | |
インボイス枠
(電子取引類型) |
350万円以下 | 2/3以内、または1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円以上、100万円以下 | 1/2以内 |
複数社連携IT導入枠 | (一例のみ紹介)
●基盤導入経費のうちソフトウェア 50万円以下×グループ構成員数、3,000万円以下 |
3/4以内、または4/5以内 |
IT導入補助金2024のスケジュール
枠 | 締切 | 公募締切日 |
通常枠 | 1次締切分 | 2024年3月15日 (金) 17:00 |
2次締切分 | 2024年4月15日 (月) 17:00 | |
3次締切分 | 2024年5月20日 (月) 17:00 | |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 1次締切分 | 2024年3月15日 (金) 17:00 |
2次締切分 | 2024年3月29日 (金) 17:00 | |
3次締切分 | 2024年4月15日 (月) 17:00 | |
4次締切分 | 2024年4月30日 (火) 17:00 | |
5次締切分 | 2024年5月20日 (月) 17:00 | |
インボイス枠(電子取引類型) | 1次締切分 | 2024年3月15日 (金) |
2次締切分 | 2024年4月15日 (月) | |
3次締切分 | 2024年5月20日 (月) | |
セキュリティ対策推進枠 | 1次締切分 | 2024年3月15日 (金) 17:00 |
2次締切分 | 2024年4月15日 (月) 17:00 | |
3次締切分 | 2024年5月20日 (月) 17:00 | |
複数社連携IT導入枠 | 1次締切分 | 2024年4月15日 (月) 17:00 |
ものづくり補助金
ものづくり補助金の正式名称は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金ですが、所管する中小企業庁もこれをものづくり補助金と呼んでいます。
ものづくり補助金の目的は、中小企業等の革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善をおこなうための設備投資などを支援することです。
対象となる事業者
ものづくり補助金の対象となる企業は中小企業、組合、小規模事業者などです。
対象事業、要件
ものづくり補助金は審査に通った企業が対象事業をおこない、補助金の対象になると判定されたときに交付されます。
以下、ものづくり補助金パンフレットより引用:
中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス等の省力化のための設備投資・システム構築を行い、
①付加価値額 年平均成長率3%増加
②給与支給総額年平均成長率1.5%増加
③事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
の基本要件等を目指す3~5年の事業計画に取り組むこと。
ものづくり補助金には複数の枠が存在します。そのうちのひとつである製品・サービス高付加価値化枠は、DXに資する革新的な製品やサービス開発の取り組みに必要な設備やサービスへの投資などを支援します。
「DXに資する革新的な製品やサービス」とは、AI、IoT、センサー、デジタル技術を活用した遠隔操作や自動制御、プロセスの可視化の機能を有するソフトウェアやシステム、部品などのことです。
ものづくり補助金には製品・サービス高付加価値化枠以外にも次の枠が存在します。
- 省力化(オーダーメイド)枠:人手不足の解消に向けて、生産プロセスやサービスの提供方法を効率化、高度化する取り組みに必要な設備・システム投資などを支援する
- グローバル枠:海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資などを支援する
なお、いずれの枠でも、以下の3つの要件を満たす3~5年の事業計画書をつくり、実行する必要があります。
- 付加価値額:年平均成長率+3%以上増加
- 給与支給総額:年平均成長率+1.5%以上増加
- 事業内最低賃金:地域別最低賃金+30円以上
この3つの要件のほかにも枠ごとに要件が設定されていて、それらもクリアしなければなりません。
補助金の上限額
ものづくり補助金の補助金の上限額と補助率を紹介します。
補助金の上限額(従業員数などによって異なる) | 補助率 | |
製品・サービス高付加価値化枠 | ●通常類型
750万~2,250万円 |
●中小企業1/2
●小規模・再生など2/3 |
●成長分野進出類型(DX・GX)
1,000万~3,500万円 |
2/3 | |
省力化(オーダーメイド)枠 | 750万~1億円 | ●中小企業1/2
●小規模・再生2/3 |
グローバル枠 | 3,000万~4,000万円 | ●中小企業1/2
●小規模2/3 |
ものづくり補助金の2024年スケジュール
現在(2024年2月7日)、17次・18次のスケジュールが公開されています。
17次締切 | 18次締切 | |
公募開始日 | 令和5年12月27日(水) 17時 | 令和6年1月31日(水) 17時 |
申請開始日 | 令和6年2月13日(火) 17時 | 令和6年3月11日(月) 17時 |
申請締切日 | 令和6年3月1日(金) 17時 | 令和6年3月27日(水) 17時 |
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小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金の目的は、小規模事業者等の販路開拓や業務効率化、生産性向上の取り組みを支援することにあります。
参照:小規模事業者持続化補助金
対象となる事業者
持続化補助金の対象となるのは小規模事業者等で、商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業、製造業などであれば、常時使用する従業員20人以下の事業者です。個人事業主も該当業種であれば対象になります。
対象事業、要件
持続化補助金は審査に通った企業が対象事業をおこない、補助金の対象になると判定されたときに交付されます。対象事業は、次の2つの要件をすべて満たすものになります。
- 経営計画に基づいて実施する、販路開拓と、それにあわせておこなう業務効率化(生産性向上)のための取り組みであること
- 商工会議所の支援を受けながら取り組むこと
具体的な対象事業のうちAI導入・開発に関わるものには、新商品の開発や、倉庫管理システムや労務管理システムの購入などがあります。
持続化補助金には次の5つの枠があります。
- 通常枠:販路開拓と、それにあわせておこなう業務効率化(生産性向上)のための取り組みを支援する
- 賃金引上げ枠:最低賃金の引き上げに加えてさらなる賃上げをおこない、従業員に成長の果実を分配している事業者を支援する
- 卒業枠:常時使用する従業員を増やし、小規模事業者として定義する従業員の枠を超え事業規模を拡大する事業者を支援する
- 後継者支援枠:将来的に事業承継をおこなう予定があり、新たな取り組みをおこなう後継者候補として「アトツギ甲子園」のファイナリストなどになった事業者を支援する
- 創業枠:産業競争力強化法に基づく認定市区町村、または認定市区町村と連携した認定連携創業支援等事業者が実施した特定創業支援等事業による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者を支援する
- インボイス特例:2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった、または、免税事業者であることが見込まれる事業者、および2023年
10月1日以降に創業した事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者に、補助上限額を一律50万円上乗せする
補助金の上限額
補助金の補助金の上限額と補助率を紹介します。
補助金の上限額 | 補助率 | |
通常枠 | 50万円 | 原則2/3 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | |
卒業枠 | ||
後継者支援枠 | ||
創業枠 | ||
インボイス特例 | 上記の補助上限額に50万円を上乗せ |
小規模事業者持続化補助金の2024年スケジュール
第15回小規模事業者持続化補助金スケジュール
- 公募要領公開:2024年1月16日(火)
- 申請受付開始:未定
- 申請受付締切:2024年3月14日(木)
- 採択・交付決定:2024年6月頃
- 実施報告書の提出:2024年11月10日まで
小規模事業者持続化補助金の2024年実施内容・詳細についてはこちらの記事でも解説しています。
事業再構築補助金について
事業再構築補助金の2024年の実施については現在は未定となっており、こちらの記事でご紹介している通り、経済産業省が11月に発表した資料によると、中小企業等事業再構築促進事業(事業再構築補助金)を再編して中小企業省力化投資補助事業が創設されることが分かりました。
過去に公募のあった事業再構築補助金ではAI導入・AI開発も補助対象経費となりえたのですが、今後、事業再構築補助金という名前で補助金が持続されるのか、どのような補助金となるかによって2024年も引き続きAI導入・AI開発に使えるかは変わります。
企業がAIを導入する4つのメリット
国は中小企業等に、AIを使ったシステムを導入するよう促しています。経済産業省は「中小企業の経営者・担当者のためのAI導入ガイドブック」を作成し、中小企業等がAIを導入する4つのメリットを紹介しています。
経済産業省のガイドブックが示すとおり、AIの活用は、中小企業等にメリット(利益)をもたらすものといえるでしょう。
参照:「中小企業の経営者・担当者のためのAI導入ガイドブック」(経済産業省)
AI導入4つのメリット
経済産業省が示すAI導入企業にもたらされる4つのメリットは次のとおりです。
- 利益増加
- 従業員の離職防止
- 技術継承の促進・若手の育成
- 優れた人材の採用
ひとつずつみていきましょう。
①利益増加
AIはさまざまな業務を効率化させたり自動化させたりするため、導入による生産性の向上、売上増、コスト削減が期待できます。これらが実現することで利益が増えます。
中小企業等のAI導入による経済効果は2025年までに11兆円におよぶとされています。
②従業員の離職防止
AIは単純作業を担うので、従業員は創意工夫が求められる業務に集中できます。その結果、従業員は働く満足度を上げることができるので離職を防止できるわけです。
③技術継承の促進・若手の育成
AIは、ベテラン従業員が持つ高度なスキルや深い知識を体系化・定義化することができます。そのため、若手がAIを経由して高い技術や知識を引き継ぐことが可能です。
④優れた人材の採用
AIを導入した企業は、世間から「先進的な取り組みができる会社」「業務課題に対して技術的知見を反映させることができる会社」と認知されるようになります。そのような会社に「入りたい」と思う人が増えることが期待されるため、優れた人材の採用が可能になるわけです。
なぜAI導入企業に補助金が必要なのか
AI導入は企業にメリットをもたらしますが、導入には手間とコストと時間がかかります。AI導入コストは中小企業等の利益を一時的に押し下げるでしょう。
そのため国がAI導入企業のコスト負担を軽減すべく補助金をもうけています。
AI開発における補助金活用
AIを使ったシステムは、情報システムや業務システムの進化版といえます。そのため、従来の非AIシステムを開発する企業が、AIを搭載したシステムを開発することがあります。また、AIはコンピュータ技術のなかでも最新のものになるため、IT技術者が起業した会社がAIシステムをつくることもあります。その際にかかるコストに補助金を活用することができます。
なぜAI開発企業に補助金が必要なのか
AI開発企業に補助金が必要になるのは、開発に関わる初期投資に多額の資金が必要だからです。従来の非AIシステムでも開発の初期投資は必要ですが、AI開発では従来よりも大きな資金が必要になるでしょう。
多額の初期投資が必要になる原因のひとつが人件費です。AI開発ができる人材は多くないため、AI人材は高額年収で迎え入れることになります。
また、AIを導入する企業はAIシステムに、非AIシステムよりも高い機能を期待しています。AI開発企業は、この期待に応えるために難易度の高い開発に取り組むことになります。そのため、開発コストが膨らむのです。
補助金の相談はドリームゲートへ
中小企業等が、AIの導入を検討していたり、AI開発に携わっていたりする場合には、補助金を利用できるかもしれません。AIの導入・開発には資金が必要であり、補助金の利用はその一助になるでしょう。
ただ、AI関連の補助金は複数の種類があり、要件なども複雑です。そのため、専門家によるサポートがあれば心強いでしょう。ドリームゲートには、補助金に詳しい専門家が数多く在籍しています。初回のメール相談は無料ですので、気軽に補助金についてお尋ねください。
執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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