市場分析はこの5ステップ!無料ツールを使って創業を成功させよう!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: さいとう ひろき

ドリームゲート認定アドバイザーの齋藤宏樹です。中小企業診断士として登録して15年になります。現在は、一般社団法人千葉県中小企業診断士協会の理事・副会長、中小企業基盤整備機構の経営アドバイザーとして活動しています。様々な業種業態の創業支援から、企業様の経営改善、業務プロセス改革、ICT化・DX化と幅広い領域で延べ100社以上をサポートさせていただいています。

創業において、市場分析は重要な役割を果たします。市場分析を行うことで、ビジネス戦略を立てる際に顧客のニーズやトレンドを把握し、競合他社との差別化を図ることができます。この差別化を図るということはとても大事なことで、とにかく尖がった商品やサービスを市場機会のあるマーケットに打って出ていくことが、創業で成功するためにとても重要になります。

ただし、自社の強みを活かして、競合他社との差別化を実現した商品やサービスを確立しても、投入するマーケットを誤ると売り上げの確保は難しくなります。

今回は、創業計画を立てる前の事前準備として行っておきたい無料で行える「市場分析」の手法を、事例とともに皆さんにご紹介したいと思います。

是非、創業の成功確率を高めるために且つ、説得性の高い事業計画書とするために参考にしていただけたら幸いです。

1.市場分析とは

(1)市場分析とは?

市場分析とは、特定の市場における顧客のニーズや要求、競合他社の動向、市場の規模や成長性などを評価して、ビジネス戦略を策定するプロセスになります。この分析には、想定市場規模の算出、ターゲット市場の特定、市場トレンドの把握、競合分析などが含まれます。

(2)市場分析を行うメリットについて

市場分析を行うメリットは以下の通りです。

  • 顧客のニーズや市場の動向を把握し、製品やサービスを効果的に開発・提供するための基礎知識を得ることができ、マーケットの理解が進みます。
  • 競合他社や市場の障壁、規制などのリスク要因を予測し、リスクを軽減するための戦略を立てることができ、リスクの軽減を図ることができます。
  • 市場分析は新たなビジネスチャンスや成長可能性のある市場セグメントを特定するのに役立ちます。
  • 市場分析に基づいて、マーケティング戦略や価格戦略、販売チャネル戦略などを最適化し、競争力を高めることができます。

(3)市場分析を行わないことによるリスクについて

市場分析を行わないことによる考えられるリスクは以下の通りです。

  • ニーズやトレンドを見誤り、不適切な製品やサービスを提供してしまい、事業の失敗リスクが高まります。
  • 競合他社の動向や市場の変化に対応できず、競争力が低下する可能性があります。
  • 無駄なマーケティングや開発活動に資源を投入することになり、結果的に資金や時間の浪費につながるリスクが高まります。
  • 創業や製品・サービスの提供を考える際には、市場分析を適切に実施することが成功の鍵となります。
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2.モデルケースで紹介・今回の創業想定企業

今回は、東京都港区の田町駅でフィットネスジムを創業しようとしているという想定で、具体的にどのように市場分析を行っていくのか5ステップの手順を説明したいと思います。

【創業想定企業】

  • 売上計画:2,700,000円/月(客単価 9,000円×300人)
  • 広告宣伝費:160,000円/月
  • 人件費:1,100,000円/月(アルバイト 150,000円×4名、社員 500,000円×1名)
  • 地代家賃:540,000円/月(坪単価 18,000円×30坪)
  • その他経費:400,000円/月
  • 利益:500,000円/月

2-1.市場の成長性を見る

フィットネスジムの今後の成長性を探っていきましょう。今後の市場は縮小していくのか、拡大が見込まれるのか、経済産業省の公開情報と、同業大手の決算見込みから業界動向を探っていきます。

(1)経済産業省「特定サービス産業動態統計」から

サービス産業毎の売上高の時系列データを参照することができます。フィットネスクラブの売上高は、コロナ禍の2020年度に売上高が減少しましたが、その後回復基調にあることがわかります。

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/index.html

(2)経済産業省「第3次産業活動指数」から

こちらは、産業品目ごとに2015年の実績を100とした場合の時系列の指数データとなります。こちらでも2020年にコロナ禍により減少していますがその後回復基調であることがわかります。

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/index.html

(3)上場企業フィットネス会社の業績見通しから

フィットネス業界の大手では次年度の業績予想を行っています。この業績予想からも今後の業界の見通しについての参考とすることができます。

2-2.商圏分析とは

(1)商圏分析とは

商圏分析とは、特定のビジネスが影響を与える地域や顧客の範囲を評価するプロセスになります。主に小売業やサービス業において使用されますが、他の業種でも適用可能です。商圏分析では、主に以下の要素を分析していきます。

  • 顧客の居住地や通勤経路などの地理的情報
  • 顧客の人口統計情報(年齢、性別、所得など)
  • 競合他社の位置や影響範囲
  • ビジネスの立地やアクセス性
  • 地域の経済的な特性やトレンド

(2)商圏分析を行うメリットとは

商圏分析を行うことのメリットは以下の通りです。

  • ビジネスが影響を与える地域や顧客の範囲を理解し、市場のポテンシャルを把握することができます。
  • 最適なターゲット市場を特定し、マーケティング戦略を効果的に展開することができます。
  • 競合他社の位置や影響範囲を把握するのに役立ち、競争力を高めるための戦略を立てることができます。
  • 商圏分析に基づいて、新規出店やサービス提供エリアの選定などの戦略を策定することができます。

(3)商圏の範囲の定義

商圏の範囲の定義は、下表にように店舗を中心とした距離によって分類します。

距離 時間 業種
500m以内案 徒歩5分以内 コンビニ・飲食店(駐車場なし)
1,000m以内 徒歩10分・自転車 美容室・学習塾(駐車場なし)
2,000m以内 自転車・自動車5分 スーパー・ドラッグストア・駐車場付き店舗

(4)無料で利用できる商圏分析ツール「jSTAT MAP」について

地図で見る統計(jSTAT MAP)は、誰でも使えるWebサイトの地理情報システムです。統計地図を作成する他に、利用者のニーズに沿った地域分析が可能となるようなさまざまな機能を提供しています。防災、施設整備、市場分析等、各種の詳細な計画立案に資する基本的な分析が簡単にできます。(政府統計の総合窓口より)

https://www.e-stat.go.jp/gis/gislp/

2-3.推定市場規模を探る

今回の創業想定企業の推定市場規模を算出してみましょう。

(1)統計DashBoardで地区の概要を知る

「統計DashBoard」というツールを用いて、出店予定地の東京都港区の概要を把握します。

https://dashboard.e-stat.go.jp/

(2)総務省の「家計調査年報」より1世帯当たりの消費支出額を把握する

まずは、総務省の公開情報から、1世帯当たりの「フィットネスジム」に消費する消費額を把握します。

https://www.stat.go.jp/data/kakei/npsf.html

(3)商圏の世帯数を算出する

先ほどの「jSTAT MAP」を用いて、今回出店を計画している港区JR田町駅を基点とした場合の商圏世帯数を調査します。

(4)推定市場規模を算出する

2-3-(2)の1世帯当たりの「フィットネスジム」に対する世帯消費額と、2-3-(3)商圏の世帯数から推定市場規模を算出します。

推定市場規模は、「一世帯当たりの消費額×総世帯数=一世帯当たりの年間消費額」で計算します。

(5)市場規模におけるシェアの目安について

市場規模の目安は、一般的に下の表のように定義されています。創業で目標としたいのは市場シェア3%を確保することになります。

シェア率 状況
1~3% 創業シェア 創業時に目標とするシェア。まずは3%のシェア獲得へ
4~7% 存在シェア 店舗の存在がお客様に知られてきている状況
8~10% 市場認知シェア 競合他社店に影響を与えることができる状況
11~20% 地域ベスト3 商圏内での認知度がかなり高くなってきた状況
21~30% 地域No.1 最終目標とするシェア率
31~40% 安定シェア 商圏内で圧倒的な状況。店舗を増やすことも考慮。
41%以上 独占シェア 独占状態。競合他社、大手参入リスクとなる。

2-4.競合分析でライバルを超える

(1)Googleマップで競合他社を洗い出す

今回出店計画している港区JR田町駅周辺の「フィットネスジム」をGoogleマップ等で検索して競合他社の調査をします。競合他社のホームページも閲覧して分析しましょう。JR田町駅では競合他社が乱立している状況になっています。

(2)競合他社の分析を行う

競合他社にはない自社独自で付加価値の高い商品、サービスを展開していくことが成功の鍵になりますので、大変重要な調査になります。①店名、②コンセプト、③立地、④設定ターゲット顧客層、⑤サービス内容、⑥料金体系、⑦キャンペーン情報等を把握して自社の戦略に活かしていく必要があります。

2-5.市場戦略を策定する

今回のフィットネスジムの創業計画において、JR田町駅に出店するという計画はいかがでしょうか。下表のとおり、商圏ごとの想定市場規模を計算しました。月間売上を270万円とした場合、徒歩5分圏内でシェア94%の獲得が必要となります。自転車圏内でも7.5%のシェア獲得が必要となり、創業の目安シェアである3%を大きく超える状況です。また、大手を含めた競合他社が乱立している状況であり、この地で創業して成功する確率はあまり高くはないと判断できるのではないでしょうか。

皆さんも、創業計画・事業計画を策定する前に、市場調査を十分行うことによって創業の成功確率を是非高めていただけたらと思います。

まとめ

今回、具体的なサイトの閲覧方法等の説明は略しております。詳しい内容につきましては、今後、オンラインセミナーを実施させていただいて対応させていただきたいと考えています。引き続きどうぞよろしくお願い致します。

執筆者プロフィール:さいとう ひろき
(経営コンサルタント ICT・DX専門家) Fun Consulting

大手飲料メーカーで資金計画立案、資金の調達・運用、会計、税務、業務改革など多岐にわたる業務に携わり、独立した現在は中小企業診断士として創業支援や業務改善を中心に活躍されています。経営者自身がお金の知識・決算書を読む力をつけることでより良い事業計画がつくれるようにと尽力されています。「どんなオーダーにも対応していきたい」と意欲的で明朗快活なお人柄です。

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ドリームゲートアドバイザー さいとう ひろき

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