会社の社員として給与を得ながら、起業に向けて試験的に週末起業を行ったり、サラリーマンと起業を両立して収入を得ているケースもあると思います。
今回は、上記のようなサラリーマンと事業を併用して行っている事業者における確定申告の留意点について、税理士としてアドバイスしたいことを解説いたします。
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サラリーマンがメインの場合・・確定申告が不要なケースも?
サラリーマンは税法上はいわゆる給与所得に該当し、会社で年末調整を行って課税所得と税額を確定させて終了となります。これに加えて、事業を行っている場合は、一般的には所得を合算して確定申告を行うことが必要になります。
しかし、まだ事業が本格的ではなく、試験的な段階で例えば週末のみ起業して行っている場合などで、利益もまだ出ていない場合などは、確定申告が不要なケースもあります。
「所得が20万円以下の場合」の注意ポイント
国の税法上、給与所得以外に所得がある場合でも、所得が20万円以下の場合、確定申告は不要と規定されております。
つまり、給与所得以外に副業の収入を得てたとしても、その所得が20万円以下の場合は、確定申告が不要となるのです。
ここで重要なのが、収入ではなく、所得が20万円以下の場合という文言です。
事業上の収入が20万円以上であったとしても、その事業に係る経費があり、収入から、経費を差し引いた所得が20万円以下であった場合、給与所得以外の所得があったとしても、確定申告は不要という意味になるのです。
そのため、起業準備として週末起業などを行っている方は、収入から経費を差し引いた所得が20万円を超えているか、計算してみましょう。
ただし、上記週末起業レベルの収入は一般的に雑所得として申告するケースとなるのですが、もしかなりの事業規模で、税法上事業所得又は事業的規模の不動産所得に該当する場合は、所得が20万円以下であっても確定申告義務が生じるケースもあるので、ご不安な場合は、専門家にご相談ください。
さらに留意点としては、給与所得以外の所得が20万円以下の場合、申告不要と規定されているのはあくまでも国税の法律の範疇です。地方税の場合は、地方税の申告が必要なケースが想定されますので、各自治体に確認が必要となる点、ご留意ください。
副業禁止。確定申告をすると会社にバレる・・?
例えばの話ですが、お勤めになっている会社が副業禁止にも関わらず、不動産収入を得ていたり、週末副業を行って起業準備を行っているケースがあると思います。
その場合、確定申告を行うことで、住民税につき給与収入に係る税額のみ会社の給与から天引きにし、それ以外の不動産所得や雑所得に係る税額については、自分で納付する方法を選択することができることはご存じでしょうか?
確定申告書の第二表に、給与所得以外の所得に係る住民税の納付方法を選択できる欄があるため、当該欄にて「自分で納付する」を選択すれば、不動産経営や、週末副業について、会社に気にせず行うことができるかもしれません。
ただし、当該部分の記入方法については、念のため各地方自治体の取り扱いを確認してから申告することをお勧めいたします。
サラリーマンのみでも確定申告で税金が戻ってくる?
いわゆる給与所得のみの場合でも、確定申告で税金が戻ってくるケースがあります。一番有名なのが医療費控除で、所得によりますが最大10万円以上の医療費が年間発生している場合に、確定申告を行うことで税金が戻ってくることになります。
もう一つ税金が戻ってくるケースとして、特定支出控除という制度があります。
特定支出控除について
特定支出控除とは、給与所得者が、下記のような支出が一定の金額を超える場合に、確定申告を行うことで、税金が戻ってくるというケースです。
特定支出控除に該当する経費は、以下のようなものです。
- 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
- 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
- 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
- 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)※平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となります。
- 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
- 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
※6の支出については、平成25年分以後、特定支出の対象となります。
令和2年以降は、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行で給与の支払者により証明された通常必要な支出(職務上の旅費)も特定支出になります。(所法57の2、所令167の3~167の5、所規36の5、36の6)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm
上記支出が、給与所得控除の1/2以上ある場合はその超える金額を所得から控除できるという制度です。
まとめ
もしまだ起業が果たせていない場合でも、サラリーマン時代に自らの支出額、投資額が大きい場合は、確定申告を活用して、将来の起業に向けての練習も兼ねてみるのもいかがでしょうか?
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
株式会社ピクシス 代表取締役/税理士法人アクシオン 代表社員
1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立
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