同一労働同一賃金をやさしく解説「同じ仕事なら給与も同じ」を正しく理解できていますか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 鈴木 圭史

事業主の皆さんは「同一労働同一賃金」について正確に理解されているでしょうか?日本語のイメージと実際の中身とは、ギャップがあるのがこの制度の特徴です。

「同じ仕事なら同じ給与がもらえるのか?」というシンプルな質問にしっかり回答できるようにしましょう。私たちは大阪の玉造で社会保険労務士事務所を経営しています。働き方改革関連法が施行されて2年ほどたちますが、なかなか制度の周知が進んでいないなという印象です。この制度はご承知の通り非正規労働者の人たちの待遇の改善をすることが主たる目的です。

しかしながら、待遇改善というのは簡単ですがそれには原資が必要です。制度を正確に理解し、リスクを把握したうえで適切に対応しましょう。

同一労働同一賃金を理解するための4つのポイント

同一労働同一賃金のガイドラインのポイントは不合理な待遇差の禁止にあります。

「①同一企業内において、②正社員(無期雇用フルタイム)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者・パート・アルバイト・嘱託・派遣社員・準社員など)との間で③基本給や賞与などのあらゆる待遇について④不合理な待遇差を設けること」を禁止しています。なお、労働者派遣法で派遣社員は派遣元目線または派遣先目線で同一労働同一賃金を実現するという、いわゆる選択制を採用しています。

  1. 同一企業内で、とあるので同じ法人・団体で比べることが必要です。よって、グループ会社や親会社や子会社の社員同士で比較するのではなく同じ法人・団体に所属する社員同士で比較しましょう。
  2. 正社員と非正規労働者、とあるので正社員同士で比較するのでもなく、非正規労働者同士で比較するものでもありません。あくまで正社員と非正規労働者の待遇で比較します。
    また、正社員と非正規労働者は前者の方が高待遇であることを想定しているので、非正規労働者の方が高待遇のもの(例えばインセンティブ制度があり、非正規労働者の方が支給金額が高いことなど)は対象外です。
  3. あらゆる「待遇」とあるので給与だけではなく福利厚生や教育訓練という会社と労働者の間の労働条件の幅広い部分を対象としています。
  4. 待遇は基本給・各種手当・賞与などの項目ごとに検討することとなります。また、ある待遇が「不合理な待遇差」であるか否かは最終的には裁判所で決定することとされています。正社員には付与されているけど非正規労働者には付与されていない各種手当などを個別に検討します。
    この不合理であるか否かは、ある待遇が「均等」「均衡」のどちらにあてはまるかで考えることとガイドラインにあります。

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「均等待遇」とは? イコールという言葉があてはまります。

「均等待遇」については、職務の内容と人材活用の仕組みが、正社員と非正規労働者とで同じかどうかを検討します。職務の内容とは「A仕事の内容」「B責任の程度(営業目標数値の設定・部下の教育・時間外労働の有無など)」をいい、人材活用の仕組みとは「C仕事内容の変更の有無」「D転勤・昇進の有無」などをいいます。

正社員と非正規労働者を比較して「仕事内容は同じだし、責任の程度も同じだし、仕事内容が変わることや転勤することや昇進があること」が同じであれば同じ待遇を実現してほしい。これが今回の働き方改革関連法の同一労働同一賃金の中心的な話となります。また、言葉通りの同一労働同一賃金はこの「均等」があてはまればその通りです。

しかしながら、多くのケースで「B責任の程度」に差があるのではないかと思料します。仕事内容はたしかに正社員と同じだけれど、正社員と非正規労働者を比較して責任の程度に差はあるし、転勤がないし、昇進も期待されていないなら均等待遇(同じ待遇)にしなくてもよいとされています。

「均衡待遇」とは? バランスという言葉がしっくりきます。

「均衡待遇」については、こちらは職務の内容と人材活用の仕組みと「Eその他の事情」が正社員と非正規労働者が同じかどうかを検討します。職務の内容とは「A仕事の内容」「B責任の程度(営業目標数値の設定・部下の教育・時間外労働の有無など)」をいい、人材活用の仕組みとは「C仕事内容の変更」「D転勤・昇進の有無」などをいいます。新たな要素の「Eその他の事情」は職務の成果能力経験・合理的な労使慣行・労使交渉の経緯をいいます。

均等待遇の要素がひとつでも欠けるケースでその他の事情を勘案して「均衡」がとれた待遇を実現してほしいというのが考え方となります。こちらは同一労働同一賃金という言葉とは少しかけ離れた印象があるかもしれませんが、世の中にある正社員と非正規労働者を比較すると、概ねこちら側にあてはまることとなるでしょう。

よって、パートさんなどの非正規労働者の皆様に同一労働同一賃金の説明するときは

  1. 「仕事の内容」
  2. 「責任の程度(営業目標数値の設定・部下の教育・時間外労働の有無など)」
  3. 「仕事内容の変更・転勤・昇進の有無」
  4. 「その他の事情」

を正社員と比較して、どの部分が同じでどの部分が異なるから待遇に差が存在する。しかし、その差は会社としてはバランス(均衡)がとれた待遇だと認識しているという形式の説明をしましょう。差がないなということなら均等待遇なので待遇を同じにすることをあわせてご検討ください。

最後に派遣社員ですが、これは少し形式が複雑です。派遣先目線で同一労働同一賃金を実現する派遣先均等均衡方式という制度がありこれが原則的な形式となります。例外として、雇用関係にあるのは派遣元なので派遣元目線で同一労働同一賃金を実現する労使協定方式という二つのケースがあります。比較対象労働者が派遣先なのか派遣元なのかがあるだけで均等待遇と均衡待遇の考え方は同じとなります。

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まとめ

「同一労働同一賃金」といっても日本語のイメージと実際の中身が異なることはご理解頂いたでしょうか?

正社員と非正規労働者を比較して、仕事内容のみでなく責任の程度や人材活用の仕組みを総合的に勘案して待遇を決定するというということが要点です。基本給はよいのですが、賞与や退職手当や家族手当はどうするなど悩ましい事項はたくさんあると思料します。事前準備がないといざ問われたときに大きな労務リスクとなります。対策を検討中の会社さまは当事務所までお気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール:鈴木 圭史/ドラフト労務管理事務所

大阪で社会保険労務士として活躍をする鈴木さん。派遣元責任者講習にも力を入れており、信頼も厚いアドバイザーの方です。

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