新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)では、小売業や飲食業などの店舗を構えて商売をしている人たちが大打撃を受けました。
店舗はお客に集まってもらうことでビジネスが成立するので、外出自粛や3密回避による影響を受けやすい業態です。また、行政機関から直接、営業自粛を要請された店舗もあります。
そこで、経済産業省や東京都は、経済的な支援策を打ち出していますので、まとめてみました。
これらの支援策は、店舗経営者にとって「耐え忍ぶための糧」になるので、積極的に活用することを強くおすすめします。
- 目次 -
経産省の「家賃支援給付金」
経済産業省と中小企業庁は、コロナ禍対策の営業自粛要請で売上減に直面した中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者に対し、地代や家賃の一部を補助する「家賃支援給付金」を実施しています(*1)。
その概略を紹介します。
給付対象者
家賃支援給付金の対象者は、次の「いずれか」に該当する中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者です。
B:2020年5~12月の期間の連続する3カ月の売上高の総額が、前年の同じ期間の売上高の総額より30%以上減った中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者
それぞれ、下で実際のケースに照らし合わせて確認してみましょう。
Aの「1カ月の前年同月比50%以上減」の考え方
Aのケースを考えてみましょう。例えば、ある店舗の売上高が、次のように推移していたとします。
2019年はコンスタントに毎月150万円を売り上げていましたが、2020年はコロナ禍による自粛で売上が落ち込んでいます。
ただ、2020年5月の売上高は100万円で、前年同月より33.3%しか減っていないので、この月は「50%以上減ではない」と判定されます。
しかし2020年8月の売上高は70万円で、前年同月比53.3%減になっています。これは「50%以上減」なので、この店舗の事業主は、家賃支援給付金の対象者になり得ます。
Bの「連続する3カ月の前年同期比30%以上減」の考え方
Bのケースを考えてみましょう。別の店舗の売上高が、次のように変化したとします。
先ほどのシミュレーションと異なる点は、2020年8月の売上高の80万円だけです。この店舗の2020年の売上高は、一度も前年同月比50%以上減になっていません。しかし、30%以上減がいくつもあり、大きな打撃を受けていることは一目瞭然です。この店舗が、家賃支援給付金を受給できないのは、不公平のような気がします。
そこで、Bの計算方法があるわけです。
上記の売上高の表で「連続する3カ月の売上高」を確認すると次のようになります。
例えば、2020年5、6、7月の売上高の総額は270万円で、前年同期の2019年5、6、7月の売上高の総額は450万円になっています。
これは40%減(=(270万円÷450万円-1)×100)なので条件B(30%以上減)をクリアします。それでこの店舗は、家賃支援給付金の受給対象になり得ます。
これで不公平感が緩和されます。
給付額
家賃支援給付金の給付額(もらえるお金の額)は、「申請時の直近の支払い家賃(月額)で算出する給付額(月額)の6カ月分」となります。
この計算方法も複雑です。また、法人と個人事業主では計算方法が異なるので、両者をわけて解説します。
法人の場合
法人の「申請時の直近の支払い家賃(月額)で算出する給付額(月額)」は、次のように計算します。
- 家賃(月額)の75万円までの部分については2/3給付
- 家賃(月額)の75万円超の部分については1/3給付
たとえば、申請時の直近の支払い家賃(月額)が180万円の店舗であれば、家賃支援給付金の「1カ月分」は約85万円となります。計算式は以下のとおりです。
(75万円×2/3)+(180万円-75万円)×1/3=85万円
85万円は1カ月分です。家賃支援給付金は6カ月分支給されるので、この店舗は総額510万円(=85万円×6カ月)受け取ることができます。
法人の家賃支援給付金の上限は、6カ月分の総額で600万円です。510万円は600万円を下回っているので、この法人はフルに510万円を受け取ることができます。
個人事業主の場合
個人事業主の「申請時の直近の支払い家賃(月額)で算出する給付額(月額)」は、次のように計算します。
- 家賃(月額)の37.5万円までの部分については2/3給付
- 家賃(月額)の37.5万円超の部分については1/3給付
たとえば、申請時の直近の支払い家賃(月額)が90万円の店舗であれば、家賃支援給付金の「1カ月分」は約42.5万円となります。計算式は以下のとおりです。
(37.5万円×2/3)+(90万円-37.5万円)×1/3=42.5万円
42.5万円は1カ月分です。家賃支援給付金は6カ月分支給されるので、この店舗は総額225万円(=42.5万円×6カ月)受け取ることができます。
個人事業主の家賃支援給付金の上限は、6カ月分の総額で300万円です。225万円は300万円を下回っているので、この個人事業主はフルに225万円を受け取ることができます。
申請期間・給付について
申請開始は最速で6月下旬以降、給付は7月以降になる予定です。申請先や申請方法などの情報もその際に明らかになる見込みです。
※7/14追記・本日より申請開始しました。電子申請が利用できます。
詳しくはこちら
https://yachin-shien.go.jp/index.html
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東京都感染拡大防止協力金(第2回)
東京都では5月7日から5月25日までの緊急事態措置期間において都の要請や協力依頼に応じて、店舗・施設の使用停止に全面的に協力いただける中小の事業者に対し、協力金(第2回)を支給する予定です。第1回目の情報はこちら⇒
https://www.dreamgate.gr.jp/contents/column/tokyo-kyugyohosyo
対象者
「東京都における緊急事態措置等」により、令和2年5月7日から5月25日までの緊急事態措置期間中に休業等の要請に全面的にご協力いただいた中小企業、個人事業主及びNPO法人等が対象となります。
休止要請等の対象となる店舗・施設についてはこちらを参考にしてください。
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html
- 延長した緊急事態措置期間の開始日(令和2年5月7日)以前に開業しており、営業の実態がある事業者
- 都内の店舗・施設の休業等を行った場合が対象となります。本社が都外にある事業者も対象とする。
- 100㎡以下の店舗・施設でも、都の要請等の対象となる店舗・施設であれば、休業等を行った場合には支給対象
支給額
50万円(2つ以上の店舗・施設で休業等に取り組む事業者は100万円)
申請期間・方法について
- 受付期間:令和2年6月17日(水)~7月17日(金)※令和2年4月16日~5月6日の休業等の要請に係る協力金(第1回)の受付期限は6月15日(月)まで
- 申請方法:専用ホームページ(6/17公開予定)からWEB申請、または郵送、都税事務所への持参
詳しくはこちらのホームページで順次発表される予定です。
https://kyugyo.metro.tokyo.lg.jp/dai2pre/index.html
東京都の「業態転換支援」
東京都はコロナ禍対策の一環として「業態転換支援」事業を実施しています(*3)。
飲食店が売り上げ確保のために、新たにテイクアウトや宅配、移動販売を始めるときに、経費の一部を助成する、という内容です。
対象者
業態転換支援の対象者は、都内で飲食業を営む中小企業または個人事業主です。
対象者が、テイクアウトや宅配、移動販売を始めるときに、次の事項に経費を使った場合、お金(助成金)を受け取ることができます。
- 印刷物やPR映像をつくったり、広告を掲載したりしたときの販売促進費
- 宅配用のバイクをリースしたり、台車を購入したりしたときの車両費
- Wi-Fiを導入したり、タブレットを購入したり、梱包や包装用資材を購入したりしたときの器具備品費
- 宅配代行サービスに依頼するときの初期登録費や、月額使用料、配送手数料などのその他の経費
助成金の額
助成金の額は、上記の費用の4/5で、上限額は100万円です。
つまり、上記の費用として125万円使えば、最大100万円のお金を受け取ることができます。そして125万円以上の経費を使っても、助成金は100万円までとなります。
計算式は以下のとおりです。
経費125万円×4/5=助成金100万円
申請先・申請期限
- 申請受付期間と交付予定日:最終の締め切りは令和2年11月25日(水)です。<https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/conversion.html>ただし、予算終了の場合は、受付期間中であっても終了するようなので、早めに対応したほうが良いでしょう。
- 申請方法:郵送です。申請書等はこちらからご確認いただけます。https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/rmepal000001ba0f-att/r2conversion_sinsei_1.pdf
- 送付先:〒101-0024
東京都千代田区神田和泉町1-13 住友商事神田和泉町ビル9階
公益財団法人東京都中小企業振興公社 経営戦略課 業態転換担当宛
詳しくはこちら
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/conversion.html
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中小企業庁の「持続化給付金」
中小企業庁の「持続化給付金」は、営業自粛で大きな影響を受けた事業者に、事業の継続と再起の糧となるお金を給付する制度です(*4)。
対象者
持続化給付金の対象となるのは、次の条件にあてはまる中小法人と個人事業主です。
- 2020年1~12月の間に、月間事業収入(売上高)が前年同月比50%以下となる月(対象月)がある
ひと月でも、前年同月比50%以下になっていれば、対象になります。
給付額
持続化給付金の給付額は、次の計算式で算出します。
- 給付額=前年(または前事業年度)の年間事業収入-対象月の月間事業収入×12カ月
- 上限額は、中小法人が200万円、個人事業主が100万円
たとえば、ある中小法人の2020年3月の月間事業収入が30万円で、2019年3月の月間事業収入が60万円だったとします。この場合、前年同月比が50%以下になるので、2020年3月は「対象月」になります。
そして、この中小法人の2019年の年間事業収入が720万円だった場合、この中小法人は、上限額200万円を受け取ることができます。計算式は次のとおりです。
- 「前年の年間事業収入」(720万円)-「対象月×12カ月」(360万円)=360万円
- 360万円は上限200万円より多いので、受け取る額は200万円になる
このシミュレーションと同じ金額で、対象者が個人事業主になれば、上限の100万円を受け取ることができます。
申請先・申請期限
- 申請方法:基本的に電子申請のみとなります。電子申請がむずしい方には、電子申請の補助をしてくれる人がいるサポート会場を利用することができます。(要予約)
- 申請期間:令和2年5月1日(金)から令和3年1月15日(金)まで、給付は通常2週間です。
詳しくはこちら
https://www.jizokuka-kyufu.jp/
まとめ~損失が緩和され再建のきっかけになる
店舗を構えて小売業や飲食業を営んでいる中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者は、国や地方自治体などの営業自粛要請で大打撃を受けていることでしょう。
ここで紹介した助成金などの制度を上手に活用すれば、コロナ禍による損失を緩和すことができます。
小売業や飲食業などの経営者にとって「助け」になり「再建」のきっかけになるはずです。積極的な活用をおすすめします。
総合起業コンサルティンググループV-Spiritsに在籍する。特に補助金・助成金については元補助金事務局員だった経験、実績をフル活用し、95%以上という非常に高い採択実績を記録するなど、実績を豊富にお持ちです。
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