コロナ融資を受けた事業者のなかには「そろそろ返済が始まる」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
急激なインフレ、それにともなう金利上昇、不安定な為替相場、供給リスク、ウクライナ紛争による影響など経済を取り巻く状況は以前より厳しさを増しています。このような中で返済を開始するのは事業者にとって大きな負担です。
そこで、中小企業庁は2023年1月10日から「コロナ借換保証」を開始しました。コロナ禍の中小企業・個人事業主向け支援策である、実質無利子・無担保融資「ゼロゼロ融資」の返済負担を軽減する制度です。これを使えば実質的に最大5年間、コロナ融資の返済を遅らせることができます。
この記事では、コロナ借換保証の概要や手続き方法、利用する事業者にどのようなメリットがあるのかを解説します。
https://j-net21.smrj.go.jp/news/bg5m450000001bo2.html
- 目次 -
そもそもゼロゼロ融資とは
ゼロゼロ融資とは、日本政策金融公庫や民間金融機関がコロナ禍で売上が減少した中小企業や個人事業主に対して実施した実質無利子、無担保の融資です。据置(返済猶予)最大5年、保証料半額またはゼロといった内容も含まれていました。
単なる「無利子」ではなく「実質」がつくのは、事業者(借主)が一度利子を支払ってから事後に利子分を事業者に戻す形態のためです。
民間金融機関の受付は21年3月末に、日本政策金融公庫の受付は22年9月末に終了しています。
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コロナ借換保証が創設された背景
コロナ禍での中小企業・個人事業主支援策として、ゼロゼロ融資に引き続きコロナ借換保証が創設された背景には次の2つがあります。
■コロナ借換保証が創設された背景
- ゼロゼロ融資の返済開始が近く集中するなど借り換え需要が高まる
- 事業再構築など前向きな投資に対する新たな資金需要が高まる
ゼロゼロ融資の返済開始が近く集中するなど借り換え需要が高まる
ゼロゼロ融資は2020年3月から始まりました。据置期間(返済猶予期間)は最大5年ですが、政府は2023年7月~2024年4月に返済開始が集中すると見込んでいます。
ゼロゼロ融資の貸付実績の総額は、受け付けを終えた2022年9月末までに42兆円にのぼります(*1、2)。
日本政策金融公庫が行ったコロナ禍関連融資の返済状況は、貸付実績16.5兆円に対し、貸付残高12.9兆円です(2022年9月末時点)。つまり、この時点で22%しか返済されていないことになります。
これだけの規模の融資の返済が本格化すると、多くの事業者の資金繰りが悪化する恐れがあります。借り換えによりそのような事業者を支援するためにコロナ借換保証が創設されました。
コロナ借換保証は、ゼロゼロ融資以外の保証つき融資からの借り換えにも対応します。
*1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230109/k10013944541000.html
*2:https://www.asahi.com/articles/ASQB961K0Q9DULFA00S.html
*3:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kinyu/008/02.pdf
事業再構築など前向きな投資に対する新たな資金需要が高まる
コロナ借換保証は名称に「借換」とついていますが、新規に資金を必要としている事業者も利用できます。
政府は、企業がコロナ禍をきっかけにして事業再構築を進めることを推奨しているので、そのための資金調達でもコロナ借換保証を使えるようにしました。
コロナ借換保証を詳しく解説
コロナ借換保証制度は、セーフティネット保証という枠組みのなかで行われる中小企業・個人事業主支援事業になります。
保証限度額は1億円、保証料を大幅軽減
コロナ借換保証の概要は以下のとおりです。
■コロナ借換保証の概要
要件 | 売上または利益率が5%以上減少など |
保証限度額 | 1億円 |
保証期間 | 10年以内 |
据置期間 | 5年以内 |
金利 | 金融機関所定 |
保証料(事業者負担) | 0.2%程度(補助前は0.85%程度) |
その他 | ・100%保証の融資は、100%保証での借り換えが可能 ・経営行動計画書の作成 ・金融機関の継続的な伴走支援 |
コロナ借換保証を利用できるのは、売上または利益率が5%以上減少している事業者です。その他にも要件があるので、次の「手続きの方法」のところで紹介します。
保証限度額は1億円で、保証期間は10年以内、据置期間(※)は5年以内となっています。金利については、実際に融資をすることになる金融機関の所定のものが採用されます。
特筆すべき点は保証料で、通常(補助前)は0.85%程度ですが、これを0.2%程度に設定します。保証料とは信用保証協会の信用保証制度を利用する対価のことです。
ゼロゼロ融資では保証料が半額またはゼロになっていたので、「0.85%→0.2%」は、ゼロよりは厳しい内容ですが、半額よりははるかに有利な内容といえます。
さらに、これまで100%保証の融資を受けていた場合、コロナ借換保証を使った借り換えでも引き続き100%保証が可能になります。100%保証とは、信用保証協会が融資額の全額を保証するものであり、金融機関は自身の貸し出しリスクが減るので融資しやすくなります。
※据置期間とは
据置(すえおき)期間とは、元金(借りたお金)の返済が発生せずに、利息のみの返済をする期間のことです。この制度では最大5年を設定できます。
しかし注意点もあり、返済期間に据置期間が含まれるので、後に返済する金額が大きくなります。そのため安易に据置期間を設定せず、無理のない現実的な計画を検討しなければなりません。
手続き方法
コロナ借換保証を利用する際の手続きの方法を、ステップごとに紹介します。
■ステップ1:事業者が経営行動計画書を作成して融資(借り換え)を申し込む
事業者(借主)が金融機関に対し融資(借り換え)の申し込みをします。このとき経営行動計画書を作成して提出します。
経営行動計画書には、自社の現状、財務、資金の使途、計画終了時の目標、アクションプラン、収支計画、返済計画、黒字化目標などを盛り込みます。
■ステップ2:金融機関が与信審査を行う
事業者から融資の申し込みを受けた金融機関は与信審査を行います。
■ステップ3:市区町村がセーフティネット保証上の認定を行う
コロナ借換保証はセーフティネット保証の枠組みのなかで行うので、市区町村の認定が必要になります。そこで金融機関が市区町村に対し、認定の申請を行います。
■ステップ4:信用保証協会が保証審査を行う
金融機関はさらに、信用保証協会に対し保証審査の依頼を行います。このとき事業者から受け取った経営行動計画書も提出します。
■ステップ5:融資(借り換え)の実施
金融機関、市区町村、信用保証協会の3者が承認すると、コロナ借換保証による融資が行われます。
■ステップ6:金融機関が継続的な伴走支援を行う
金融機関は借主(事業者)に対し、継続的な伴走支援を行います。
継続的な伴走支援とは
「継続的な伴走支援」とは文字通り、金融機関が融資後も事業者を支援していくことを意味します。
言い換えると、金融機関が継続的に伴走支援できると見立てた事業者がコロナ借換保証を利用できる、となります。中小企業庁には伴走支援型特別保証という制度があり、これはコロナ借換保証と似た内容になっています。
中小企業庁は伴走支援の必要性について「今後のコロナ禍の影響を正確に見通すことは非常に難しいため、中小企業の経営者が1人で悩むことなく、支援機関と相談をしながら経営改善の取組を進めることを後押しする必要がある」と述べています(*4)。
*4:https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2021/210325hosyo.html
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コロナ借換保証は、経営者の資金繰りの労苦を減らす効果が期待できますが、その申し込みは簡単ではなく、例えば経営行動計画書を作成するなどしなければなりません。
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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局
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