最近、「withコロナ」、「アフターコロナ」といった言葉をよく耳にします。withコロナとは、新型コロナウイルスとの共生、言い換えるとコロナウイルスに対する不安や恐怖心を持ちながらも、日々生活していくということでしょう。また、アフターコロナとは、新型コロナウイルスによる急激な景気悪化から、会社や事業を立て直す、再建するといった意味合いのものです。
実際には、withコロナとアフターコロナが並存する状態がしばらく続くことでしょう。つまり、新型コロナウイルスの不安と恐怖を感じつつ生活する中で、会社や事業を再生し、新たな事業展開を図っていくという状況が当面は続きます。
飲食業界はもっとも早く新型コロナウイルスの影響を受け、最後までその影響が続くことが予想されます。すでに倒産や自主廃業している店もかなりあります。そうした中で、現状を打開し、新たなステップを踏み出そうとしている事業主もいます。
先日、相談を受けたレストランの経営者の方は、この新型コロナウイルスの影響を機に東京オリンピックも延期が決まったため、徹底した店舗のリニューアルと新たなビジネスモデルの構築を図ることを考えていたのです。今さらジタバタしてもしょうがないので、このピンチを新たなビジネスチャンスと捉え、大規模な設備投資をしたい、そのための資金調達方法を教えて欲しいという相談です。
飲食店の立て直しには、このような積極的な事業展開を視野に入れる方法もあれば、従前の来客数や売り上げ、利益をまず回復させるといったものもあります。ただ、どのような立て直し、再建策をとるにしても、まず必要なのは事業資金、すなわちお金です。
そこで今回は、withコロナ・アフターコロナにおける飲食店経営を、基本となるお金の面からみていくことにします。
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withコロナ・アフターコロナにおける飲食店の資金調達法
withコロナ・アフターコロナにおいて飲食店で必要となる資金としては、従業員への給与、取引先への支払いなどの運転資金があります。さらに、店内カウンター席を仕切るシールドやテーブル席を仕切るパーテーションの設置、対面式オーダーや商品提供から非対面式へのシステムの変更、テイクアウト・デリバリーのための車両や備品購入など、設備投資の資金も欠かせません。
こうした資金需要の供給先としては、国や都道府県など自治体が独自に実施する支援機関や支援策があります。さらにこれらの供給先は、将来、利息などとともに返済する「融資」と、原則返済不要の「補助金・助成金」、「給付金」といったものがあります。
ここではわかりやすいように、便宜的に「借りるお金」、「もらえるお金」と2つに分けて解説していきます。
「借りられるお金」
withコロナ・アフターコロナのため、飲食店が資金を借り入れる先としては、直接融資を行っている「日本政策金融公庫(日本公庫)」、「商工組合中央金庫(商工中金)」などの政府系金融機関があります。前回のコラム(飲食店などのコロナ融資相談先がわかる最新情報を解説)でも触れていますが、その後、コロナ特例措置で融資内容が変わっているため、念のためもう一度解説しておきます。
日本政策金融公庫(沖縄県の場合は沖縄公庫)
コロナ対策のための資金調達先として、まず上げられるのが日本公庫です。日本公庫では以前から、環境の変化で経営が悪化した事業者のために「セーフティーネット貸付」というものがありますが、今回の新型コロナウイルス対策として、新たに「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「新型コロナウイルス感染症対策マル経融資」という特別の貸付制度を設けています。
これらの制度は、一般的な中小企業などの事業者を対象としたものですが、これらとは別に、飲食業、旅館業、理容・美容業、クリーニング業など「生活衛生業」を営む事業者向けに特別な貸付制度を設けています。それには「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「新型コロナウイルス感染症対策衛経融資」があります。さらに、飲食業・喫茶店、旅館業を対象とした別枠の「衛生環境激変対策特別貸付」といったものも用意されています。
今回の第2次補正予算の成立により、これらの特別貸付の多くが「特別利子補給制度」を適用することで、実質無利子となります。そのため、「元本据置」、「無担保」といった他の条件も併用することで、当面の返済負担を大きく減らすことができます。
商工中金
他の政府系金融機関である商工中金でも、コロナ対策として「危機対応融資」という特別な貸付を行っています。こちらも「特別利子補給制度」、「元本据置」、「無担保」などを併用することで、大幅な返済負担の軽減が可能になります。
現在、これらの政府系金融機関は、相当混雑しているようですので、早めに必要書類を揃え、わからないことがあれば、私たちドリームゲート・アドバイザーに相談し、最短で融資が実行されるようにしましょう。
信用保証協会
信用保証協会は、日本公庫のような直接融資を行う機関ではありません。銀行など民間の金融機関からの融資が受けやすくなるよう、国の機関である信用保証協会が連帯保証してくれる制度です。
そのため、金融機関への利子、信用保証協会への保証料がかかります。これらの利子・保証料の一部を補填してくれるものが、東京都などの自治体が行っている「制度融資」です。信用保証協会でも、今回のコロナ対策で特別保証枠として「セーフティーネット4・5号保証」、「危機関連保証」を設けています。
また、第2次補正予算の成立を前提に、国が補助する都道府県の制度融資により、実質無利子、保証料が半減またはゼロになる「民間金融機関の実質無利子・無担保融資」を実施します。
これにより、民間金融機関からの借り入れがしやすくなり、また返済負担もかなり軽減されます。ただし、特別保証枠の利用には、本社、主たる事業所の所在地の市区町村の認定を受けること、信用保証協会、金融機関による審査があるため、日本公庫のような政府系金融機関よりも時間がかかるようです。
その他の借り入れ先
日本公庫や信用保証協会以外にも、中小企業基盤整備機構による「小規模企業共済制度」の「特例緊急経営安定貸付」など、小規模企業共済加入者を対象とした緊急貸付もあります。また、一般的な飲食店ではあまり利用することはないと思いますが、「日本政策投資銀行」なども、商工中金と同様「危機対応融資」を行っています。
ほかにも、日本公庫、信用保証協会では「既往債務の借換」により、コロナ以前に借り入れた分も、一定の要件を満たせば緊急の貸付や保証と同様の条件に変更することができますから、よりいっそう返済負担が軽くなります。
「もらえるお金」
もらえるお金とは、国や自治体から支給されるお金で、原則返済義務のないものです。具体的には、補助金・助成金、給付金などがあります。ただ、ここでは事業用の資金を対象としているため、今回、国民一人ひとりに支給される「定額給付金」のようなものではなく、支給されるには一定の要件を満たさなければなりません。また、事業計画書を作成し、審査を受け採択されるなどの手続きが必要なものもあります。
持続化給付金
コロナ関連で事業者がもらえるお金の代表的なものが、「持続化給付金」です。この持続化給付金とは、新型コロナウイルスにより、とくに大きな影響を受けている事業者に対して、その事業の継続を支え、再起の一助にしてもらうため、事業全般に広く利用することを目的に支給されるものです。飲食業をはじめ、様々な業種の法人・個人事業主が対象となっています。
給付額は法人が上限200万円、個人事業主が上限100万円となっています。また、ひと月の売り上げが前年同月比−50%以上など、一定の要件があります。
家賃支援給付金
新型コロナウイルスの拡大により、営業自粛を行っている事業者の事業継続を支援するため、固定費の中でも大きな負担となっている地代・家賃の一定率、一定額を支給することを目的としたものが「家賃支援給付金」です。中堅・中小企業から小規模事業・個人事業までが対象で、5月〜12月のいずれか1カ月の売り上げが、前年同月比−50%以上など、一定の要件が必要です。
給付率や給付額は、1/3〜2/3で、法人で上限100万円(月)、個人事業主で50万円(月)となっています。第2次補正予算成立後、変更点も含めて具体的な内容が発表される予定です。
雇用調整助成金
「雇用調整助成金」とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に一時休業や教育訓練、または出向などを行いながら雇用の維持を図った場合に、休業手当などの一部を助成するものです。
今回の新型コロナウイルスの影響を踏まえ、雇用調整助成金についても特例措置を設定しています。主な内容としては、全事業主を対象に助成内容・助成対象の大幅な拡充、受給要件のさらなる緩和、活用にしやすさなどです。
その他のもらえるお金
そのほかにも、原則もらえるお金、返済不要のお金としては、経済産業省が実施している「生産性革命推進事業」における3つの補助事業(ものづくり・商業・サービス補助金、持続化補助金、IT導入補助金)があります。厚生労働省では、「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース・新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」があります。また、東京都をはじめとした自治体独自の助成金があります。
これらは、主に設備投資などに向いているので、運転資金のような即効性はありませんが、かなりの金額の給付が受けられる上、返済は原則不要ですから大いに活用ですべきです。
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まとめ
飲食店経営は、まだまだ新型コロナウイルスの影響による経営危機の状況にあります。今、最も必要なものは従業員の給与、家賃、仕入れ代金といった当面の資金です。そのための資金調達の方法として、公的融資、コロナ支援の特例給付金などの利用により、可能な限りキャッシュフローを確保することです。
ただし、いつまでも資金繰りに奔走しているといずれは行き詰まり、リスケそして倒産・廃業となってしまいます。倒産・廃業を回避するためにも早めに、中・長期的な事業計画を作成し、設備投資などのための補助金・助成金の活用により、経営の早期立て直し、そして新たな事業や店舗展開へと結びつけていくことが大切です。事業計画書の作成については、私たち専門家が支援しますので、ぜひご相談ください。
補助金・助成金、給付金は、その内容が日々変更される状況ですので、次回以降のコラムで改めて最新情報を紹介します。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 萩原洋(有限会社銀河企画 特定行政書士)
外食FC立ち上げへの参画や自らも複数店舗の経営を行った後に独立。
フードビジネスコンサルタントとして20年のキャリアをもつ萩原アドバイザー。
飲食店等を長年経営し引退を考える経営者が、事業を他者に譲り渡す「事業承継M&A」に複数携わるなど、ゼロからの出店ではなく立地や顧客を引き継ぎながら経営を始めるという分野のご経験を豊富にお持ちのアドバイザーです。
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