- 目次 -
開業当初は特に「資金繰り」が重要
事業を継続させるには、言うまでもなく「いついくら入金があって」「いついくら支払いが発生するのか」というキャッシュフローを把握する必要があります。 よほどの資金を準備してのことでない限り、開業当初は特に「資金繰り」が重要です。というのは、開業当初は信用が低く、商品を仕入れるには先にキャッシュ で代金を支払わなければならないケースが多く、当座の資金はすぐに使い果たしてしまうからです。また、買い掛けの場合の支払い期日や、従業員の給料日に なって支払うお金がないという状態では、経営者として真っ先に信用を失います。資金が底をつかないうちに、仕入れた商品はできるだけ早く付加価値を乗せて 売り、キャッシュに変えなければなりません。
また、一般的には普通預金口座しか持っていない場合のほうが多いでしょうが、仮に当座預金口 座から手形を振り出す場合、決済期日に残高が不足していると「不渡り」となります。不渡りが2回続くと「倒産」です。ですから、資金繰りが重要なのです。 事業の状況を事後的に把握するには、損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書などの財務諸表が不可欠ですが、開業当初は「資 金繰り予定表」「資金繰り実績表」が大切です。これらは、いつ、いくらの入金および支払いの予定があり、その時点で差し引きいくら現金が残るのか、あるい は不足するのかを見通し(予定表)、実際どうだったかを記録する(実績表)ためのものです。
資金繰り管理はタイムリーに
これらの「資金繰り予定表」「資金繰り実績表」づくりは、タイムリーに更新していく必要があります。一度作成して終わりというわけでなく、日々の更新こそが大切なことといえますね。
そうした管理はまさに経営者の仕事であることはわかってはいても、作業の大変さから、税理士や経理担当者に伝票類を丸投げし、作成された表をチェックする だけという経営者が多いのが実情のようです。しかし、月末に1カ月分の伝票類を渡して結果が上がってくるまでに2~4週間ほどのタイムラグがある。それで は「後追い」で管理することになり、気づいた時には1週間前になって支払う現金が足りないことがわかる、という事態になりかねません。もちろん、税理士や 経理担当者にお願いすることも業務上ではあるでしょう。ただし、決して丸投げするのではなく、資金繰りの管理は、自らタイムリーに把握している必要があり ます。
作業を軽減する会計ソフト
そんな作業を軽減してくれるものに、日々、入出金を入力するだけで資金繰りのシミュレーションができる機能がついている会計ソフトも市販されているので、 詳しい知識がなくても「資金繰り予定表」がタイムリーに作成できます。中には、1年分の経営の結果の成績表として確認できる「経営診断サービス」などに応 じてくれるソフト会社もありますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
こうした資金繰りの管理は何のために行うのか。それは、経営 者にとって、目の前のことだけではなく6カ月後の経営状態を事前に把握することが極めて重要だからなのです。なぜなら、1カ月前になって資金がショートす るとわかってあわてて銀行に行っても開業当初ではなかなか銀行は融資してくれません。審査に時間がかかってしまい、本当に資金が必要な時期に融資が受けら れなくなってしまうのです。なんとかその時期をしのごうと、勢い、高利の金融業者を利用して、自分の首をしめることになりがちです。6カ月後の状況が予測 できれば、資金繰りの計画をたてて銀行に説明し、融資を受けることも可能なのです。だからこそ、直前になって「資金ショートしてしまう!」と焦ることのな いよう、会社の資金の流れをつかんでおくことは、大切なことなのです。
最後に、究極的になぜ資金繰り管理が重要かということを再確認する とすれば、それは「倒産の危険性を回避するため」なのです。どんなに赤字でも資金ショートしなければ倒産しません。逆にどんなに黒字でも資金ショートすれ ば倒産してしまうのです。このような事態に陥らないように会計ソフトを賢く利用して、自社の経営状況を常に正確に把握することが大切といえるでしょう。