Vol.5 個人事業の確定申告は、トクする「青色申告」がおすすめ

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執筆者: ドリームゲート事務局
自 営業やフリーランサーとして独立しようと考えている人や、すでに開業した人の中には、税金の申告が気になっている人もいることでしょう。会社員時代は、税 金のことはすべて会社がやってくれていたので、「自分で面倒な作業をしなくてはならないのではないか」などと心配になるのもムリはありません。でも、大丈 夫。カンタンにできて、しかもトクをするという方法があります。さっそく解説していきましょう。

 

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がある

 

個人事業の開廃業等届出書 etc.

  会社員の場合は、会社が源泉徴収および年末調整という形で、いわば納税作業を代行してくれるので、自分では基本的に年末調整のための必要書類の記入と会社へ の提出という簡単な作業を行うだけで済みます(ただし、副業や不動産からの所得がある人などは除く)。しかし、自営業やフリーランサーなどの個人事業主 は、誰でも、毎年決められた期限までにその年度の所得を計算して所轄の税務署に申告するという作業をしなければなりません。この作業のことを「確定申告」 といいます。確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります(ちなみに、青色・白色とは、この制度ができた時に申告書類に色をつけて区別して いたことからそう呼ばれるようになりました。現在では青色申告といっても、青い申告用紙ではありません)。

 法人を設立せずに開業すると、税法上 「個人事業主」となります。その場合、開業1カ月以内に納税地の税務署に「個人事業の開廃業等届出書」 を提出しなければなりません。その際に青色申告か白色申告を選ぶことになります。なお、青色申告を選ぶ場合は、「青色申告承認申請書 」を提出する必要があります(その年の1月15日までに事業を開始した場合はその年の3月15日まで、1月16日以降に開始の場合は事業を開始した日から 2カ月以内。一度白色を選択した事業者が青色に変更する場合、青色申告しようとする年の3月15日までに提出すればその年から適用)。

 

青色申告には大きな「特典」がある

  青色申告と白色申告の違いは、「記帳義務」の有無と、それによる「特典」の有無。青色申告者は、原則として一定の要件を満たした複式簿記による帳簿を用意 し、記録・保管する義務が生じます(なお、複式簿記による方法のほかに簡易簿記による方法もありますが、この場合には次に述べる65万円の特別控除は受け られません。また、白色申告者は、前年又は前々年の事業所得等の合計額が300万円を超える場合、簡単な記帳義務が発生します)。

 では、どんな特典があるのでしょうか。主なものは次の4つがあります。

  1. 青色申告特別控除
    複式簿記により青色申告をした場合、最大で所得から65万円が控除される。税率を10%とすれば、6万5000円の節税となる。複式簿記による記帳がない場合は、10万円しか控除されません。
  2. 青色事業専従者給与の必要経費への全額参入
    納 税者の経営する事業に従事している配偶者や親族のことを事業専従者といい、白色申告の場合、最大で事業専従者1人につき50万円(配偶者は86万円)まで 控除額が制限される。一方、青色申告では、事業専従者に給与を支払う場合、「青色事業専従者給与に関する届出書 」を所轄税務署に提出すれば、届出書に記載した金額の範囲で支払った給与が全額、必要経費として認められる。
  3. 純損失の繰越し・繰戻し
    赤字が出た場合、翌年以降3年間にわたって各年の黒字と相殺できたり(繰越し)、前年が黒字の場合、当年の赤字を繰戻して前年の所得税の還付を受けることができる。
  4. 貸倒引当金の設定
    売掛の貸倒れに備えて、一定割合で計算した引当金を必要経費にすることができる。

 

青色申告に必要な「複式簿記」とは

 

 では、青色申告に必要な複式簿記とは何でしょうか。「簿記」とは「帳簿に記入する」という意味で、複式のほかに「単式」があります。

  単式簿記とは、いわば「家計簿」や「小遣い帳」。入ってくるお金と出て行くお金を記録し、月末に集計して入金額と出金額の差額から月末の現金残高を把握す るというものです。これだと、出入りしたお金が何を目的にしたものなのかがわからず、取引を一つの側面からしか把握することができません。

  一方、複式簿記は、取引を「原因」と「結果」の両方の面から記録する方式。たとえば、商品を売り上げて現金を受け取ったというような取引の場合、売り上げ という収益の発生(原因)と、それによる現金という資産の増加(結果)という事実を両方同時に記録します。これによって、財産の計算と損益の計算を同時に 行っていくことが可能となるのです。そして、一定期間内に発生した取引の結果を集計して「貸借対照表」や「損益計算書」を作成することで、資産や負債の残 高やその損益を把握することができます。つまり、財務状況をより正確に把握することができるのです。

 

労力のかかる青色申告も、専用ソフトならカンタン

 

出典元「やよいの青色申告06」
簡単取引入力画

 そのような観点から、国は複式簿記による青色申告を奨励し、青色申告に大きな特典を与えているのです。しかし、大きな特典を得られる半面、複式簿記による記帳作業はかなり労力を必要とします。

  複式簿記には少なくとも「仕訳帳」と「総勘定元帳」という2つの帳簿が必要になります(これらの帳簿を主要簿といいます)。手作業で行う場合、まず「仕訳 帳」に日々、日付順に入金や出金等の各種の取引を借方(かりかた)と貸方(かしかた)という2つの要素に分解して記録します(この作業を仕訳といいま す)。そして仕訳に基づき、すべての取引を勘定科目ごとに「総勘定元帳」に記入します(この作業を転記といいます)。この作業が大変なうえに、転記の時にミ スが発生しがちなのです。最終的には合計残高試算表により転記ミス等がないかチェックします。ここで計算が合わないと、最初から突き合わせてミスを探さな ければなりません。

 こういった現実の前に、大きなメリットのある青色申告をせず、白色申告を選択する人が多いことも事実です。でも、心配 は無用。最近では、便利な青色申告用の業務ソフトが市販されています。このソフトがあれば、あらかじめ設定した項目から選んで入力するだけで「青色申告決 算書」まで簡単に作成できてしまうのです。たとえば、まずは現金取引、売掛取引などの取引の種類を選び、次に「経費支払」などの取引タイプを選択。そうし てタイプを選ぶと、タクシーや電話代、高速道路代など細かく項目が表示されるのです。選択した後は日付や金額を入力するだけで、必要な帳票に自動的に集計 してくれます。今までのように多大な労力を費やさなくても、青色申告に必要な決算書を簡単に作成し、プリントアウトすることができるのです。

 経済的なメリットが大きい青色申告を、ぜひ採用したいものですね。

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