起業家のためのブランディング講座 Vol.2 「起業家なら押さえておきたいインナーブランディングという概念」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

最近、ソニーのパソコン事業「バイオ」の売却が大きく報道されました。そしてテレビ事業も分社化が予定されているといいます。

かつてソニーは、世界に冠たるブランドとしてテレビ、オーディオなどを主要製品として、より楽しく、豊かなライフスタイルを創造するブランドとして認知されていました。

しかし、上述の報道のように、これまでとは異なり今後は業務用製品市場に経営資源をより配分していくようです。

ソニーは日本メーカーの中でもトップクラスのグローバルブランドとして過去何十年も輝いていましたので、近年のソニーの変化については、我々一般消費者はもちろん、社内で働く社員や何万社もある周辺関係企業においてもそのイメージの変化に戸惑うものと想像します。

これからのソニーは何物であるのか? 何物になりたいのか?

これが偽らざる関係者の疑問ではないでしょうか。

■インナーブランディングという言葉をご存じでしょうか

ブランドが育成されるには、製品やサービスだけを媒介して消費者がそのイメージを築き上げるのではなく、内部で働く社員やその関係者などの言動もそのブランドイメージに大きな影響を与えます。

スターバックスやアップルストアなどを訪れますと、応対する販売員そのものがブランドであるような錯覚をするほど、ブランド表現の一部として機能していることがわかります。

このように、ブランディングの世界では、ブランディングを実施する場合にそのプロセスの一つとしてインナーブランディングと呼ばれる重要な活動があります。

これは、上記のように企業内の主に社員向けに、自社ブランドに関する正しい知識を身につけるよう支援したり、お客様と接する社員自身がブランドを体現することができるよう啓蒙したりする活動を意味するものです。

最近はブランディングの中でも、このインナーブランディングが重視される傾向にあります。

その理由は、ブランディングが広告宣伝やネーミング、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなどの視覚的イメージだけに頼ることなく、販売員、お客様相談室やさらには営業員から生産担当者までと、外部と関わるすべてのタッチポイントの活動を通じてブランドが築かれていくという考え方が広まってきたためです。

またそういうブランディングのプロセスを経たブランドはより強固になることがわかってきたからです。

先ほどのスターバックスやアップルストアがまさに好事例と言えるでしょう。

最近は、企業不祥事の報道が後を絶ちませんが、その釈明記者会見場でしばしば見られる当該企業トップの不遜な謝罪姿勢に対して、世間から非難の声があがり、それによって一夜にしてその企業のブランドイメージまで多大な影響を受けてしまうことが見られます。

実際はここまで重大な局面でないにしろ、企業の日常活動の中で大なり小なりブランドイメージを左右することが発生して、それらが口コミなどによって徐々にブランドイメージに影響を及ぼすとすれば、これは無視することはできません。

時間を経て築き上げた製品やサービスなどの高い評価やイメージが、例えば電話での応対や店頭での接客などによってイメージが毀損することはぜひ避けたいことです。

最近は、コンプライアンスやCSRなどに代表されるような、企業の社会的責任要求が強まっていますが、こういった観点からもインナーブランディングの役割が高まってきています。

■インナーブランディングの事例

インナーブランディング活動の有名な実例としては、リッツカールトンホテルのクレド(信条)という、従業員全員がいつも携行している行動指針を示す名刺大のカードがあります。ホテル従業員はこれにより、滞在客に最大限のおもてなしをすることの大切さを常に忘れることがないよう意識づけられ、その結果リッツカールトンホテルのサービスレベルが業界最高レベルであるとの評価の獲得に寄与しています。

また、新潟の三条市に「スノーピーク」という年商40億円ほどの高級アウトドア用品の製造販売会社があります。国内でも多くのロイヤルカスタマーを抱え、海外でも高く評価されているブランドです。

この会社は「自らもユーザーである」という思想の下に、社員自ら顧客視点を持ちつつ商品開発をしています。元々は、アウトドアスポーツ好きであり、かつて同ブランドのファンであったお客様から社員に採用された経歴を持つ社員が多いこともユーザー視点での物作りに貢献しているのですが、三条市の本社敷地内に広大なキャンプスペースを設置し、常時アウトドアスポーツを体験利用できたり、1988年から開催されている「スノーピークウェイ」という全国各地でのキャンプイベントでは、直接ユーザーと接して生の声を聴くなど、徹底してユーザーとブランドの距離を縮めることで、社員自身がブランドを体現するような環境が築かれています。

このスノーピークの事例では、顧客とブランドの絆は、高い品質を評価されている製品だけでなく、まさに社員と顧客との接点でブランドが育まれ信頼を築いている好例です。

バックナンバー

起業家のためのブランディング講座

Vol.1 「スタートアップに重要なブランディング」

Vol.2 「起業家なら押さえておきたいインナーブランディングという概念」

Vol.3 「起業家ならチェックしておきたいペチャクチャナイト」

Vol.4 「ブランディングから見た、良いホームページつくりとは 前編」

Vol.5 「ブランディングから見た、良いホームページつくりかた 後編」

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