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毎月必要な作業はたくさん
一口に給与計算といっても、さまざまな作業があります。まず、どんな作業があるのかを見てみましょう。
【毎月の作業】
●勤怠集計データの確認
●当月の変動支給・控除額の整理
●残業手当の計算
●個人情報変動の確認
●遅早欠減額の計算
●所得税額、社会保険料の計算
●総支給額の計算と確認
●所得税、住民税、社会保険料の納付
●支給準備と支給(銀行振込依頼書作成など)
●源泉徴収簿の転記
●標準報酬随時改定
給与には、大きく「支給項目」と「控除項目」があります。支給項目には、毎月固定の基本給や通勤手当のほかに、毎月変動する残業手当があります。一方、控除項目には、基本毎月一定の社会保険と住民税、毎月の給与金額によって変動する所得税や雇用保険があります。
ただし、社会保険は要注意。社会保険料は、その年の4~6月の3カ月間にもらった給料総額の平均(標準報酬)に応じて、定められている等級に基づいて決めら れていますが、給与総額に2等級以上 の変動が生じた場合、社会保険事務所に届け出なければなりません。従業員が引越しをして通勤交通費が変動するなどした場合に起こりがちです。
うっかりミスが起こりがち
毎月の作業では、まず一人ひとりの残業時間を計算し、それに個別の基本給金額を掛け合わせて残業手当を算出します。22時以降の深夜残業や休日出勤の場 合、その時間分をさらに1.25倍する計算が必要です。そのようにして毎月の給与総額を算出したら、次は源泉徴収する所得税額や雇用保険の金額を算出しま す。人によって税額が変わりますので、注意深く確認するという気の抜けない作業が必要です。
計算の結果を給与明細に落とし、従業員の銀行口座に振り込むか手渡しをする一方、所得税や住民税、社会保険を納付して、毎月の給与計算業務は終了します。
給与振込は、銀行の振込用紙に金額を転記する際のミスにも注意しなければならず、その作業も手間がかかります。
数人程度ならば短時間、しかも月1回の作業なので大した負担にはならないかもしれません。「慣れてしまえばそれほどでもない」という声も聞きますが、10人以上ともなるとこれらの作業が面倒に感じるようになるはずです。
さらに年間の作業も
さらに、年に一度、決まった時期にやらなければならない作業もあります。
【年間の作業】
(1月)
●給与支払報告書作成
●法定調書合計表作成
●個人情報の整理・確認
(4月)
●昇進・昇給対応
(5月)
●労働保険料の年度更新
(6月)
●住民税額改定
(7月)
●賞与支払
●賞与支払届作成
●社会保険定時決定処理
(9月)
●社会保険料の改定通知
(10月)
●改定後の社会保険料の徴収
(12月)
●賞与支払
●賞与支払届作成
●年末調整
5月の「労働保険料の年度更新」と、7月の「社会保険定時決定処理」の際には、4~3月の1年分の給与総額を事業所ごとに集計し直す必要があり、手作業では相当な手間がかかってしまいます。
なお、厚生年金保険料は、2006年9月から2007年8月まで14.642%ですが、法律の改正により、この14.642%が毎年0.354%ずつ料率 がアップし、2017年以降は18.3%になります。これらの計算は、入社年月によって一人ずつ異なるものですから、その計算の手間はかなり大きなものに なります。
会社では、年に1度年末調整というものが行われます。この年末調整とは、会社が給与を支払う際に、所得税を差し引いて支払っていた分、年末に1年分の税額 を確定し、その差額を精算するものです。年末調整では、表計算ソフトを使うにしても、月々の給与額を算出し、税額や控除額などは別途計算するなどの手間が かかるものなのです。
従業員が10人以上ともなれば、総務や経理などのバックオフィス業務専任者の派遣や採用を考えるようになるでしょう。そう なった場合、経営者は担当者に丸投げすれば済むと考えるのは早計。手作業では計算ミスが起こりがちですし、給与の元となる労働時間などは、従業員のマネジ メントに重要な情報をもたらしてくれます。つねに目を光らせている必要はあるのです。
給与計算をミスなく効率的に行う専用ソフト
そのように大変な給与計算をミスなく効率的に行う方法があります。最近では、毎月の給与計算はもちろん、年間の実務や不定期の処理までトータルに対応する 給与計算ソフトが市販されています。タイムレコーダーの情報を直接転記し、従業員の毎月の勤怠状況を自動的に集計する機能までも備えたソフトがあります。 また、オンラインバンキングソフトと連動するソフトもあり、そのサービスを利用すれば振り込み伝票への転記ミスがなくなり、かつ振り込み作業の手間が大幅 に軽減されます。
給与計算などをしていると、所得税や扶養控除などの税務関係から、社会保険料や労働保険などの保険関係まで、担当する範 囲は広く、その処理方法についてのアドバイスがほしくなる機会も多くあります。ソフトによっては、税金や保険の処理について解説をしたアドバイザー機能が 搭載されていたり、解説ページで基本的なことを調べることができるので、担当者の心強い味方にもなってくれます。
ほかに、外注に出すとい う方法もありますが、それでは固定費が継続して発生します。ソフトならば、サポートサービスを利用する場合には別途継続的な費用がかかる場合があります が、社内リソースで給与計算の作業ができることは、コスト削減にも役立ちます。一度、導入を検討してみることをお勧めします。