Vol.12 「税制改正」って、何が変わったの?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
2006年4月1日に施行された税制改正。小規模の会社経営者に影響のある改正には、どんな項目があったのでしょうか。また、2007年4月は、同様にどんな税制改正が行われるのでしょうか。

 

小規模の会社経営者に影響のある改正内容

 
 2006年および2007年の税制改正において、小規模の会社経営者に大きな影響のある主な項目として、次の4つが挙げられるでしょう。

  1. 特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置の導入
  2. 交際費等の損金不算入制度の見直し
  3. 減価償却制度の抜本的見直し
  4. 中小同族会社に対する留保金課税制度の撤廃

 それぞれについて解説していきます。

 

1.特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置の導入

「経費の二重控除」の排除

  従来、従業員がオーナー経営者一人しかいない会社(いわゆる“一人会社”)の場合、経営者が自らへの役員給与を法人段階で人件費として計上し損金に算入す る一方で、その役員給与については、個人段階で給与所得控除を受けることが可能となっていました。つまり「経費の二重控除」状態となっていたのです。この メリットを享受しようと、個人事業者が租税回避を目的として法人形態を選択する「法人成り」が常態化していました。

 しかし、個人事業者の場合は、売り上げから原価や諸経費を引いた残りが本人の個人所得という形になり、その分は課税対象となります。つまり、一人会社と個人事業主とは、課税上不公平でした。

 そこで、2006年4月の税制改正において、実質的な一人会社(*特殊支配同族会社)におけるオーナー経営者への役員給与については、法人段階で経費の二重控除に相当する部分(給与所得控除相当部分)について損金算入が制限されることになりました。

*特殊支配同族会社:オーナー経営者およびその同族関係者等が、株式等の 90%以上を保有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占めている同族会社

 ただし、基準所得金額が次のとおり一定の金額以下である事業年度については、この制度は適用されません。

(1) 基準所得金額が年 800 万円以下の法人(※2007年度改正で1600万円以下に引き上げ)
(2) 基準所得金額が年 800 万円超3000 万円以下であり、かつ、基準所得金額に占めるオーナー経営者の役員給与の割合が1/2以下の法人(※同様)

 

新会社法の施行が背景に

  この改正の背景には、2006年5月1日の新会社法の施行があります。新会社法では、最低資本金規制(株式会社1000万円、有限会社300万円)が撤廃 され、1円から株式会社が設立できるようになりました。また、従来は3人以上必要だった取締役が1人でも株式会社を設立できるようになりました。

 新会社法の施行でより会社が設立しやすくなるので、従来の租税回避を目的とする会社設立を抑制することがこの改正の眼目であるといわれています。
 

2.交際費等の損金不算入制度の見直し

一人あたり5000円までは無条件で経費に

 2006年度の税制改正(4月1日より適用)により、1人当たり5000円以下の社外の人との飲食費(社内飲食費を除く)は交際費等の範囲から除かれ、損金に算入できることになりました。
 
  従来、資本金1億円以下の企業の場合、400万円までの交際費は90%しか損金計上できませんでした。つまり、交際費として一人あたり5000円使った場 合、500円は経費として認められなかったのです。それが、一人あたり5000円までは無条件で100%経費として認められるようになったわけです(な お、資本金1億円以上の大企業の場合は、交際費は全額損金参入できません)。

 この背景には、社外飲食費について「(全額損金算入できる)会議費」か「(一部損金算入できない)交際費」かをめぐる線引きが不明確という問題があります。税務調査などでの無用のトラブルを回避する目的があると思われます。

 

飲食があった状況を記載した書類保存が必要

  ちなみに、社外の人を招いての業務上の打ち合わせなどで飲食した場合、「会議に際して社内または通常会議を行う場所において通常供与される昼食の程度を超 えない飲食物等の接待に要する費用」は会議費として認められます。それは金額のみの形式的な判断によるのではなく、実質的に会議に伴う飲食費か否か、社会 通念上相当か否かという観点から判断されます。一般的にビール1~2杯程度ならば問題にならないとされているようです。ただ、実質判断を伴うため、かえっ て税務調査の現場で会社側と調査側の見解の相違が生じやすい点もありました。今回の改正により、社外飲食費については会社の内部基準を定めて「一律一人当 たり5000円以下」は会議費、「一人当たり5000円超」は交際費という割り切った扱いも採用できるものと思います。

 なお、交際費等 の範囲から「1人当たり5000円以下の飲食費」を除外する要件としては、「その飲食等のあった年月日」「その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業 に関係のある者等の氏名又は名称およびその関係」「その飲食等に参加した者の数」「その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称およびその所在地」を記載 した書類を保存していることが必要です。

 

3.減価償却制度の抜本的見直し

100%償却可能に

  2007年度の税制改革で、減価償却制度の抜本的見直しが行われます。これにより、2007年4月1日以後に取得する減価償却資産については、償却可能限 度額(取得価額の95%)および残存価額を廃止し、耐用年数経過時点で1円(備忘価額)まで償却できることとなります。2007年3月31日以前に取得し た減価償却資産については、償却可能限度額まで償却した後、5年間で1円まで均等償却ができることになります。

 従来は、除却しない限り 取得価額の95%までしか償却できず、5%分は損金計上できませんでした。また、フラットパネル製造設備などの減価償却資産の耐用年数が10年から5年に 短縮されます。この改正は、これらのことにより、設備の更新などが進みやすくなることで経済が浮揚する効果を狙ったものであるといえます。

 さらに、2007年4月より、*250%定率法が導入されます。
 

*250% 定率法:定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍(250%)した率を償却率とする定率法により償却費を計算。この償却費が法定耐用年数から経過年数を 控除した期間内にそのときの帳簿価額を定額法で全額償却すると仮定して計算した償却額を下回るときに、償却方法を定率法から定額法に切り替えて、備忘価格 まで償却する方法。

 

4.中小同族会社に対する留保金課税制度の撤廃

中小企業の発展に好影響

 従来、特定同族会社(同族関係者1グループで株式等50%超となる会社)は、内部留保した金額に対して追加的に課税されていました。それが、2006年度の税制改正で、資本金1億円以下の中小企業は、留保金課税の適用対象から除外されることになりました。

 中小企業が成長・発展するためには、設備投資を行うための資金の確保や、金融機関などに対する信用力の向上のために利益の一定の内部留保が必要です。この税制改正で内部留保を行う阻害要因が排除され、中小企業の発展に好影響を及ぼすことが期待されます。

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