Vol.14 社長の給料ってどう決める?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
個人事業主は、税法上、本人の給料などは特に決めなくてもよく、上がった収益がすなわち収入となっていました。しかし、会社を設立すれば、経営者の報酬金額はきちんと決めなければなりません。では、どうやって決めればいいのでしょうか。

 

経営者は自分の給料を自分で決める

 
  株式会社の場合、経営者は自分や役員の報酬金額の総額を株主総会で決めなければなりません。一度決めた金額は、当該年度の決算後の定時株主総会、つまり1 年後でなければ変更できないのです。決算前に思った以上に利益が見込める場合、経営者の報酬を厚くして会社の利益をなるべく少なくし、法人税を減らそうと いうたくらみを防ぐためです。これは、経営者1人だけの会社の場合も同様です(この場合、株主総会は自分の頭の中で行われることになりますが)。

  つまり、社長とて、会社から月々の給料をもらっているという点では一般の社員と同じです。しかし、経営者は基本的に自分の報酬金額を自分で決めることがで きます。ですから、経営者の報酬金額をいくらにするかは、経営者自身の考え方が如実に反映することになります(もちろん、会社の収益状況によって大きく左 右されることになりますが)。

 

社長の給料金額にはさまざまな要素がからむ

  極端な例ですが、従業員を最低レベルの賃金で雇用し、儲けをごっそり自分の給料として、会社の利益を赤字スレスレになるくらいに押さえている経営者もいれ ば、自分は無給に近い金額で働き、その分は従業員に手厚く報いる、という経営者もいます。そこには、従業員の採用条件やモチベーションへの影響、納税によ る社会貢献に対する価値観、自身の「経営哲学」など、さまざまな要素が存在しています。それらをじっくり考えた上で、最終的にいくらにするかを決めることにな るでしょう。

 とはいえ、多くの経営者はどのような基準で決めているのでしょうか。一般的な考え方をご説明しましょう。

 

法人税と社長個人への課税金額の見合い

 多くの経営者は、合法的にできるだけ納税額を少なくするために、最終的な会社の利益が損益トントンになるように自分や役員の報酬金額を調整しているようです。というのは、多くの場合、税率は所得税より広義の法人税(法人税の実効税率)のほうが高いからです。

  広義でいう法人税には、国税である狭義の法人税(表面税率30%)、地方税である法人住民税(同17.3%)、同じく地方税の法人事業税(同9.6%)が あり、これら3つを合計すると56.9%になります。ただし、法人事業税は損金算入できますので、実効税率は40.8%になります。

 それ に対し、個人の所得税は累進課税となっており、2007年からは所得が1800万円を超えると40%、900万円超~1800万円以下だと33%、695 万円超~900万円以下の場合は23%。住民税は一律10%です。つまり、単純計算では、経営者や役員の報酬(年俸)は、会社が赤字にならない範囲内でぎ りぎり900万円以内に設定すると、所得税+住民税は33%となって、もっとも利益を享受できるといえるでしょう(ただし、Vol.12で説明した特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の適用を受ける場合には別途注意が必要です)。

 

無給でも課税される!?

  ここでいくつかの注意点があります。まず、収益が落ち込んだ場合、多くは、経営者は自分の報酬を後回しにしてでも従業員に給料を支払うでしょう。その場 合、会社の帳簿上は、その後回し分は「未払い金」に計上されるものの、一度決められた経営者の報酬は不変的に支払っているものとみなされます。つまり、経 営者自身は現金を手にできなくても、その金額分の所得税は徴税されるのです。報酬金額を強気に設定し過ぎると、そのギャップは大きくなりますのでダメージ となってしまいます。経営者や役員の報酬を決める前に、できるだけ正確な売上予測を行うことが肝要です。

 次に、会社として一定の利益を出 しておかないと、いざ金融機関から借り入れを起こす時に審査に通らないという要因もあります。この場合、役員報酬も当然チェックされますが、例えば経営者 の報酬が年200万円などと設定されていると、「黒字を出すために相当無理をしているな」と受け取られてしまうでしょう。

 

報酬以外のボーナスは損金計上ならず

  経営者や役員の報酬金額の決め方は、年額でも月額でもどちらでもかまいませんが、無用なトラブルを防ぐためには月額で決めたほうが無難です。これは単純に 「年額」いくらとした場合、決算期の1年間(3月末決算であれば4月~翌年3月)でいくらかと決めたのか、暦年(1月から12月まで)でいくらと決めたの か、不明確になってしまい、税務調査時に当局との無用な論争を生む可能性があるからです。

 なお、役員に対する報酬以外のボーナスは税法上損金算入できず、課税対象になりますので、注意が必要です。

 また、Vol.12で も説明したとおり、税制改正によって特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限措置が導入されています。ただし、その同族会社の所得金額とオーナー社長の 報酬の合計額の直前3年以内の平均額が年800万円以下の場合、もしくはその平均額が年800万円超3000万円以下で、その平均に占める社長報酬の割合 が50%以下の場合は適用除外となります。該当する場合はメリットがありますので、調べてみるとよいでしょう。

 

給与の額面金額のみならず実際の手取り金額の算定にも注意

  経営者の給与からは今まで述べた所得税、住民税が控除されるほか、社会保険料(健康保険料および厚生年金保険料)も控除されます。これらのさまざまな控除額を差 し引いた手取額が実際に日常生活で自由に活用できる所得(可処分所得)となります。特に社会保険料などは意外に高額になりますので、注意が必要です。

 こうした手取額の算定などは、給与計算ソフトを活用すると容易に行えます。手頃な給与計算ソフトもありますので、手取額のシミュレーションなどに活用されてみてはいかがでしょうか。

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