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■利益を増やす唯一の方程式
利益はどうしたら増やすことができるでしょうか?
そう問われて即答できる経営者はなかなかいないでしょう。
ボクもかつてはそうでした。
しかし、ボクの知り合いである会計士の先生の話を聞いて、とても納得することがありましたのでご紹介します。
その方は「売上-経費=利益」・・・この数式にすべての答えがあるとおっしゃられていました。
「何だよ。当たり前じゃないか!」
そう思われた方も多いでしょう。
そうなんです。当たり前のことなんです。
では、この数式に当てはめたとき、“利益”を増やすためには、どうしたらいいでしょう?
単純に“売上を増加”し、“経費を削減”させることができれば良いだけです。
経営改善といえば、おそらくどこの会社も「販売戦略を見直す」とか「商品開発を進める」という“売上を増やす手段”を模索したり、仕入れ価格や経費削減のための業者を変更したり、人員整理などリストラ策を講じるといった“経費を減らす手段”を講じたりします。
しかし、アーリーステージの経営者には、ここに“落とし穴”があります。
売上が増えたところで、増加分以上の経費が掛かってしまっては意味がありませんし、経費が削減できても、売上そのものが減ってしまっては本末転倒です。
■ベンチャーがやりがちな間違った利益増加法
まず多いのが、「売上は増えたが赤字」というパターン。
これらの経営者からよく聞くのは「これは先行投資だ!」という言葉です。
経験が少ない経営者の場合、ほとんどの場合、「先行投資」は“無駄な経費”に終わる可能性が高いです。
ボクも数千万のお金を勉強代として、色々な会社に収めてきましたから、良く分かります。 (実際に耳が痛い経営者は多いと思います。)
ある程度の規模になるまでは、先が分からない投資をするよりは、アイデア1つでどうにでもなると考えておいた方がいいでしょう。
利益を生み出すためには、「経費削減」と「売上増加」・・・この2つの選択肢しかありません。
この “シンプルな考え”を実践すれば良いだけなのに、多くの経営者は悩みます。
何故かと言えば、行動レベルまで考えた場合に、それぞれの業態やビジネスモデルによって、有効な手段は千差万別、十人十色だからです。
地域性や業界内でのポジション、社内での人間関係(!)など、環境や状況にも影響されてしまうことが多く、これといった共通する解決策がほぼ無いという部分が大きいからです。
例としては・・・
ビジネスの形態が「固定費型」なのか、「変動費型」なのかというもの。
ボクのやっている貸会議室ビジネスは、完全な「固定費型」で、主なコストは家賃や人件費、システム運営費などの固定費用がほとんどです。
売上に関して言えば、部屋ごとの「1時間あたりの単価×利用時間」の合計によって決まり、一度部屋が埋まってしまうと、同じ時間にはその部屋では他に売上を上げようがないので、「売上の限界値」というものが存在します。
つまり、ある一定の時期や時間だけたくさん売れるというニーズがあったとしても、在庫そのものに限界があるので、“小売業”などの変動費型と違い、「多く仕入れて売る」ことはできません。
そのため、出来るだけピークを作らないような「安定的な売上の確保」が必要となります。
貸会議室ビジネスの場合、お客様のご利用目的はさまざまですが、効率的にお客様向けに営業をしようと思ったら、その先は「研修」や「会社説明会」などの企業側のニーズに対するものになると思います。
しかし、これらのニーズは、ピークが春先などに集中してしまう危険性もあり、「安定的な売上の確保」という点では問題が残ります。
だからといってすべてお客様のニーズを営業でフォローしていくというのは、用途を絞らずスペースをお貸しするという”貸会議室ビジネス”そのものの性質を考えれば、ほぼ不可能と言わざるを得ませんし、そもそもマーケットを絞り込めない時点で営業効率が悪すぎます。
■ベンチャーが利益を出すなら、Push型よりもPull型営業
ですから、ボクはPush型の営業ではなく、Pull型の営業をしようと思いました。
・・・つまりは“Web集客”です。
「広告費」も固定費ですから出来るだけ増やしたくない。ですから、自社でSEO対策や集客の研究も行いました。
人件費削減のためと、夜中や土日などの人がいないときに予約が取れないという機会損失をしたくないとの考えから、どの会社も専門的に制作していなかった「貸会議室ビジネス専用の予約決済システム」も独自に開発しました。
これは、ボクが元々システムエンジニアであったという“スキル”、そしてシステム開発が出来る会社を経営していたという“環境”が大きく影響した上で、以下のような数式が成り立ったのです。
「利益を増やす」 = 「売上の増加:Web集客の仕組み」-「費用の削減:貸会議室予約システム」
“貸会議室ビジネス”を行っている企業がすべてこの手段が講じることが出来たか、効果を出すことが出来たかと言えば、そうではありません。
ボクにとって効果的な方法も、他の企業では意味が無いということもあり得るのです。
結局のところ、自らが持つリソースをどう活かして、この“2つの手段 (「経費削減」と「売上増加」) ”を実現させていくか、これこそがその企業にとっての“利益を増やすポイント”が集約されている部分です。
すべての会社に共通する有効な手段はありません。まさに“経営者の手腕が問われる部分”であると言えます。
■利益を生む価値をきちんと認識しよう
では次に、違う角度から見てみましょう。
“価値”についてです。
あなたのビジネスがオフィス機器販売だとしましょう。商売の方法としては、“メーカーや卸会社から商品を仕入れて、自分の顧客に販売する”ということになります。
ある優秀な営業マンであるAさんは、会社から指示された販売価格で順調に販売していきますが、いつも成績が悪い営業マンBさんは、いつも大幅な値引きをすることでしか販売することができませんでした。
仕入れ価格は同じなので、売上の額によって利益が決まってしまうため、Bさんは利益を減らすことでしか販売が出来ていないということになります。
当たり前のことですが、販売する側の会社にとってみれば、以下のようになります。
“安く売れば、利益は減る。”
“高く売れば、利益は増える。”
誰だって、何かを購入するときに“出来るだけ安く買いたい”と考えるはずですし、それが顧客の基本的なニーズと言えます。
しかし、Aさんは値引をせずに販売をしている。
AさんとBさんの間にはどのような違いがあるのでしょう?
・・・その答えは、彼らが与えている“価値”にあります。
今回の例であれば、「Aさんから購入する」という事実がお客様にとっての“価値”となっています。
それまでの付き合いで得た信頼関係やビジネストークなどに価値を感じることが出来たから、対価を支払う。
つまり、その製品の価値というのは、どんな相手に対し、どんなアプローチをしたかによって、かなり変動するということです。
単に製品を販売するというだけでなく、どんな付加価値を付けることが出来るかによって、得られる売上が変わってくるということです。さらにビジネスにおける“価値”を考えていくと、単に個別の売上だけの話ではなくなってきます。
お客様が感じる価値という意味で言えば、その図式が下記のようになった方が良いと思います。
「サービス提供者<お客様」
つまり、サービスを提供している側が思っている価値より、そのお客様が感じている価値の方が大きいという状態です。
■新規顧客を取るよりも、まずはリピーター作りをしよう
ラーメン屋に例えると、そのラーメン屋が1,000円で提供しているラーメンを食べに来ているお客様は1,500円の価値を感じていたとします。このような状況の場合、おそらくそのお客様は、何度も来店されることになると思います。
つまりは、「リピーター」を作ることが出来るということです。
経営者が売上を考える際に、一番簡単な方法は「リピーターを作る」ということです。おそらく営業を少しでも経験したことがある人であれば、「新規顧客を得る」ということがいかに難しいかを理解していますよね?
私の会議室ビジネスでも、Web集客による新規顧客も重要ですが、売上についてはほぼリピーターさんで成り立っています。これは、「Web上で安さをウリにしていながら、実際に使ってみると綺麗で使い勝手が良い」と感じていただいていることの表れだと思います。
これは私の“狙い目”でもありました。
実は、私のWebサイト上では、出来るだけ「安い」という事実をインパクト付けるようにしています。
逆に、綺麗だとか清潔だとか、使い勝手が良いなどはあまり強く推していません。
何故かと言えば、これらのことは「お客様にお越しいただいて、実際の使用感として感じていただかないと意味が無い」と気付いたからです。
Webサイト上で、自社のサービスのメリットを押し付けたところで、その場で感じることの出来ない“価値”というものは、仮に情報として与えたとしても邪魔になるだけで、あまり効果を生み出さない・・・このことはかなり重要だと感じました。
最初から、これができていた訳ではありません。
数々のトライ&エラーを繰り返すことで、お客様が「まず使ってみよう」という価値の部分を強調し、ウチの会議室にお越しいただくことが一番大事だろうと考えました。
その強調する部分が、ウチのビジネスで言えば“圧倒的な安さ”だったと言う訳です。
「安さを目的にしてきたものの、実際に使ってみたら、サービスとして及第点以上だ」
・・・こんな風に感じてくださったからこそ、リピーターとして、使っていただけているのだと思います。
実際に、“提供している価値”より、“お客様が感じてくれている価値”が大きいということは、すなわち「粗利率が高い」ことに他なりません。すなわち、この価値のギャップがいい意味で大きければ大きいほど、そのビジネスは利益を生み出す可能性が高いと言えます。
■ベンチャー企業が意識すべきもっとも重要な価値は希少性
最後に“価値”の話をもう少しだけ。
ここまでの話で、「出来るだけ顧客が価値を感じてくれるようなビジネスを目指せば、多くの利益を生み出せる」ということがご理解いただけたと思います。
しかし、それだけでは十分ではありません。
必要なことはさまざまですが、中でも重要なのは「希少性」です。
もし、「誰でも出来るモデル」であれば、同じようなビジネスを目指す企業が増えて、寡占状態になってしまいます。
仮に大資本が参入してくれば、全く勝ち目はありませんよね。
ですから、“資本による優位性が高いビジネスモデル”、“参入障壁が低いビジネスモデル”は長続きしません。
ビジネスは何より、「継続する」ことが重要です。 新しいビジネスを生み出すための労力を考えたら、たった数ヶ月で撤退しなければならないようなモデルでは、怖くて手を出すことができません。
そのために“希少性”が高いモデルでなければなりません。 例えば技術に特化したベンチャーであれば、「特許を取得している」というような、他社には真似できない要素があるとか・・・。
例としては、「参入障壁が高いが、それを低くする手段がある」、「他社には実現できない仕組みを有している」などをウリとすることも多いです。
ボクの“貸会議室ビジネス”で言えば、「独自の予約決済システム」でしょうね。
はっきり言えば、貸会議室ビジネス自体は、そんな新しいビジネスではありません。 TKPさんが全国展開することで、近年に“新たなモデル”として確立した感はありますが、貸会議室という業態は昔からありました。
しかし、TKPさんやウチがやっているビジネスは、それまでの貸会議室業とビジネスモデルという意味では全く違っていて、このことが既存の業者とは違う「高い利益率」を実現できているのだと思います。
■まとめ・・・利益を確保するには
- 利益を増やすのは“売上向上”と“経費削減”の2つの手段しかない
- 自身のビジネスの特性に合わせて、オリジナルの方法を考えよう。(共通した解決策はない!)
- お客様が“高い価値”を感じるようなサービスを目指そう
- 分にしか出来ない”希少性”の高いビジネスモデルを構築すべし!
次回は、プレーヤー社長が陥りやすい失敗について解説します。