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■社長個人がやるべきこととそうでないことをコスト換算しよう
ボクは元々エンジニアで、フリーとして働きながら法人化したという経緯もあり、起業してかなりの期間は、経営者でありながらエンジニアとしても活動していました。
・・・と言うよりは、ほとんどエンジニアとして働いていた時間の方が多いと思います。
起業当初は、当然のことながら、事務員もいません。
日中にエンジニアとして働きつつ、夜に事務所に戻って、事務作業をする・・・そんな日を繰り返していました。
当初は、以前からの友達に事務員としてアルバイトで手伝ってもらっていたので、事務作業は少しだけ手を離れるものの、採用や人事、教育、営業など、頭がクラクラするぐらいに、やらなければいけないことが目白押しでした。
・・・今、当時のことを考えただけでうんざりです(笑。
業務を着実に遂行してくれる組織があれば、どれだけ楽だろう・・・起業した経営者は誰しも思うはずです。
しかし、当然はそのようなものはありませんでした。
創業当時には、間接部門での経費、特に人件費が経費として重く圧し掛かり、経営を圧迫しかねません。
だから雑務は自分でやる。この選択肢はある意味間違っていません。
特に、プレーヤー出身の経営者は、かなり自分でやってしまうことが多いような気がします。
ただし、ある程度の事業規模になると、品質の平準化が重要となり、管理をせざるを得なくなります。
起業家はただでさえ「やらなければいけないこと」が次から次へと発生します。
作業が滞ってしまえば、事業が立ち行かなくなることも十分にあり得ます。
ここで問題になるのが、「自分でやればタダ。他人にやらせればコストがかかる」という考えです。
しかし、自分でやることが本当に「タダ」なのでしょうか?
■社長の時間給より安ければ人を使うべし
自分でやれば、確かに人件費を払わなくて済みます。しかし、それだけ自分の時間を割かなくてはなりません。ここで重要になってくるのが「自分の時間もコスト」だということです。
前章で出てきた“価値”で例えれば、
「自分自身が事務作業に充てた時間の“価値”」
「もし、それをせず本来の仕事をしたときに生み出す“価値”」
ちなみに、前者は“経費”、後者は“売上(もしくは利益)”で、利益は「経費を抑えて売上を増やせば良い」ので、どちらを選択しても間違いではありません。
ただ、気にしなければいけないのが、「比較してどちらが大きいか?」ということです。
事務作業のコスト:
【前提条件】もし自分自身が”1時間”で出来ることを、事務員を雇うことによって“3時間”かかるとします。
時給1,200円であれば、「3,600円の“価値”」です。
もし、自分が本来の仕事をした場合に、この「3,600円の“価値”」(この場合は利益でしょうね)以上のものを生み出せないようであれば、自分で事務作業をした方が良いということになります。
しかし、少し厳しい言い方をしますが、経営者であれば、この程度の“価値”を生み出せる自信がないのであれば、「起業した意味が無いんじゃないか」とさえボク自身は思ってします。
・・・特にプレーヤー経営者であれば。
営業畑出身の経営者は、この辺りの扱いが上手な人が多いです。
元々、事務作業が苦手な人が多く、経理や法務に疎い方が多いので、自分で出来ることの限界を知っていて、他人に頼る以外に選択肢がない・・・(営業畑の経営者の皆さんすみません)。
その結果として、きちんと間接部門を作っていくことができるのです。
■起業と独立は違う。
よく、士業の方から「事務を雇おうか迷っている」という話を受けることがあります。
そういった時は、「雇って給料を払うことができるほどの売上が立てられないのなら、やめたほうがいい」と即答します。
もし、自分1人が何とか食べていけるだけの収入しか得られないのであれば、起業した意味なんてありません。
起業や独立はサラリーマンに比べ、将来のリスクも大きいですし、安定する保障もありません。 少なくともある程度満足できる収入が無ければ、続けていくこともできません。
創業間もない頃はともかく、1年経っても事務員の1人も雇えないようであれば、その先は無い・・そのぐらいの気構えがなければ、ある程度の成果は出ないとボクは思います。
とはいえ・・・ボク自身も起業当時はそんな風には考えられませんでした。
エンジニアとして自分で稼ぎ、社員を雇わなければ、リスクは少ない・・・そう考えていた経営者の1人です。
ですから、起業家の苦悩は痛いほど分かります。
しかし、事務員が行う作業の“価値”を超えられないような“価値”しか生み出せないのであれば、そのビジネスやあなた自身はマーケットから求め続けられると思いますか?
その答えは皆さんもお分かりだと思います。
■まとめ・・・プレーヤー経営者が陥りやすい失敗として
- コストを気にするあまり、何でも自分でやるのは非効率
- 雑務は他人に任せ、起業家はその時間を有効活用して”高い価値”を生み出そう
次回は、いよいよこのコラムの最終号です。