●7つの誤解とは
ITを経営に活かすノウハウをご紹介する前に、まずは、経営者やユーザー企業が犯しがちな「ITに対する大いなる誤解」について、その誤 解を解く機会をいただきたいと思います。
以下にご紹介する7つの誤解は、意識や行動に顕在化しているものもあれば、潜在化しているものもあります。特に潜在化しているものは、文字で読む と一応納得するものの、実際にはそのとおりに行動できていないことが多いものです。ぜひ、これまでの行動や言動を振り返りながら、当てはまるかどうか考え てみてください。
その1.ITに経営者が関わる必要はない
もちろん、細かい技術事項に詳しい必要はありません。しかし、自社の経営課題に対する
IT導入企画に対して、その良し悪しを自ら判断できなければなりません。部下から上がって
くるものを中身もよく見ずに承認するのでは、経営方針に本当に沿っているのか、コスト的
に妥当なのか、無駄な機能に費用をかけてないか、確認できないのではないでしょうか。
その2.ITは、何でも専門家に任せたほうが手っ取り早い
「何でも」の部分が誤解です。社外の人間は、自社のことを深くは理解できません。単な
る効率化目的や自社の主要業務とかけ離れている場合は、専門業者への委託を上手に活用す
べきですが、その場合でも業者の業務状況を管理しなければ、無駄なコストがかかっていて
も気がつきません。また財務的にも、過度のリース・アウトソースは実質的に他人資本の増
加を意味します。
その3.ITを導入すれば、必ずコストが削減できる
全体でコストを下げるには「工夫」が必要です。この工夫は、ユーザーがしなければなり
ません。ベンダはそこまで対応してくれません。考えればすぐわかることですが、IT導入に
よって社内で管理するものが増えるわけですから、それを活かすためのプロセスが伴わなけ
ればコスト増なのです。
その4.ITによって自動的に売り上げを向上させることができる
前記と同様、売り上げ向上にも「工夫」が必要です。売り上げ向上の源泉は経営戦略であ
り経営方針ですから、これとITが合致していなければ収益は絶対に上がりません。「ITで売
り上げアップ」などという単純な話はありえないと認識してください。
その5.ITは一度買ってしまえば後は気にしなくてもよい
むしろ、買った後が問題です。運用に人件費がかかります。定期保守にもコストがかかり
ます。それにも増して、本当にそのITが自社に収益をもたらしているのか、それとも足を引
っ張っているのか、しっかり評価しなければ何もわかりません。
その6.IT導入で効果が上がらないのは、ベンダの能力のせいである
そのような場合もありますが、ユーザー側に原因があることもあります。そもそも、ベン
ダの無能さを判断できるということはそれだけユーザーが有能ということになると思います
が、有能なユーザーなのであれば、効果が上がらないことに気づく前にベンダの無能さに気
づき、対策が取れるのではないでしょうか。
その7.ITシステムに障害が発生したら、すべてベンダが対応すべきである
専門的な対応はベンダが実施すべきですが、どういう状況が発生しているのか、目視で確
認できることは何か、一次的に対応できることはないか、という程度のことはユーザーでも
できるはずですし、そういった行動が早期復旧やビジネスの継続に繋がります。時に、画面
に出ている文字さえ読まないユーザーがいますが、そのようなユーザーには本当に驚きます。
いかがでしたでしょうか。多少厳しいことも書かせていただきましたが、ありえないようで本当にある誤解ですので、ぜひこの機会に見直し ていただければと思っています。