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●実践したい6つの条件
では、IT活用にまつわる7つの誤解をきちんと認識し、反対にITを活用して収益をスパイラル的に上昇させている企業はどのような企業な のか、筆者の実体験をもとにご説明したいと思います。
ITを経営に活かしている企業は、何も大企業に限りません。中堅・中小企業でも実現している例はあります。そして、その達成に貢献している条件 に、企業の大小はほとんど関係ありません。
1.経営の仕組みができている
ITを活かしている企業には収益を出す仕組み、すなわち経営戦略が明確にあります。その
仕組みの中からITを使ったらよさそうなところを探して、IT化しているのです。
2.ITの最新情報を知っている
IT技術の進歩の速さを認識し、積極的に情報収集して、自社に活かせる技術の把握に余念
がありません。(関連リンク<コラム記事vol.10最新のIT情報は広告から収集せよ>)
3.経営者が積極的にIT活用に関わっている
経営戦略からIT戦略への落とし込みや、IT活用方針の方向性、具体化するシステム構想の内
容など、本当に経営戦略と合ったものになるように、経営陣が主体的に関与しています。
(関連リンク<コラム記事Vol.5 システム導入で成功をつかむ経営者の共通点>)
4.情報セキュリティ対策を実践している
IT活用と情報セキュリティ対策はセットであることを認識して、全社レベルでのセキュリティ
ポリシーを策定し、対策を経営主導で実践しています。
5.継続的に業務改善しようとしている
IT活用のPDCAサイクルを確立しています。
<関連リンク>
ICT運営に適した組織体制のエッセンス(1)
http://www.ascentid.co.jp/column/back_004.html
ICT運営に適した組織体制のエッセンス(2)
http://www.ascentid.co.jp/column/back_005.html
この仕組みを経営者が主導して作り、積極的に実行しています。サイクルの規模は企業規模に
よって当然異なりますが、経営者から社員まで巻き込むという点は何ら変わりません。
6.IT活用の基礎知識を身につけようとしている
導入したITが使いこなせるように全社でITスキルのレベルアップや啓蒙を図っています。
これは、社員だけでなく経営陣も同様です。松下電器の事例は、その好例です。
<関連リンク>
「IT革新なくして、経営革新なし」、松下電器のIT戦略を見る
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20070416/268413/
●戦略的ICT経営のススメ
IT社会、または「情報通信」にまで視野を広げたICT社会においては、ICT活用の優劣が企業の総合力を左右します。確かに既製パッ ケージの活用は有効であり、コスト削減も可能です。ただしそれは競合他社も同じ条件であり、それだけでは優位に立てないことを十分に認識しなければなりま せん。
絶対に他社に負けないコアコンピタンスを認識し、その核の部分に独自に「構想」したICTを組み込み、それを活用する社員を訓練して絶対的な競争 優位を狙う。このことを「戦略的ICT経営」と呼びたいと思います。戦略的ICT経営は今、企業規模の大小を問わず、ICTを活用し収益向上につなげたい 企業にとって必要不可欠な経営能力になりつつあります。
簡単ではありません。しかし、実際に実践し不動の競争優位を築いた企業は確かにありますし、増えています。
●user-drivenの実践
戦略的ICT経営を実践すると、自社に合ったITの選択や、独自開発かパッケージか、自社運用かアウトソースか、などといった判断が自然 にできるようになります。本来ITは企業能力向上のために導入するものですから、ITを活用するユーザーが自社に適合するように積極的に組み立てるのが筋 です。
このような指向を“user-driven”(ユーザー駆動型)と呼びたいと思いますが、現状ではuser-drivenというよ りもvendor-driven、すなわち、ITベンダの提案にそのまま乗っかる形でシステム導入するケースが多く見られます。このようなケースでは、シ ステムができ上がったあとで「こんなはずではなかった」とベンダ側と揉めるというよくある話が、高い確率で発生します。最悪の場合、そのシステムは使われ なくなります。
ぜひ、vendor-driven化して時間もコストも無駄遣いする企業ではなく、IT運営能力の高いuser-drivenな企業を目指していただき たいと思います。