経営を成功に導くIT Vol.2 多額のIT投資が失敗。その理由とは

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
ある製造業者で導 入した全社レベルのITシステムが、ある日使われなくなってしまいました。なぜ、そうなってしまったのでしょうか?原因はやはり「構想不足」でした…

使われないITシステム

 とある小規模な製造業者のお話です。 この企業は小規模であることを生かして顧客ニーズに柔軟に対応した生産を行うことを売りとして、順調に実績を伸ばしていました。それまで、生産管理は手作 業で行っていましたが、生産量が増えていくに従い限界が見え始めました。

 そこで経営者は、ITシステム導入により生産計画を電子化して効 率化を図るために、すぐにベンダに相談して、提案されたパッケージをベースとしたITシステムを導入しました。

 しかし導入後、情報入力を 行う、担当者から不満が続出しました。そもそもITシステム導入について事前に詳しい説明があったわけでもなく、担当者から見ればいきなりよく分からない ものが入ってきたような印象でした。それにこのシステムは生産計画に必要な情報を入力する操作画面が、これまでの作業フローに配慮した作りになっておら ず、使いにくいなどの苦情が多発し、システム導入後もこれまでとおり手作業で進めるケースが多くなりました。大きな投資をしたにもかかわらず、結果的には不 満を抑えられないまま、システムは利用されなくなってしまったのです。

 

構 想不在が失敗を招く

 前回、「イメージが湧く→構想を練る→調達に動く」の3段階を示し、構想の大切さを説明しました。上記のケースはま さに「構想不足」の典型例です。

 順調な業績向上の陰で生産管理業務が火を吹いてきたため、ITを用いて効率化を図ろうとする発想は正解で す。しかしそのイメージが浮かんだらすぐ「ベンダに相談する」のではなくて、その前に、

 

・では、生産管理業務をどうすれば、また情 報のやり取りをどうすればよいだろうか?

・ITシステムを導入することによって達成すべき目標は何だろうか?

 

  と考えます。システムにかける予算だけではなく、現在の業務状況と課題、担当者のITに対する理解度、業界のITシステム化動向、導入リスク、自社が中長 期的にあるべき姿など、さまざまなことを想定して「こんな要件をかなえるITシステムが欲しい」という「構想」を具体化します。特に中小企業では業務フ ローが標準化しきれていないケースが多いので、現状と課題の把握は一番重要なポイントです。

 

IT導入=業務フローが変わる

 また今回のケースが示すように、認識として特に注意したいのは、 「ITシステムの導入は利用者の業務フロー変更を意味する」ということです。つまり、使う人の立場(場合によっては顧客の立場)で、どんなシステムにすべ きか考えなければならないということなのです。もちろん、費用対効果の都合上、業務フローを根底から変更するという決断を下すこともありますが、それでも 一度は使う人の立場でITシステムを構想する段階を設け、効果とリスクを秤にかけるべきでしょう。

 さらに経営者(またはITを統括する経 営幹部)は、ITの導入について社内にしっかりと、その目的と方針を説明しなければいけません。ITは道具であり、使うのは人ですから、使う人の理解を得 てはじめて、想定どおりの効果を発揮できるのです。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める