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構想立案では「目標設定」が肝です
前回、IT システムを利用するイメージが浮かんだ後に、「ITシステムを導入することによって達成すべき目標は何だろうか?」と考えよう、 と述べました。この部分にはさらっと触れただけでしたが、実は大変重要なことなので、ここでくわしく説明します。
いきなり話がそれますが、例えばみなさんが株式投資をするとします。どんなふうに投資先を選びますか?手持ちの資金はどのくらいか、どの程度キャピタルゲ インを得たいか、などと考えるでしょう。そこには「資金を増やす」という目的があり、「このくらい増えればよし!」という目標があるはずです。
ITシステムを調達することも、資金を使って会社をよくするわけですから、企業にとっては「投資行為」です。ならば同じように、そこには目的があり、目標 があって然るべきですね。
しかし、現実はどうかというと・・・ 目的はかろうじて考えていても、目標まで明確に設定できている企業は、残念ながら大手も含めて結構少ないのです。
目標設定し、適切な判断と事後確認をする
目標を設定していない企業では、どう設定すればいいか が分からない、誰が設定するのか明確でない、と考えているのかもしれません。もしそうだとすれば、目標設定の重要性を直感的には分かっていても、なぜ重要 なのかについて考えてみたことが、おそらくないのではないでしょうか。
目標設定が重要な理由は二つです。「社内で共有す るため」、そして「後で効果を確認するため」です。
目標共有は、ITシステム導入 の目的を分かりやすく社内に浸透させる手助けになります。「なんでIT化するの?」という社員はいなくなるはずです。さらに、目標が基準となって、いろん な場面で社員の誰もが適切に判断できる効果もあります。例えば、ITシステムの要件を決める場面では、利用者などから多くの注文や要望がつきがちです。も し、すべての要求を受け入れれば、予算オーバーになります。そのとき、「それは目標達成に必要か」という判断基準が使えるわけです。他にも、ITベンダと の難しい調整の場面で判断基準に活用することができます。
また、目標設定をしておけば、ITシステム導入の投資効果を確認する時に、導入 後の実績と比較して評価することができます。改善の必要性判断の情報、今後のIT投資への参考情報としても使うことができます。これは企業のITレベル向 上の面で、非常に重要なポイントです。
目標は、できるだけ数値化する
最後に、目標設定の時に注意したいことを挙げておきましょう。それは「なるべく数値目標にする」ことです。理由は簡 単。比較がしやすいからです。
例えば、前回の製造業者の例ならば、生産計画の電子化で「製品納品のリードタイム半減」「在庫部品数の 1/3減」「納期遅れなどのクレーム2/3減」などと設定します。これらを業務フローとITシステムに応じてブレークダウンしていけば、システム要件に応 じた細かい指標を作ることも可能です。
設定した目標で社内が一致団結できる、そんな目標設定に経営者 が導くことが理想です。