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仮想事例を元に「構想」を練ってみましょう
今回は、仮想事例 を元に実際にどうやってITシステム構想を練るのかを考えてみましょう。もちろん、構想のあり方は企業によってさまざまです。ここでは一つの構想例とし て、端的に挙げてみます。
対象は、IT系のネットワーク機器を受託販売している企業とします。この会社はこれまで御用聞き営業を行って きましたが、今後は顧客の課題に個別対応するソリューション提案営業を行って受注件数を増やしたいと考えました。とはいえ、現状では担当者のスキルが一様 ではありません。そこで経営者は、担当者のノウハウを共有できるデータベース(DB)を導入し、能力の底上げをしたいとイメージしました。
提案型販売のための「ITシステム構想」
ここで、即ベンダーに話をしてはいけないのでした ね。次に考えるのは、「業務をどうすれば、また情報のやり取りをどうすればよいか?」です。
この会 社のように、担当者のスキルがバラバラで、情報も共有されていない場合、まずはノウハウの整理から始める必要があるでしょう。そこで経営者は社員に、案件 の典型パターンとその解決策、注意点などを過去の経験を基に洗い出すよう指示します。これらの情報を一定のフォーマットでまとめると、どんな項目立てで情 報を整理すればよいかが分かってきますね。これがDB要件の基礎になります。
検討するうち、公開できる範囲でノウハウをホームページ上 で見せてしまおうと思いつきました。それを見れば、顧客は自社の技術力がわかって安心する上、購入すべき機器も概ね判断でき、商談が早く進むはずです。こ れを実現するなら、WebサーバとDBの接続、情報の公開・非公開の区別も要件になります。
それから、今後の継続的な情報共有のため、 楽にシステムへの情報入力を行う方法が必要です。日常業務の負担にならない、誰でもできるやり方を、担当者で知恵を絞って考えるようにします。
さらに考えていけば、欲しいシステム像がかなり具体化されてきますね。そうしたら面倒でもそれを「要件」として文書にまとめておきます。 まとめることで、意見の整理や総合的な見直しが簡単になります。
「目標」を定める
「業務をどうすればよいか?」が固まったら、次に考えるのは 「達成すべき目標は何か?」でしたね。
このITシステムで達成したい大目標は、「受注件数の増加」「顧客あたりの受 注金額の増加」などでしょう。これらについて、○○%増や○○万円以上などの目標値を考えて決めます。
ただ、この指標だけでは担当者は 目標を追いにくいので、経営陣がもう少しブレークダウンします。例えば、「受注件数の増加」に繋がる指標として「顧客問い合わせ件数」「顧客提案件数」な ど、「顧客あたりの受注金額の増加」に繋がる指標としては「リピート購入率」などを挙げることができるでしょう。また、目標に合わせてシステム構想を見直 すと同時に、担当者が達成しやすいように業務プロセスを再構築することも重要です。
これが、ITシステムの構想を練る上での大まかな流 れです。もちろん実際は、もっと細かく検討していくのですが、このように構想を具体化してからベンダーに話をすればかなり突っ込んだ情報 を得られる上、ベンダーからの提案に対する深い理解やスムーズな判断にも繋がります。