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ITを使いこなす企業の経営トップ像とは
ITシステム導入に成功している企業において、経営者はどのようにそれに関わっていると思いますか?
実際にITシステム導入に成功した経 営者の方に、その進め方について伺うと、よく次のような回答が返ってきます。しかも、これは企業規模の大小を問いません。
「部下が提 案してくるものを検討する形ではなく、自ら問題意識を持って導入を決める」
「計画段階で社内調整が難航する場面があれば、自らリーダーシップを 取って決定する」
「ITで何ができるのかについて自ら情報を集めたり、部下に教えてもらったりしている」
どれも、トッ プがITを理解し、主導権を握って進めていることが窺えますね。
逆に、ITシステム導入がうまく行かなかった時、その 企業では例えば次のような状況が見られます。
「IT関連はすべてCIO(情報化担当役員)またはIT責任者に任せていて、経営者はノータッチ」
「経営者とCIOまたはIT責任者との意見が、実は合っていない」
「経営者はITに関心があるといいながら、最新情報はよく知らない」
成 功している経営者と比べて、IT導入に失敗している経営者のスタンスは、ほとんど正反対であることに注目してください。
ITで会社を強くするたった一つの秘訣
さらにこんな例を挙げましょう。全社規模で経営情報を 一元管理するERPというソフトがあります。これは大企業ですと総額1億円前後から数十億円位するものですが、大企業がこの導入に失敗する事例がよく出て います。そして、その大きな原因の一つは、ユーザー企業の経営陣の関与が弱く「ITは業務を変える」という意識が低いことだと言われています(もちろん、 ITベンダ側の要因もあります)。
具体的にいいますと、経営情報を集めるには誰かが情報入力し、他の誰かが情報をまとめ、管理し なければなりませんよね。これは新たな業務が増える(=業務が変わる)ことですから、まず現場は戸惑いますし、抵抗する人も出てきます。しかもERPの場 合は大抵、全社レベルで関係してきます。もし、幹部同士が構想で対立したらどうしますか?抑えられるのはトップしかいません。そのときトップが直接関わっ ていなかったら……うまく行くわけがありませんね。
つまり、ITシステム活用成功の鍵は、構想立案への経営者の 積極関与度にあるのです。会社をよい方向に持っていけるのは経営者だけであり、しかもITシステムを導入する目的が会社をよくするため だとすれば、会社の規模に関わらず、経営者がこれに関与しないという話はありえないのです。
「構想を練る」のは経営者の仕事です
ですから、ITで会社を強くしたければ、経営者自身がIT システムに思いをめぐらせ、活用の方法論を社員に示してください。そして、経営にITを生かすための「構想」を、部下と一緒に練ってください。「構想を練 る」ことを、経営者は決して丸投げしてはならないのです。
そしてぜひ、ITの最新情報に関心を向けてください。もちろん、経営者 自身が専門家になる必要はありません。ただ、ITの進化の流れを的確に把握すれば十分です。分かりにくければ部下と勉強会をするか、社外の専門家に質問し てみてください。経営者がくわしくなるだけで、会社のITが随分と変わるものです。