経営を成功に導くIT Vol.7 システム検討で注意すべきITの「不得意」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
ITにも、得意と 不得意があります。ITの「構想」を練るときは、このことを十分に踏まえて考える必要があるのです。では、何が得意で、何が不得意なのでしょうか…

あるホテルでの顧客分析

 今回は、あるホテルで導入さ れた、顧客需要予測システムのお話から始めましょう。

 一般的にホテルは「客室の利用権」を売っていると言えますが、これは物品の販売と 違って在庫ができません。そのため、毎日売り切りが目標です。ただし、売り切れないからといってあまり安売りをすると利益が下がってしまいます。

  それまでこのホテルでは、売り切りたいがために当日客などに格安で提供してしまうケースも多く、利益が確保できているのかを把握できない状況でした。そこ で、過去の利用変動や近隣のイベント情報などを元に、自動的に宿泊料金設定を行うシステムを導入することにしました。これにより適切な価格を正確に決定 し、収益率を保ちたいという狙いです。

 しかし、このITシステム構想案を企画担当が考えて社内に示したところ、予約業務担当からクレー ムが出ました。システムが自動設定する価格では高くなりがちで、状況に応じて柔軟に提供できないと顧客を逃がしてしまう、というのが主な理由です。つま り、売れなければ意味がない、ということです。

 

ITの「得意」と「不 得意」を見極める

 この例で、企画担当は戦略どおり「収益向上」を重視したシステム構想を立てました。しかし、それでは高 めの価格しか許容できなくなるため「顧客満足」にならないと指摘されているわけです。しかも、何もできずに顧客をみすみす逃すことで「従業員満足」の低下 までをも、もたらす可能性があります。

 実はここに、ITの得意と不得意が見え隠れしています。

 よくITとデジタルは 一緒に語られますが、デジタルとは“0か1か”ということですね。すなわち、ITの得意技は、白黒はっきりつけて結果を出すことです。具体的には「計算」 「自動化」「通信」「蓄積保存」「検索」「複製」「定型作業」などになります。逆に不得意なのはデジタルの反対、アナログな判断をすることです。特に、人 間の細かな感情に反応することは苦手です。

 今回の例でも、「顧客満足」「従業員満足」はいずれも人間の感情に左右される部分ですね。こ のように、常にではないものの、ITはこのアナログ判断の部分に課題を伴うことが多くあります。よって、ITシステム を考慮するときにはこの得意・不得意に十分注意しなければならないのです。

 

 「構想」を練るなら、利用者を参加させる

 それからこのホテルの例ではもう一 つ、注目いただきたいところがあります。それは、「構想の段階でITの不得意な部分に気付いている」ということです。問題の早期発見は大変重要なことで す。では、これに気づく鍵は、今回の例の中で何だと思いますか?

 それは「システムの利用者(運用者)を構想検討に参加 させていること」です。こうすると、利用者でなければ分からないアナログ判断が洗い出せるのです。社内調整では必ずこのようなデジタル 対アナログのせめぎ合いがあるのですが、とても大事なプロセスなので外すことはできません。

 このように、自社のビジネスモデル上で、経 営目的達成のために、どこをITで支援させ、どこをスタッフに支援させるか、ITの不得意を踏まえて企画段階から明確な仕分けをしておくことが重要で す。これは、上がってきた構想案を経営者が見るときにも大事な視点になると思います。

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