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会社の将来のために必要な「戦略投資」
前回、 IT投資には「種類」があること、そしてそれは5つに分類できることをお話しました。今回はその中でも一番判断が難しいと思われる投資形態について、参考 になるお話をしたいと思います。
ご紹介した5種類、すなわち「ビジネス活用」「情報インフラ整備」「セキュリティ対策」「定性的効果」 「業務効率化」のなかで、もっともハイリスクと思われる形態をあえて選ぶとすれば、それは「ビジネス活用」と「情報インフラ整備」か と思います。これらがいわゆる「戦略投資」です。
戦略投資がなぜ難しいのかと言いますと、収 益予測がしにくい上、効果が短期的には出にくいからです。また、経営判断が必要であるために、経営陣のITへの関わりが薄い企業では戦 略投資の意識も薄く、そのためになかなか投資が実行されなかったり、システム導入がうまく行かなかったりすることもあります。
そんな難 しい側面はあるのですが、IT社会においてはITに対して戦略的に投資できないと、事業の成長も怪しくなります。なぜなら、仮にコアビジネスがうまく行っ て事業が拡大しても、早晩、不完全なITで足を引っ張られる可能性があるからです。つまり、「ITで攻める」ためには戦略的な投資が不可 欠なのです。
よくある「戦略投資」のパター ン
戦略投資を実施するケースというのはさまざまですが、よくある場面はある程度パターン化されています。少し例を挙げま すと、「事業拡大の実施前」「新規ビジネスの立ち上げ時」「業務用システムの統合」「経営管理のスピード化」「社内共通基盤の整備」といったところです。
中堅規模以上の企業における最近の流行は「業務用システムの統合」「経営管理のスピード化」のあたりですが、規模がまだ小さいスタートアップ時には業務効 率化に向けた投資が主になるでしょうから、これらを意識することはほとんどないかもしれません。
それでも、事業が軌道に乗ってきた時の ために、「事業拡大の実施前」「新規ビジネスの立ち上げ時」の2つについては、早い段階から意識しておいたほうが良いでしょう。
ITを先に考えてはいけない
では、いざ戦略投資を実行しようとするとき、何に注意し ておけばよいでしょうか?
たくさんある中でまず一点申し上げるなら、「ITを先に考えない」という ことになります。
ITの投資を考えるとき、先に立つのはビジネスの戦略、または業務の改善です。それがあって初めてITをどう活用する かを考えるわけであって、基本的には最初から「ITありき」ではありません。まずは経営陣が部下とともに自社のビジネス戦略を明確にし、 そしてそれに役立つITを徹底して「構想」してください。
また、「構想」が明確になりシステム像が見えてきても、収 益予測があまり明確に計算できないかもしれません。その場合でも、企業の将来に必要なのであれば、経営判断で思い切って投資し、その代わ り投資効果のモニタを十分に行うことを重視してください。つまり、獲得したいビジネス上の効果が得られたかどうかを確認するということ です。もちろん、モニタする指標や測定方法はあらかじめ確立しておく必要があります。
さらに、現状の社内リソースでそ のITに対応できるのか、見直してください。例えば、既存業務の見直しが必要なことが多くあります。時には一から業務を見直すこともあ りえます。他にも、新しいITシステムを使いこなせるノウハウがなければ、訓練やマニュアルの整備、必要となるインフラの整備を検討する必要も出てきま す。
状況によって他にもいろいろありますが、細かいテクニックを抜きにすれば上記のことが大きな注意点です。詰まるところ、やはり経営 陣が中心になって描く将来像が明確かどうかが成功の決め手になるでしょう。