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合見積のある事例
ある会社・X社での事例で す。同社は小規模な基幹系システムをすでに活用しており、その開発業者であるA社とは数年来のパートナー関係にありました。
このたび、販売管理と会計を連動させた新しい基幹システムを導入して管理会計 を強化する方針となりました。システム機能としてはこれまでより高いものが求められますが、それほど予算が準備されているわけでもありません。まずは要件 を固め、馴染みのA社と、付き合いはないものの基幹系の分野に強いと評判のB社にRFP(提案依頼書)を提示し、提案の要請を行いました。
要請 から数週間後、両者の提案が出そろいました。見積額を比較すると、A社は総額1億、B社は総額6500万でした。
X社の担当者としては、A社の ほうが自社のことをよく分かっているので、やはりA社に好印象を持っています。しかし、これだけの価格差があります。考えた末に担当者が出した結論は、 「B社が6500万でできると言っているのだから、A社もその価格でできるはず」 X社の担当者はA社へ連絡を入れ、B社の見積もりを盾に6500万で構 築するように要求しました。
見積書は、価格を見るためだけのものではない
一見妥当そうに思える担当者の判断ですが、この要求は短絡的です。
新規で提案するベンダーは、今後付き合いたいユーザーだと感じれば、赤字覚悟で戦略的な低価格を提示し、案件を獲得しに来ることがあります。その場合、そ のシステム構築に本来要するコストの観点では、必ずしも妥当な金額になってはいません。
少し考えてみてください。なぜ RFPをわざわざ作成するのでしょうか。その目的は、真にふさわしいパートナーであるかを見極めるためであり、真にふ さわしいパートナーは、コストだけで決まるものではないはずです。
もし、新規業者の技術力やサポート力が信頼できると判断で きれば、そのまま新規業者に依頼すればよいことです。上記のような恰好でA社に無理を強いると、A社内のモチベーションが下がり、構築するシステムの品質 に悪影響を及ぼす可能性があります。それは、自社の製品なりサービスが顧客に無理に買いたたかれた時の気持ちを想像すれば、容易に理解できるはずです。
過去に何十、何百のシステム導入をこなして費用分析ができているなら、ベンダーへの費用見直し要求にも説得力が出ますが、その経験もなく買いたたく行為 は、かえってユーザーに利益をもたらしません。
適正サービスと適正価格を見極めよ
合見積を取ってベンダー評価を行う時に重視したいのは、
・「得られるシステムやサービスが適正かどうか」
・「提供されるものに見合った価格になっているか」
この2点です。
特に価格面で、根拠なくユーザーがベ ンダーに無理を強いると、賢明なベンダーであるほど要請を断ってくる恐れがあります。
適正かどうかの判断基準となるのは、やはり自社の 「構想」であり、それを具体化したRFPです。見積もりでは単価や細目を明確に出させて細かい比較ができるようにします。そして、RFPを基に評価のため の項目リストを社内で事前に準備し、偏見のない比較を行って、自社の構想をもっともよく叶えてくれるパートナーを選定してください。