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IT無知は放置すると危険
現在では、 過去と違ってビジネスのほとんどはITなしには語れなくなってきています。「うちのビジネスはITとはほど遠い」と考えているとしたら、それは表面的理解 にすぎないかもしれません。
『ビジネスのほとんどはITなしには語れない』 そうとはわかっていながらも、「IT」と聞いた途端に、無意 識のうちに深い思考を避ける経営層は、まだ多いように感じます。部下や外部に任せてとりあえずうまくいっているということで、安心している経営者が多く存 在するのが事実なのです。
コアビジネスがITとかけ離れていれば、議論すべき事項を発想することが難しいでしょうから、ある程度は仕方な いかもしれません。しかし、この対応では早晩ITの費用対効果を怪しく感じるようになってくるはずです。
ここで問題とな るのは、「怪しい」と思いながらも、経営者がITについて議論することを避けて無策のまま放置することです。
ビジネスとITとの密着度が高まれば、ITコストもおのずと増加していきます。その額は売上高に比して無視できない金額になっていきます。それでも放置し た場合、「IT導入を評価しない」→「ITシステム導入で効果が上がらない」→「経営はIT投資に信用ができない」→「必要な投資にも首を縦に振らない (または、余計な投資を容易に許容する)」→「競争力が落ちる」という、悪い流れに陥ることが予想されるのです。
では、ITがよくわから ない経営層がどうすればITをうまく評価できるのでしょうか?筆者は経営層にITの専門知識は必ずしも要らないと思います。そ のITがビジネスの何に役立つのか、という「ビジネスへのお役立ち度」の視点で、素朴な疑問を持つだけでもよいと思う のです。
評価の仕組みを構築せよ
「ビ ジネスへのお役立ち度」という視点は、ITに限らず、他の事業施策に対しても持つはずの根本的なものではないかと思います。
そして、「ビ ジネスへのお役立ち度」は、意識的か無意識的かはともかく、何らかの評価軸で評価されているのではないでしょうか?例えば、緊急度・必要性・必要コスト・ 見込まれる効果・リスク、などです。このような評価軸や数値化の方法を具体化して、IT導入の評価に用いることが考え られます。
最初は、設定した評価方法に自信が持てないかもしれません。その不安は、導入後に事後評価を行って手法を修正することで、段階 的に解消していくことを狙います。
またITの場合、「個別案件の評価」のほかに「所有資産の評価」もあります。これは、いったん購入してしまったらおし まいとなって忘れがちです。在庫の棚卸のように、自社のIT資産の利用状況を調査報告させるべきです。例えば、ソフトのライセンスを10ユーザー分購入し たのに使っているのは2人だけということがないか、使っていないサーバーがあるのに新しいものを購入していないか、サーバーは全数使っていても使用率が 10%にも満たないものばかりではないか、使っていないパソコンやソフトが放置されていないか、などの状況をチェックします。
そもそも評価するということは…
このように、ITの評価においてもビジネスを起点とすること で、評価軸を決定し評価手法を確立することができるのです。
別の見方をすれば、評価軸は経営上の重要性を反映するものであり、「IT に対する経営要求」は評価軸決定のうえで絶対的な前提条件になります。
これに気づけば、冒頭のように「部下に任せて安 心」とはいかなくなりますね。経営者の皆さんにはぜひ避けずに、自社のビジネスとITの良い関係について深く検討していただきたいと思います。