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ケータイがそのまま会員カードに
現在、大手の小売業のほとん どが顧客向けに会員カードを発行し、ポイントを付与して顧客の囲い込みをしています。これはCRM(Customer Relationship Management)システムと呼ばれる、やはりITの仕組みを活用したシステムの一部として実施されています。
CRMシステムがある と、企業は顧客の購買志向が分析できます。そうすると、優良客も選別できますし、販促の確度も上がりますし、顧客のランク毎にサービスを差別化することも できます。いわゆるワン・トゥ・ワン・マーケティングです。大変有効ですが、中小のお店ではこうしたシステムを導入するのは大変です。
しかし、最近ちょっと状況が変わってきています。そのカギとなるのは、「ケータイ」です。
最近 のケータイは、おサイフケータイ機能を備えるようになっています。これはICチップを使って機能を実現しているのですが、このICチップはお金のやり取り だけでなく、他のことにも使うことができます。
例えば、みなさんはお店でケータイをかざして電子クーポンを受け取ったことはありません か?
実は、おサイフケータイをICカードリーダーにかざすことで、そのケータイのブラウザを遠隔起動して設定したサイトを表示させた り、コンテンツをダウンロードさせたりする仕組みを作ることができるのです。
ということは、レジで顧客にケータイをかざしてもらえれば、 おカネを引き落とすかどうかに関係なく、来店履歴と紐づけることが可能になります。この仕組みを活用して、ケータイをそのまま会員カード にしたCRMシステムを実現することができるのです。
ハードルの低 さで導入拡大
この仕組みなら、ポイントカードを独自に発行する必要はありません。システムは構築しなければなりませんが、ここ最近、こ うしたシステムを提供するASP業者が増えてきています。
ASPですから、システムを利用する側はシステムに関する知識はほとんど不要で導入ができます。かつ、月額料金 が基本ですので初期投資額も抑えられます。
このように導入が手軽ですので、最近事例も増えています。例えば、日本マクドナルドのような大 手企業(自社構築している場合もあります)から、中堅の小売店、さらには町の商店街にも導入されているケースがあるのです。
「前提条件」に注意
ただし、注意しなければならない点はもちろんあります。
まず、ASPでは機能の融通は利きにくいという点です。大手企業のような自由自在の顧客分析ができるところまでは難し いと考えて間違いありません。また、ASPのサービス内容もさまざまですから、自社のシナリオに合った業者でないと、思わぬ課題に直面するか もしれません。
店舗側で押さえておくべき重要な点は、「顧客の通信機能を自動的に起動して利用する」と いうことです。最近はデータ定額制が主流ではありますが、定額プランに加入していない人も当然います。こうした顧客にはデータ利用料が従量課金されます。 サービス化するなら、こうした説明が事前に必要でしょう。また、なるべくテキスト情報のみの通信にするなどの配慮も必要かもしれません。
他にも、履歴情報の取り方によっては顧客の個人情報の管理義務が発生する場合もあります。
いずれにせよ、ASPだからといってすぐ導入するのではなく、まずはサービスや業務のシナリオをシステムの利用側(つまりお店側)が具体的にイメージしな ければなりません。工夫しだいで、顧客情報を取らずに履歴だけ管理するようにもできます。CRMに興味があれば、まずはどんなふうに情報を活用したいか、考 えてみることから始めてみてください。