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SaaSへの注目は依然上昇中
当社では経営者向けにメール経由でITに関するご質問にお答えするサービスを行っているのですが、その中で最近典型的な質問が、 SaaS(Software as a Service)やクラウド・コンピューティングに関するものです。
コスト削減を迫られている 折、SaaSやクラウド・コンピューティングによって「持たざるIT」を実現するというのは、ユーザー企業にとって魅力的に映ると思います。確かに、初期 コストが低く抑えられ、すぐに利用を始められる手軽さもあります。しかし、世の中そんなに簡単にうまくはいかないものです。
SaaS選択の「目利きのポイント」
SaaSは、結果的にはシステムの外部委託ですから、自 社に合った業者をしっかり見極めなければなりません。このとき、何を見て選べばよいかを意識していなければ、どの業者のサービスも良く映ってしまうもので す。
そんな時に役立つ「目利きのポイント」を、ここで4つご紹介します。これらは、業者の広告や口頭での説明には表れないこともあります から、意識するとしないとでは大きな違いがあると思います。
1. サービスレベル
サービス保証条件として SLA(Service Level Agreement)というものが提示されることがあり、SaaS業者は99.9%という数字をよく出しています。一見よさそうな数字ですが、計算する と、年間でおよそ8.5時間は停止するかもしれないということを意味しています。また、SaaSでは、業者側でシステ ム障害が起こる、万が一業者が倒産する、などすれば、サービスは突如として停止します。その意味で、業者の事業基盤の安定性は極めて重要です。
2. 契約内容
システムを外に預けることで、データも外に預けることになります。契約以前に、自社としてそ れで問題ないと判断するかどうかがポイントです。その上で、業者の情報セキュリティ管理に納得がいくかを(出来れば実際に)見ることが必要です。さらに、 契約更新時や契約解除時の条件も、重要な確認のポイントです。
3. 機能
SaaS はカスタマイズができると言われますが、どの程度できるか、できない部分に我慢ができるかを、あらかじめ判断しておかないと後悔します。試用版な どで実際に使い勝手を試せる業者だと、この点を評価できます。
4. コスト
月額制や年額制を取る形態なだけに、本当に安いのかどうかは、5年程度の期間のトータルコストで比較することが妥当です。トータルコストに は、人件費や労務費も含まれます。実際に計算したときにSaaSが自社開発を上回る可能性もあり得ます。
リスクとコストを見極める
SaaSに代表されるクラウド・コンピューティングは、近年サービス や品質が充実してきています。しかしながら、まだ何でも任せられる状態とは言い難いと思います。依然として「ちょっと試したい」「小さく 始めたい」などのニーズを満たすのにベストな選択であるのは変わりません。
もちろん、上手に活用すればコストが激減す ることも十分あります。しかしそれは、使う側の使い方しだいです。今後の中長期的な方針をまず検討し、目先のメリットだ けで判断しないことが、ユーザー企業には求められるのです。