Vol.3 互いを理解し合うプロセス

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

お互いがもつヒューリスティクスを尊重し合うという立場から、具体的に理解を深める方法について考えていきます。

お互いの立ち位置を確認する

イメージ1私たちの心を会社に例えるならば、私たちの意識は取締役会といったところでしょう。そこに情報が集められ、それをもとに判断がくだり行動が決定します。普通、会社の取締役会では、末端で具体的にどんなやり取りがあるのか、一般社員が何をしているか、何を感じているかなどの情報は、そのごく一部しか入ってきません。限られた情報を結びつけ、現状を理解しようとしているだけです。感情の誤帰属でお分かりのとおり、人の心も同様です。ごくわずかの情報を意識し、それを基に、因果関係性を構築して満足しているに過ぎません。

これまでの話を踏まえると、人と有機的に関わりあう上で大切なポイントがみえてきます。
(1) 自分の精神活動の一部しか意識化されていないことを知り、それを実感すること。
(2) 自分の判断は、過去の体験を感情レベルで引きずっているということ。
(3) 他者も同様な心の働きをしているであろうこと。

(3)は意外と見逃しがちです。外部者が自社の印象語るとき、それは実情と随分違うと感じることがあると思います。外からみると、一つの会社は一体化した人格のように捉えたくなるのです。私たちが他者を見つめるときも同様です。しかし、自分自身と同じように、他者もその精神活動のごく一部を意識化し、その狭い情報の中でなんとかやりくりしているのです。

「腑に落ちない」

私は以前、比較的規模の大きな会社に所属していましたが、そこでの議論の多くは、最初にメンバーそれぞれが感情的に結論を決めており、その結論にそって論理的な根拠を考え、戦わせるというものでした。根本に感情的要因があることはあまり意識化されていないようでした。

当社では、その逆のことをやっています。論理的な展開から何らかのソリューションに到達した時、参加したメンバーが「腑に落ちる」かどうかを確認します。論理的に書き出されるフローは、物理学などの特別に汎用的な事象を扱う場合を除き、現実世界のシンボルにすぎません。極端に世界を圧縮して書かれたフローが、一見つじつまが合うようにみえても、対応する現実世界の動きをどこまで捉えているかどうかは分かりません。しかし、私たちの意識下のプロセスは、それまでの経験を蓄積しており、即座に反応します。このような心の働きを活用するには、「腑に落ちない時に、何が腑に落ちないのかを探る」ことが有効です。書かれたフローをより具体化し、「腑に落ちない」のはどういうことかを探索していきます。それが見つかるとは限りませんが、見つかるとメンバーの感じ方・考え方の違いが相互に明確になり、大きな達成感があります。これは、ヒューリスティクスの奥にあるそれぞれの人の体験を出し合い連結できた過程ともいえるでしょう。こういうことを重ねていくと、お互いを深く知り合い、より良く影響しあうことができるようになります。

互いを知り合うゲーム

イメージ2仕事を進めながら、徐々にお互いを知ることは出来ます。それを加速するためのアンケート調査のようなものが考えられるかもしれません。例えば、自分が大切に思っている経営者、思想家、映画などを回答し、回覧するという方法です。
しかし、このような方法は、お互いを分析の対象としてみせるような面があり、受け入れがたい気持ちが強いでしょう。したがって、その場合の回答も規範的なものになってしまうことが推定されます。また、このような情報という形態を通じは、感情レイヤーの情報は伝わりません。

互いを理解しあうのに、とてもユニークなゲームを紹介しましょう。これは、厚生労働省 食の安全プロジェクトにおいて、子供の食リスクコミュニケーション能力を向上させる目的で開発してものですが、楽しいゲーム感覚の時間の中で、お互いの嗜好を一挙に知り合うことが出来ます。
食品のカード(50種程度)は、通常の食品をすべてそろえてあります。これは、アンケート項目が完備していることと同等です。カードをひろったり、捨てたりするときの感情表現も含めて、お互いの心の内を披露しあえるものになっています。つまり、お互いの判断の元になっているものを、短い時間の中で知り合うことができる極めて効果的なツールです。大人同士である程度付き合いのある関係であれば、お互いの食の好みなどは一部理解していますが、このゲームを行うと、食生活の全貌を一挙に把握できますので、お互いに知らなかった食の捉え方が現れ驚いてしまいます。
テーマに即したカードを用いゲームを行うことによって、チームメンバーの普段やり取り出来ないレイヤーでの交流が可能になります。例えば、自動車関係であれば、自社・他社、現在・過去にわたる自動車のカード、経営コンサルチームであれば、Druckerなどの学者カード、という風に関連があり全員が良く知っているもののカードを準備します。4人の参加で、50枚ほどが適当です。自分が「一番重要だと思う」カードを7枚そろえていきます。「一番好きな」カードでもかまいません。これらの指標によってゲームの展開の仕方も変わってきますので、メンバー同士の交流が活発化するような言葉を選びます。
カードを引く、カードを場に捨てる、場からカードを拾う、などの過程で、お互いが大切にしているものを実感として出し合うことができます。ゲームの詳しいルールは、当社情報ポータルサイトを参照ください。

チームやコラボレーションという言葉は、通常、個人からみて外側で起こることを指しています。メンバーである人間それぞれは、とてつもなく複雑でかつ単純なところもある情報系です。自分自身の心の働きを掘り下げていけば、外に見える世界も違ってみえてくるはずです。そしてそれは、人同士がより良くかかわりあうための大切なヒントになることでしょう。

※関連リンク
食品カードゲーム
Collaborative Thinking 研修
感情科学とコミュニケーション

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