- 目次 -
子会社上場のメリット・デメリット
まず、ここでいう「親会 社」の定義を明確にしておきましょう。「親会社」とは、会計基準(財務諸表等規則第8条第3項)にて定められている会社と同様のものを指し、原則ある会社 の発行する株式の過半数以上を保有する他の会社をいいます。NTTはNTTドコモの株式を約59%保有しており、よって、NTTはNTTドコモの「親会 社」にあたるわけです。
子会社は一般的に親会社の支配下にあるため、親会社のグループ会社戦略に従わなければなりません。また、子会社の 中には親会社への製品販売やサービスの提供などにより売上の大半を稼いでいる会社もあります。一方で、NTTドコモのように、親会社とは異なる事業分野で 高い成長性が期待できるため、グループ内の戦略に従うのではなく独自の戦略にて成長を模索する子会社もあります。このような点から親会社の立場での子会社 上場のメリット・デメリット、子会社の立場でのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
1.親会社の立場からのメ リット
・子会社株式の売却による資金調達
・子会社株式の価値増加
・子会社が独立した上場会社になることによる、資 金的人的負担の軽減など
2.親会社の立場からのデメリット
・子会社の経営権が弱まる
・子会社の上場によ る情報開示など
3.子会社の立場からのメリット
・親会社からの独立により、経営の自由度が増す
・独自の インセンティブ制度の採用による従業員のモチベーション向上など
4.子会社の立場からのデメリット
・親会社への依 存度低下による、営業力の低下、事務コストの負担増など
子会社上場と審査上の問 題点
子会社上場の一番の問題点は、親会社からの独立性です。子会社上場の場合、たとえ子会社が上場企業になったとしても、当該子会社の 株式の過半数以上は別の親会社が保有しているため、その親会社のグループ内戦略によっては、子会社の経営陣や残りの少数株主の意見が上場子会社の経営に取 り入れられない可能性が非常に高いからです。
そこで証券取引所は少数株主となる一般投資家を保護するために、子会社上場に係る上場審査の基準を 設けています。
1.上場申請会社(上場しようとする子会社)または親会社などが、どちらか一方の不利益となる取引を強制、または誘 引していないこと。
子会社は一般的に親会社の大きな影響を受けており、親会社の一方的な都合によって自由な事業活動が阻害され、他の子 会社の株主が損害を受けないか確認されるものです。また、親会社が子会社の利益よりも自らの利益、もしくは他の子会社の利益を優先させるために、子会社に 不利な取り引きなどを強制させることがないなども確認されます。
2.上場申請会社(上場しようとする子会社)と親会社などが、グ ループ外の第三者と取り引きを行う際の条件と異なり、著しく優位または不利な条件で取りき引を行なっていないこと。
親会社グループ外の 第三者との取引と比べて子会社と親会社との取り引きは、取引条件の決定が恣意的に行われる可能性があります。そのような場合、親会社などもしくは子会社の 株主の利益が損なわれている可能性があるため問題視されます。そのためこの基準では、グループ間取引の条件が第三者との取引条件と同様であるかを確認され ます。
3.上場申請会社(上場しようとする子会社)が事実上、親会社等の一業部門と認められる状況にないこと。
子会社が親会社等の事業活動の一部分を担うだけで、子会社が独立して事業活動が行える状況にあるかを確認されます。例えば、子会社の事業活動が自らの意思 決定に基づいて行われているか、親会社とは異なる技術、開発力、ノウハウを有しているか、を個別具体的に確認されることになります。
子会社上場の最近の傾向
従来の子会社上場は、大手電機メーカーや総合商社等の子会社が上場す るケースが多かったのですが、最近の傾向として従来の大手企業グループは機動的な子会社運営等を目指し、企業グループの再編が進めています。そのため上場 子会社の全株式を取得し、上場を廃止させるケースが増加しています。近年ではNECによるNECソフト、NECシステムテクノロジーの100%子会社化に よる上場廃止があります。このケースは親会社の一方的なグループ再編により少数株主の利益が軽視されるのではないかと批判がありました。
一方で、最近は新興市場に上場したばかりの新興企業が、自らの上場後すぐに子会社を別の新興市場に上場させるケースが多数見られます。新興企業の場合さほ ど事業は多角化されていない場合が多く、その子会社は親会社の中核事業を担うことが多くあります。この新興企業の子会社上場は、投資家の間では「同じ企業 が2回上場しているのと同じだ」、「資金の二重取りではないか」という批判が多くあります。
このような批判が多いことから、子会社上場の ぜひについては常に議論がされています。
>>経営改善・成長戦略の専門家に無料で相談する
>>経営改善・成長戦略のセミナーに参加する