Vol.19 上場に備え、取締役会・内部監査などを見直す

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
今回は前回に引き 続き、社内管理体制の整備((3)取締役会の適切な運営、(4)内部監査の実施、(5)予算統制制度、(6)その他の整備項目)についてみていきます。

取締役会の適切な運営

 取締役会を適切に運営するために、まず 留意が必要なのがその構成メンバーです。

 取締役会は会社の業務執行に関する意思決定機関として非常に重要な役割を果たします。そのため、 取締役会は適時・適切に開催され、迅速に意思決定を行わなければなりません。そのためには、取締役会の構成員のうち、常勤取締役が定足数以上を占めること が望まれます。常勤取締役が構成員の過半数を占めず、社外役員が過半数を占める場合、急遽臨時取締役会を開催したいというような場合に、すぐに取締役を招 集することができません。出席取締役が定足数を満たさない場合には、そもそも取締役会を開催することができないのです。

 同族関係にある取 締役が構成員の過半数を占める場合にも、留意が必要です。

 同族関係とは、二親等内の親族をいいます。これらの同族関係にある取締役が構成 員の過半数を占めると、取締役会の決議内容が「お手盛り」される可能性が生じるため、上場審査においては同族の取締役を過半数以下にするよう指導されるこ とになります。同族役員の場合、どうしても身内の役員に有利な会社経営を行うのではないか、という懸念からこのような指導がされます。

 ま た、同族関係にある者が監査役を務める場合も問題視されます。本来監査役は独立的な立場から、取締役および取締役会の業務執行を監督する役割を担います が、その監査役が特定の取締役と同族関係にある場合、そもそも監査役として独立性が保たれていない、と判断されます。

 最近多くの上場予定 会社で問題になっているのが、各取締役の取締役会への出席率です。特に非常勤取締役の場合、常勤取締役とは異なり、上場予定会社ではない会社の役員などを 複数務めているケースがほとんどです。よって、別会社の都合により、上場予定会社の取締役会への出席率が極端に悪いケースが散見されます。この場合、当該 非常勤取締役は名目上だけの取締役であり、実態は取締役として機能していない、と見られる可能性が高くなります。

 上場審査上取締役だけで なく、監査役の出席率も確認されますので留意が必要です。
 

内部監査の実施

  内部監査とは、内部監査担当者が社長に代わり社内の日常業務が法令、定款および諸規程・マニュアルにそって運営されているか否かを監査する役割りをいいま す。監査役監査は株主に代わり取締役および取締役会の意思決定、業務執行状況を監督するのに対して、内部監査は社長の変わりに監査を実施する点で異なりま す。創業間もない会社であれば従業員数も少なく、社長がすべての従業員の顔と名前が一致し、各人がどのような業務を行っているかも把握できます。

  しかし、上場会社の場合は従業員数が数百名になり、社長一人では全従業員の業務を把握することは不可能です。また、営業拠点を地方や海外に設置するなど、 直接的・物理的に社長が管理することが会社の成長に応じて増えてきます。そこで、社長が選任した内部監査担当者が内部監査をメイン業務として実施する必要 がでてきます。

 内部監査担当者は、「内部監査」という業務上の性質から被監査対象部門からの独立性が求められます。よって、内部監査担当 者はどの部門にも属さず、社長直属の内部監査室とすることが望ましいです。しかし会社の規模などによっては、経営企画室や管理部で兼任することも可能で す。

 上場審査においては、上述したように内部監査室および内部監査担当者が独立性を有しているか、まず形式的に確認します。その後は会社 規模により異なりますが、原則内部監査は一会計期間で全部署を監査しているか、また、その内部監査の内容を詳細に確認し、内部監査担当者との面談を交えな がら、内部監査が有効に機能しているか否かが慎重に確認されます。このように、内部監査は上場審査において極めて重要なポイントとなります。
 

予算統制制度

 上場会社は場当たり的な経営を行うのではなく、事前に経営戦略が練られ、立案さ れた経営方針および利益計画に沿って計画的に自社の経営をコントロールしてく必要があります。また、公開審査上は、上場後の決算情報、適時開示および業績 予想の開示の必要性から、上場予定会社がこれらのルールを守り、適時適切に情報開示が行えるかを審査されます。

 利益計画は一般的に1.中 期経営計画(今後3年間の利益計画)、2.短期利益計画(翌年1年間の利益計画)の二つが立案されます。短期利益計画は、中期経営計画の初年度として作成 されます。中期経営計画は経営環境の変化、当初想定していた各種条件の変化により毎年見直され、毎年3年間の利益計画を随時作成しなおすローリング方式を とります。

 また、短期利益計画は月次予算に分解し、毎月決算を締めた後、単月の予算とその実績を比較・差異分析を行い、毎月の取締役会で 報告および対応策の検討を行う必要があります。これにより経営陣はタイムリーに自社の経営状況を把握することができ、業績動向が悪い場合は即時に対応策を 講じなければなりません。また、上場後は月次予算の状況に応じて、必要ある場合には業績修正などを発表するなど、適時開示ルールに沿った運営を行う基礎に もなります。

 このように、予算統制は計画的な会社経営および上場後の開示体制の基礎をなすため、上場審査においては、これらの予算統制制 度が適切かつ有効に運営・管理されているか慎重に確認されることになります。
 

そ の他の整備項目

 その他の整備項目としては、関連当事者取引の有無、組織体制の整備状況(部長職などが複数の部署にわたり兼任されていな いかなど)、関係会社の管理状況、適正な会計処理がなされているかなど、多岐にわたり確認されることになります。

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