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マザーズ上場は東証1部上場への近道
日本国内に新興市場と呼 ばれる上場市場は数多くあります。1.東証マザーズ市場、2.ジャスダック証券取引所、3.大証ヘラクレス市場、4.名証セントレックス市場、5.札証ア ンビシャス市場、6.福証Qボード市場。
一つの国でこれほど新興市場が設けられている国は他にはないと思います。これらの新興市場間の競 争により、日本のIPOマーケットが活況を呈しているのは言うまでもありません。しかし、各新興市場間特有の特徴というと、地方の新興市場になればなるほ ど独自性がないのが現実です。新興市場の再編議論が起きているのは、そのような理由もあると思います。
そのなかでも東京証券取引所が運営 しているマザーズ市場は、そのブランド力を活かした差別化要因があります。それが東証1部への近道上場です。
東証1部への上場でベン チャー企業にとって大きなハードルとなっているのが時価総額基準です。直接東証1部に新規上場(IPO)する場合は、時価総額が500億円以上必要となり ます。これは東証以外証券取引所からの市場替えの場合も同様です。つまり、ジャスダック証券取引所や大証ヘラクレス市場から東証1部に市場を変更する場合 も、500億円以上必要とする時価総額基準が適用されます。
しかし、東証マザーズ市場および東証2部から東証1部に上場する場合には、時価 総額は40億円以上でよいという特例の規定が設けられているのです。
国内最高峰の上場市場というブランド力を有する1部市場を東京証券取 引所は有しています。その1部市場への優先的な上場基準が設けられている東証マザーズ市場は、他の新興市場と異なり大きな差別化要因を有していると言えま す。
マザーズを 経て東証1部に短期間で上場した会社
上記の特例を活かして最近東証マザーズ市場から東証1部に短期間で上場したのが『株式会社一 休』(2450)です。『一休』は2005年8月3日に東証マザーズに上場し、2007年2月7日に東証1部に指定替えの承認がおりました。東証1部に上 場すると、東証1部上場銘柄で構成されるインデックスファンドに組み入れられるため、当該ファンドを運用する機関投資家からの「買い」が期待されます。そ のため、東証1部に上場すると社会的な信用度の向上や名誉だけでなく、株価形成の面でメリットも生まれると言われています。このように短期間に東証1部上 場を果たすため、ファーストステップとして東証マザーズへの上場を目指すベンチャー企業が最近は非常に多い状況です。
なお、最短で東証マ ザーズから東証1部に指定替えした会社は『株式会社フィデック』です。2004年12月22日に東証マザーズに上場を果たした後、2005年12月26日 には東証一部に指定替えとなりました。
やはり証券取引所は東京一極集中?
このように東証1部というもっとも強いブランドを持つ東証マザーズが新興市場で一歩先行しているといえます。各地方に新興市場がありますが、地方に本社を置く 会社も地元の新興市場ではなく東証マザーズを上場市場として選択することも少なくありません。
その最たる例が、2月13日に東証 マザーズから上場承認が降りたUSJです。ご存じのとおりUSJは東京ディズニーリゾートと人気を二分する大阪のテーマパークです。東京ディズニーリゾー トに対抗して、地元密着を前面に出して大証ヘラクレスに上場する、ということも考えられますが、USJは将来的に東証一部に上場することを前提に東証マ ザーズに上場したのだと思います。東京ディズニーリゾートと競争していくには魅力あるアトラクションに積極投資をする必要があり、株式市場から資金調達が 避けられない状況でした。ただ資金調達目的だけの上場ではなく、ブランド力および企業としての信用力をつけるためにも新興市場ではなく、短期間に東証1部 に上場する必要があったのでしょう。ただ、現状の業績では新興市場にしか上場できないので、東証マザーズを選択したのだと思います。