Vol.10 上場を考える人必見。クリアに必要な「形式基準」とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 

株式公開における 証券取引所の上場審査には、上場会社として適当な会社規模や利益水準、株主数などが求められる「形式基準」と、内部統制組織が整備されているか、コーポ レートガバナンスが有効に機能しているかなどの上場会社としての適格性を審査される「実質基準」があります。今回は上場申請するためにまずはクリアしなけ ればならない「形式基準」を見ていきたいと思います。

そもそも証券取引所の「形式基準」とは

形式基 準とは、各証券取引所が市場毎に定める最低限クリアしなければならない基準です。この基準には、一定水準以上の利益規模を要求するものや、上場後の株式の 流動性を確保するために、一定数以上の株主数を要求するものがあります。

東証1部や東証2部には利益基準が設けられていますが、東証マ ザーズや大証ヘラクレスは利益基準が設けられていない(すなわち形式上は赤字でも上場が可能)など、各取引所のコンセプト、方針によって各取引所が設けて いる形式基準は異なっています。

簡単に主な形式基準の内容を見ていきます。

 

1.時価総額基準

時価総額基準とは、上場時の株価(=公募価格)に、上場時の発行済株式総数を 乗じた価格を時価総額といい、この金額が各取引所の定める基準の金額を超えている必要があります。一番大きな時価総額を求めているのが、東証1部の500 億円で、一番小さい金額は10億円のマザーズとジャスダックです。また東証1部では、上場時の時価総額が1,000億円以上あればたとえ利益の額が赤字で あっても上場が可能という基準が設けられています(ただし直近の1年間で売上高が100億円以上であることが求められます)。

 

2.利益の額

利益の額については、既存の市場(東証1,2部、ジャスダック)と新興市場に よって基準が大きく異なります。東証1,2部では、経常利益もしくは税引前利益のいずれかにおいて、原則最初の1年間で1億円、最近の1年間で4億円の利 益水準を求めているのに対し、東証マザーズでは利益基準を設けておりません。大証ヘラクレスも上場時の純資産額が4億円以上もしくは上場時時価総額が50 億円以上であれば、利益の金額は一切求められないという基準になっています。

 

3.上場株式数と株主数

上場株式数と株主数の基準は、上場後の株式の流動性を確保するために設 けられています。上場後、市場に流通している株式数が多ければ多いほど、基本的に株式の売買は頻繁に行われ、適切な株価が形成されると共に、好きな時に売 買できることになります(その会社の株式に人気がない場合はいくら市場に株式が流通していても売買の回数は少なくなりますが)。

これが逆 に市場に流通している株式が少ないと、需給の関係から少ない買い注文で株価が高騰したり、逆に少しの売りで株価が暴落したりします。極端な時には株を買い たいのに市場に株が出回っていないという状況が生じてしまいます。したがって、上場時に一定の流動性を確保するために、各取引所は上場株式数と株主数に規 制を設けています。

 

新興市場は二流じゃない

これらの基準の違いから良く「東証1、2部に比べると、東証マザーズをはじめとする新興市場は二流」という声をよく聞きます。確かにそれぞれ上場企業の規 模などを単純に比較すると、東証1,2部上場の会社の方が明らかに大きいですし、社歴も長いです。「大は小を兼ねる」という意味合いから、東証1,2部の 形式基準を満たしていれば、東証マザーズにも上場できると思われるかもしれません。しかしながら、東証マザーズには「高い成長可能性」という適合要件があ るため、必ずしもそのようなことはありません。いくら東証1,2部の形式基準を満たしていても、東証マザーズに上場できるとは限らないのです。東証マザー ズは一見形式基準が東証1,2部に比べて低いのですが、「高い成長性」という独自のコンセプトを有しており、単純に「二流」という見方はできないと思いま す。

 

各証券取引所の主な形式基準

  東証1部 東証2部 マザーズ ジャスダック ヘラクレス
時価総額 上場時500億円以上 上場時20億円以上 上場時10億円以上 上場時10億円以上 上場時純資 産 4億円以上

又は

時価総額50億円以上

又は

税引前利益 7,500万円以上

純資産 連結株主資本が10億円 以上(かつ、単体株主資本の額が負でないこと) 直前期末2億円以上(連結企業は連結の数値)
利 益の額 次のa又はbに適合していること

a.最近2年 間において

最初の1年間=1億円以上

最近の1年間=4億円以上

b.最近3年間において

最初の1年間=1億円以上

最近の1年間=4億円以上

かつ最近3年間の総額=6億円以上※経常利 益又は税引前利益いずれか低い額(連結企業は連結の数値)

当期純利益が正、若しくは経常利益5億円以上(時価総額50億円以上の場合は不問、連結企業は連結の数値)
上場株式数 2万単位以上 4,000単位以上 1,000単位以上の公募又は公募・売 出(ただし、公募は500単位位以上) 500単位以上(ただし、公開時浮動株比率が30%以 上の場合は適合を要しない) 500単位以上
株主数 少数特定者持株数=70%以下

株主 数=最低2,200人以上
(上場株式数の区分に応じ増加します)

少数特定者持株 数=75%以下

株主数=最低800人以上
(上場株式数の区分に応じ増加します)

上場時300人以上の増加

 

最低300人以 上

(上場株式数の区分に応じ増加します)

株主数300人以上

浮 動株式数1,000単位以上

浮動株時価総額 5億円以上

※その他詳細 な形式基準は各証券取引所にご確認ください。


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