資本政策 Vol.06 これから始まる日本企業の大反撃。ベンチャー企業にもチャンス到来!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
本文を執筆中の日経平均は7086円。日経新聞によるとこの株価水準は、バブル後最安値、しかも26年前の水準に陥っているのだそうです。いったいどこまで下がれば気がすむのでしょうか。 企業の財務内容などを観察しながら、日本企業の可能性について検証し、ベンチャー企業にとってのビジネスチャンスを考えてみましょう。

指標でわかる日米の違い

 26年前の株式市場のことはくわしくはわかりませんが、日経平均は1982年以降、1989年末に38,915円を記録するまで急上昇を続けた後、いくつかのバブルを経験しながら現在に至るまで下落しました。
 メディアは暴落のたびに、「バブルがはじけた!」と報じてきましたが、現在の日経平均株価を見る限りはじけ尽くした様に感じます。ここは株価を計る代表的な指数を取り上げて、日米の株価水準などを検証してみましょう。

PER:株価収益率
 『PER』とは、株価を一株あたりの利益で割った数値。株価水準を損益計算書を参考に評価する指数です。
 日経新聞によれば、現在の日経平均のPERは前期基準で8.2倍、今期予想基準で68.5 倍です。
 多くの企業が決算期として採用しているのは3月末ですから、前期基準というのは総じて2008年3月期の利益を基にした数値が8.2倍だということです。米国(S&P500)のPERが10倍程度と言われていますから、前期の利益水準が維持できれば、現在の株価は割安です。ところが、今期の予想、すなわち2009年3月期決算の予想利益は、大半の企業が減益や赤字転落となり、PERの水準も68倍に拡大します。したがって日経平均はPERで見る限り、米国に比べれば明らかに高い水準ということになります。

PBR:純資産倍率
 『PBR』とは、株価を一株あたりの純資産(自己資本)で割った数値。株価水準を貸借対照表を基に評価する指数です。
 純資産とは、総資産から負債を差し引いたものですから、企業の解散価値に相当するといわれています。日経新聞によれば、現在の日経平均のPBRは0.8倍です。1倍を下回っているという事は、過半数の企業の株価が解散価値を下回っていることを意味します。ちなみに米国(S&P500)のPBRは1.7倍程度です。PBRで見ると日本の株価水準は下げ過ぎているということです。

ROE:自己資本利益率
 『ROE』とは、利益を株主資本で割った数値。株価水準を計る指数ではありませんが、企業の財務効率を評価することができる指数です。
 一般論としてROEを高めることが、株主に報いる経営だとされています。これは少ない株主資本で大きな利益を上げようというものであり、資金調達において株式発行を控え、そのぶん銀行借入れを活用することで、ROEは高くなります。
 米国流の経営哲学は、ROEの追求にあります。米国企業の多くはここ数年、高度な金融技術を応用した借り入れをおこない、事業を拡大してきました。景気の良いときには、このROE経営が非常に有効な手法となり得ますが、現在のような不景気においては、借入金の返済が負担となり、時には企業の破綻を招いてしまいます。現在、米国の著名な企業が相次いで瀕死の状態に陥っているのは、このROE 経営を追求した結果ともいえます。
 一方、日本の企業は、90年代に経験した金融バブルの崩壊に学び、不良資産の整理を継続して借入れを減らし財務体質を強化してきました。その結果、ROEは総じて低いものの多くの企業が有利子負債に依存しない体質となり、豊富な現金資産を抱えている企業が多数あります。

日本企業は優秀!?


 

 上記の表は、現預金から有利子負債を差し引いたネットキャッシュを潤沢に抱えながらも、PBRが割安な企業の代表例です。  たとえばロームはPBR0.7倍で解散価値の1倍を下回っていますが、ネットキャッシュは3000億円以上もあり、財務内容は良好です。この表にあげた企業以外にも、不況により足元の収益は低迷しながらも財務内容が優秀な企業はたくさんあります。

 日本企業の多くは潤沢な手元資金を有しており、米国の様に債務返済に追われることも無く、手元資金を有効に活用することで、未曾有の不景気の中でも攻めの経営が可能になります。

 

新規事業進出ならベンチャー企業にもチャンス

 資金活用には、既存事業の拡大と新規事業への進出の2つが期待されます。

【既存事業の拡大】 国内環境は少子高齢化により消費の急拡大が望みにくい状況ですが、将来の成長著しいアジア圏等の海外に事業を拡大するには、株安の今が最良のタイミングとなります。今後は日本企業がM&Aによって国内外の安価に放置されている企業を取得し、事業拡大を狙うケースが急増するでしょう。

【新規事業への進出】 新規事業への進出手段として、あらためてベンチャー企業に注目があつまりそうです。そもそもベンチャー企業は大手企業が手を出さないニッチ分野や、新技術を得意分野としています。大手企業と組むことで互いの事業を伸ばすことができるビジネスについては、大手企業も積極的にベンチャー企業と資本提携をおこなうことでしょう。

 ベンチャー企業への資金提供は、従来ベンチャーキャピタルが主役でありましたが、今後は上場企業が資金提供者として活躍するかもしれませんね。

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