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ベンチャーキャピタルが大ピンチ
国内最大手VCのジャフコが発表した2009年3月期決算は株価低迷と新規公開(IPO)社数の減少により大幅な赤字に陥った模様です。2008年3月期には投資先企業のIPO等によって得られたキャピタルゲインは166億円でしたが、2009年 3月期にはそれが 5500万円に激減してしまいました。
VC は、運用報酬と、成功報酬の2つをおもな収益源としております。好調な時には(1)ファンド組成、(2)投資、(3)回収、(4)分配、(5)あらたなファンド組成、(6)投資・・・という好循環を繰り返すことで、VCもその規模を拡大してきたのですが、今回のようにIPO件数の激減と株価の暴落で、キャピタルゲインが小さなものになると、得られる分配金も少なくなり、あらたなファンドの設立が困難になるのです。
そのため多くのVCが新規投資について慎重な姿勢をとることになり、なかには投資事業からの撤退を決断したところも少なくありません。結果的に、以前であれば容易に投資を受けられたようなベンチャー企業の多くが、現在資金調達難に陥っているのです。
市況の回復も望みは薄い
VCの投資マインドが回復するには、市場環境やIPO環境の回復を待たなければなりませんが、関係者によればIPO市場の回復には2年程度かかるといわれております。
その根拠は、新興市場を中心にベンチャー企業に求める公開の要件として、もっとも重要な要素に「事業の成長性」というものがあります。しかしながら、今回の不況がおよそすべての業界に浸透しており、特に市場がもとめる連続した(2年以上)事業の成長を実績として残すには、今後相当の時間を要するものと考えられるからです。
残念ながら当分の間、VCの投資姿勢は慎重なスタンスにならざるを得ないと思われます。楽観的なことを申しあげるわけにはいきませんが、現在のような最悪の環境で投資をしたもの程、将来の大きなリターンにつながる事を信じて新規投資を継続するVCもまた、少なくありません。
これからのベンチャーキャピタルのスタンスは?
当分は限られた手元資金を投資に向ける事になり、以前にも増して慎重な投資が行われると思われますが、今後予想されるVCの投資スタンスを考えながら、ベンチャー企業としての対応策を検証してみましょう。
【ハンズオン投資】
投資先への関与を深くする事が予想されます。投資後の事業育成に多くの手間をかけることで、株式公開の確度をあげることが期待されます。営業支援、内部管理体制、公開準備等・・・と、本来ベンチャー企業が期待する機能をVCが備えることになるでしょう。
特に事業の成長に欠かせないサポートは営業支援をはじめとした事業の支援です。この場合は、その事業内容に関連する事業系VCがベンチャー企業にとってもっとも望ましいパートナーになるかもしれません。
また、全国の取引先を紹介をしてくれる可能性のある銀行系VCや、海外展開を考えているのであれば商社系VCなどが力を発揮してくれるでしょう。
【マジョリティ投資】
投資先への支配力を深くすることが予想されます。とはいってもVCは企業をのっとる事を目的としてはいません。あくまでもVCの目的は売却による投資回収です。
ただし、以前のように数%を投資するようなことでは、前述したようなハンズオンのモチベーションも沸きません。VCがさまざまなリソースを使って支援をするためには、平均しても34%程度の出資比率を要求してくることになると思います。
ベンチャー企業の経営者にとっては、経営の自由度が低下することになりますが、多くのリスクをとって投資をおこなうVCの立場になれば、未公開企業への投資はこの水準が適正であると考えられるのです。
欧米ではVCが経営者(CEOやCOO)を務めたり、社外から経営者を招聘することも珍しくありません。創業者以上に事業拡大に適した人物がいれば、創業者は自らの利益の極大化にしたがって外部の人物に経営を譲ります。
以上のように、今後の資金調達は、いろいろなVCの特色を理解したうえで資金調達を相談なさってはいかがでしょうか。
特にVC業界は俗人的なビジネスです。そのキャピタリストが投資後も親身に付き合ってくれる人物なのかも重要な要素です。(お互いに)納得いくまで議論のうえで同じ船に乗れる仲間になれる事を望みます。