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計画は絵に描いた餅
ベンチャー企業が、ビジネスを実現すべく資金の調達を行う為には、資本政策が必要になります。
さて、資本政策にはそのベースとなる事業計画が必要になります。事業計画の利益等の数値が、資本政策の株価に反映されます。
たとえば1年後の利益が5000万円だから、PER20倍で企業の時価総額は10億円。発行株数が1万株ならば一株10万円也!という具合に、有利な資金調達をしたいが為に、自然と事業計画の数値は壮大なものになるのです。
さて、壮大な計画に共感してくれたいくつかの投資家によって、無事資金が集まったとしましょう。しかしこの計画はまじめに事業をおこなっても計画が未達成に終わるのです。
私の経験から申し上げますが、ベンチャー企業の事業計画は、90%以上が計画倒れとなり、その大半は1年程度で事業そのものを中断しております。
こんな計画は要注意!
事業計画が遂行できない原因については諸説あるとおもうのですが、おおむね下記のようなケースに集約されているようです。
・ 実績も無いのに、事業の拡大をシンクタンクが作った右肩上がりの市場予測のデータに頼っている。
・ 肝心の事業の柱が、一過性のブームになる可能性が高い商品やサービスに頼っている。
・ やたらと多くの事業領域に手を出している。
とはいっても、将来の計画をあまり控えめにするのも問題です。未踏の領域にチャレンジするのがベンチャー企業ですから。
ここで問題に取り上げたいのは、計画の多寡ではありません。将来、事業計画に誤差が生じたときに、手遅れとなる前に事業の縮小や見直しをおこなうことが重要なのです。多くの場合、売上の達成ができなくなると、社内の雰囲気が悪くなり、精神論が横行したり、最悪の場合は、犯人捜しが始まって会社が空中分解してしまいます。
ここで重要なのは、冷静に経済や社会の環境を分析して計画の見直しができるように、あらかじめ準備しておくことです。
事業を縮小/ 中断する条件をあらかじめ設定しよう!
あらかじめ、事業見直しの条件を設定することで、関係者が建設的に打開策を協議することが出来ます。
この条件は、事前に株主にも共有することで、株主と経営に変な軋轢が発生せず、株主が社外のよき協力者として機能することになります。
具体的な手法としては、次のような条件を備えておくと良いでしょう。
・ 業界の成長(代表的な企業の売上等)を数値で設定し、その成長が止まった場合。
・ 売上の要因(商品開発や販売代理店、仕入れ等)を数値で設定し、その達成が50%を下回った場合。
・ 計画した売上数値の達成が50%を下回った場合。
・ 計画した重要な支出の類(業務委託費や広告費)が120%を超えた場合。
上記は、その企業毎に重要指数が異なるのですが、なるべく具体的な数値をもって設定し、計画を半期毎に作成することで、定期的な見直しが可能になります。
「私はかつて一度も計画を下回った事は無い!」といった言葉を、優秀な経営者の自慢話として目にしたりしますが、肝心なのは危機的な状況を如何に打開するかにあると思います。
その為にも、事業のアラームを設定し、不足の事態に備えておきましょう。