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「ドンブリ勘定」はNG!
健全な事業運営には、一つ一つの取引内容を、台帳を用いて記録・保管・活用することが不可欠です。たとえば、1種類の商品だけを扱い、仕入先は1カ所で、 顧客の数も数十人程度に収まっていれば、仕入れや販売などの取引を「記録」しなくても、経営者の頭の中の「記憶」だけで十分管理できるかもしれません。
しかし、一般的にはもっと広範囲かつ複雑な取引を行っている事業者が大半です。そういった事業者が記憶に頼って「ドンブリ勘定」で経営を行っていると、請 求や入金、支払いなどの状況がわからなくなってしまい、最悪の場合は資金が不足して倒産の憂き目を見ることになってしまいます。
台帳管理の効用はそれだけではありません。台帳に記録されたデータには、商品の品揃えや販売戦略を考えるヒントが詰まっているのです。事業を成長させるために、台帳管理はなくてはならないと心得ておきましょう。
台帳の種類とは
では、台帳にはどういったものがあるのでしょうか。主なものには、いつ、誰に、何を、どこで、どれだけ販売し、いつ請求し、いついくら入金されたか、と いった販売に関する取引を記録する「販売台帳」、いつ、誰から、何を、どれだけ仕入れ、いつ請求され、いついくら支払ったか、といった仕入れに関する取引 を記録する「仕入台帳」などがあります。
また、販売台帳をもとに、得意客ごとに取引の履歴をまとめ、いつ、何を、いくら買ってもらった か、といったデータや、その顧客に関する付帯事項(生年月日や家族構成などの個人情報、好みの傾向、意見・クレームなど)をまとめた「顧客(得意先)台 帳」、そして販売台帳および仕入れ台帳をもとに、どの商品をいつどれだけ仕入れ、いつどれだけ販売し、在庫はどれだけあるのか、といったことを記録する 「商品台帳」があります。
「請求漏れ」「二重請求」「回収漏れ」のリスク
さきほど、「ドンブリ勘定では倒産の憂き目を見る」と書きましたが、取引内容を記録しておかないと、次のようなことが起こります。
たとえば、商品を販売する場合、すべて現金決済であれば問題はありませんが、実際は月末などにまとめて請求する「掛売り」が大半でしょう。掛売りの場合、 いつ、誰にいくら売掛金債権が発生したかを記録しておかないと、「請求漏れ」が生じてしまったり、「二重請求」が生じて相手のひんしゅくを買ってしまうリ スクが大いに高まるでしょう。また、請求したものがいつ入金されたかも記録しておかないと、「回収漏れ」が生じてしまいかねません。
「消滅時効」なんていうリスクも!
ちょっと横道にそれますが、請求を忘れるなどして、一般的な売掛金の場合は2年間、飲食店のつけ、ビデオ・CDのレンタル料などは1年のうちに、請求先か ら入金もしくはその事実があることの確認(債務承認)が取れないと、その請求権は消滅してしまいます(消滅時効)。なお、よく誤解されますが、請求書を出 しただけでは消滅時効は回避できません。あくまでも請求先が債務の存在を承認した「一筆」ないしは「音声」などの証拠となる記録を取っておく必要がありま す。
また、販売先ごとに「支払条件」が異なることもよくあり、一つ一つの売掛金の請求がいつ入金・回収されるかを記録しておかないと、資金繰りがわからなくなってしまう恐れがあります(資金繰りについて、次回に詳細を説明する予定)。
「不良在庫」や「売り逃し」も大リスク
商品を仕入れる場合も同様で、代金は月末などにまとめて支払う「掛買い」がごく一般的に行われています。掛買いにより発生した買掛金債務を記録しておかなければ、「支払い遅れ」を生じさせて相手の信用を損なったり、「二重払い」をしてしまう危険性が高まります。
商品台帳においては、販売および在庫の状況をタイムリーに把握しておかないと、売れなくなった商品をつかめず、不良在庫がたまって無駄な保管コストを生じ させたり、仕入れ代金が回収できなくなるといった事態につながります。一方、売れ筋商品の在庫が欠品してしまうことで「売り逃し」が発生し、ビジネスチャ ンスを失うばかりか、顧客の期待を裏切ることになってその信頼も失う結果につながります。
小規模のうちはエクセルでもOK
台帳管理の意義や必要性は、これで十分理解されたと思います。では、どのように作成すればよいのでしょうか。
事業を開始した当初の、商品数や顧客数、仕入先数などがまだ少ない段階では、上記でふれた各台帳の項目をエクセルに入力して管理すれば済む場合が多いよう です。なお、入力したデータは、後々さまざまな角度から分析する必要性が生じると思われるので、ノートに手書き、は避けるべきでしょう(それでも記録をつ けないよりはマシですが)。
事業が成長して規模が拡大してくると、エクセルでは手間がかかるようになります。特に、入力したデータをいろいろな切り口から分析するとなると、使い勝手が悪いかもしれません。
販売プロセスの一元管理も可能
そこで業務を効率的に進めるためにお勧めなのが、市販されている販売ソフトや顧客管理ソフトなどを活用することです。そういったものの中には、見積もりか ら受注、請求、入金にいたる販売プロセスを一元管理できたり、それに関連して在庫管理や支払管理も行え、かつ請求書など必要な帳票類が簡単に出力できるも のがあります。
また、商品ごとの売上推移表や販売した全商品の売上順位表が出力でき、売れ筋・死に筋商品の分析を行うことができたり、商 品別・担当者別・顧客別・月別といったさまざまな切り口から販売状況を分析できる機能が備わったものがあります。汎用性の高いソフトを活用してみてくださ い。