Vol.23 個人事業主の確定申告、こんなところに気をつけて!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
個人事業主として独立し、初めて迎える確定申告。「作業が大変そう」「難しそう」と心配している人もいることでしょう。そこで、ここでは確定申告を迎えるにあたっての基礎知識や心得を解説します。

 

手引きどおりに記入すればできる

 

 個人事業主となったら年度末に確定申告を行い、納税額を確定する必要が生じます。その時期になると、「個人事業の開廃業等届出書」を納税地の税務署に提出した個人事業主のもとに、税務署から確定申告に必要な書類一式が送られてきます(申告には青色と白色の2とおりがあり、選んだほうの決算書用紙が送られてきます)。

  会社員時代は、ごく簡単な年末調整しか経験したことがなく、確定申告と聞いて不安を感じる人も多くいます。しかし、基本的には、送られてくる手引きにした がって記入していけば、たいていの人は作業ができるように設計されています。それでも、初めての確定申告を不安に感じる人は、税務署で説明会が開催された り、個別相談にも応じていますので、問い合わせるとよいでしょう。

 ここでは、いくつかの注意点やよくある疑問にお答えしておきます。

 

「売上」「所得」とは?

 確定申告の大きな構造は、「売上」から「必要経費」を引いて「所得」を確定させるというものです。個人事業主の場合の所得は、厳密には「事業所得」といい、営利を目的とし継続的に行う事業から得られる対価がこれに該当します。

  所得には、ほかに「不動産所得」「給与所得」「退職所得」「譲渡所得」「一時所得」「利子所得」「配当所得」「山林所得」「雑所得」があります。不動産賃 貸業などもっぱら不動産所得を挙げる事業主の場合は、特別に不動産所得専用の決算書用紙を使用します。また、個人事業主で事業所得や不動産所得以外の所得 があった場合は、確定申告書用紙の該当欄に金額を記入して申告します。譲渡所得などの場合には、確定申告書に加えて、その所得の計算方法を記載した明細書 の添付も確定申告時に必要となります。

 「売上」は、1月1日から12月31日までを一つの会計期間として申告します。会社の場合には会計 期間は任意ですが、個人の場合には暦年(1月1日から12月31日まで)と決められています。売上の計上時期ですが、基本的には企業会計と同様の考え方が 採用されています。例えば小売業や卸売業の場合には、12月末で相手先へ商品を出荷した場合、たとえ入金が翌年1月以降であったとしても出荷した日の年度 で売上に計上します。ただし、不動産賃貸収入や、私たち専門家の顧問報酬のように継続的なサービス提供契約に基づく売上は、相手先に対する請求が可能に なった日の年度における売上とします。不動産賃貸契約の場合を例に挙げれば、通常は前払いですので、12月中に受け取った賃料は翌年1月分の賃料です。企 業会計の考え方をそのまま当てはめますと、その場合には前受金として売上には計上しないのですが、不動産所得や事業所得の計算上は、12月で1月分の賃料 を請求可能な状態になっているわけですので、これは請求が可能になった日の年度で売上に計上します。この点は、企業会計の考え方と異なっている点ですので 注意が必要です。

 

「源泉徴収」に注意

  なお、事業主が請求書を発行した先が源泉徴収を行う場合、源泉徴収後の金額が支払われているはずです。その場合、年明けの1月ごろに報酬の支払者から「支 払調書」が送付されてくることが多いと思います。支払調書は申告実務上、給与所得者の源泉徴収票と同様に申告時に添付することが多いのですが、源泉徴収票 とは異なり、申告書への添付義務はありません(同様に支払者側も源泉徴収票と異なり、支払先への発行義務を負いません。このため郵送してこない支払者も多 いのです)。通常は手元に送られてきたもののみ添付します。支払調書に記載されている源泉徴収税額はいわば所得税の前払いのようなものです。最終的な納付 税額の計算の際には、前払い分の税金として控除します。

 支払調書が送られてこない場合、源泉徴収税額が分からない場合もあります。この場 合には相手先に問い合わせるか、入金手取額と源泉徴収税率から逆算して把握しなければなりません。申告書類の中には売上先の一覧表が含まれていますので、 売上先が複数の場合はそこに内訳を記入します。

 

「必要経費」とは?

  「必要経費」とは、小売業の場合の商品の仕入れ代金や、製造業の場合の製品の材料費など、売上を得るために“直接”要した費用となる売上原価や売上を得る ために“間接的に”要した費用となる販売費、一般管理費のことをいいます。「給料賃金」「外注工費」「減価償却費」「地代家賃」「水道光熱費」「旅費交通 費」「通信費」「接待交際費」「広告宣伝費」「福利厚生費」「消耗品費」「雑費」などの科目に分かれています。???

 

「どの科目なのか、よくわからない!」

  それぞれの科目は、税務署で配布している「帳簿の記帳のしかた」という手引きを見ますと、例えば消耗品費には「帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなど の消耗品購入費」といった説明があります。しかし、例えば個人タクシーを営んでいる事業主の場合、「ガソリン代は売上原価ではないか」と思われるかもしれ ません。

 また、例えばホームページの運営を外部委託している事業主の場合、「その外注費は『広告宣伝費』なのか『外注工賃』なのか『通信費』なのかよくわからない」という人も多くいます。

 

科目は経営管理上の視点で決める

 はっきり言って、どの科目を使用すべきか、その厳密な線引きはありません。事業主が自分で一番近しいと思われる項目に含めているのが現状です。逆にいえば、「広告宣伝費としてこの費用の推移を見たい」といった経営管理上の視点で決めてもいいと思います。

 

必要経費はどこまでOK?

 では、必要経費とは、どの範囲までが許されるものなのでしょうか。実は、その範囲も厳密に線引きされているわけではありません。あえて概念を説明すれば、その費用がどのように純粋に売上にかかわったかを、明快に説明できるかどうかにかかっていると言えるかもしれません。

 

プレーはOK、クラブはNG

 一例を挙げます。取引先と接待を目的にゴルフ場でプレーをした場合。プレー費用は「接待交際費」として認められるでしょう。しかし、その際に使用するゴルフクラブを購入した場合、その費用は経費として認められるでしょうか?

 答えは“NO”でしょう。たとえその接待でしか使わなかったことが事実としても、一度購入すれば、純粋なプライベートゴルフで使う可能性も考えられるからです。

  なお、接待交際費の場合、誰とどんな目的で行ったことなのか、その接待が確実に売上に結びついているのか、といったことが税務調査では問われます。記録し ておくことをお勧めします。プライベートで行った飲食まで接待交際費に含んでしまうと、後で税務調査が入った場合、説明できず痛い思いをする場合がありま すので注意してください。

 

 

 

プライベート使用分は峻別を

  また、SOHOなど自宅で仕事をしている事業主の場合。「家賃や水道光熱費など、生活費との仕分けをどうすればいいか」と聞かれる場合がよくあります。そ の場合、例えば就業時間や事業で使用する面積など合理的な基準で按分することを勧めています。一般的に1日8時間労働するものとして、3分の1は必要経費 として申告するという考え方も成り立つのではないでしょうか。

 以上のようなグレーゾーンがありますが、プライベート使用分は峻別して申告するようにしたいものです。不安な人は、所轄の税務署に相談することをお勧めします。

  なお、確定申告の作業は結構手間がかかります。できるだけ楽に行うには、できれば毎日、最低でも週1日は必要経費などを会計ソフトに入力する日を決めて実 行することです。確定申告に必要なことをすべて記録でき、申告用紙がかんたんキレイに作成できるなど、作業時間を大幅に軽減させることができる会計ソフトが 市販されています。ぜひ調べてみてください。

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