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予算を立てよう!
たとえ、起業したばかりの小さな会社であっても、予算はちゃんと立てた方が絶対に良いです。結果数値だけを見ているよりも、目標と物差しを持っていた方が質の高い振り返りができます。予算を立てる際の注意点や考慮すべきポイントを解説します。(画像やサンプルファイルを使って解説します。)
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目次
1. 予算=行動計画
2. 予算を立てれば、PDCAサイクルを回す準備ができる
3. 根拠がある計画があるからこそ進捗管理ができる
4. 予算の不思議…絶対に行かなくてはならない数字より高い予算を策定した方が良いワケ
5. 予算は日次で立て、常に見通しを出せるように
6. 計画は変わって当たり前、しっかり振り返り、修正しよう
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1. 予算=行動計画
会社を設立した際に立てた事業計画があっても、小さな会社、特に経営者一人で何役もこなしているようなときには、日々の業務に手一杯でなかなか事業計画に沿って現状を振り返ったりする時間がとれませんね。
スタートしてしばらくすると日々の業務に忙殺され、売上管理や予算管理はなかなかできない…
これは事業を成長させていく上で非常にもったいないことです。
前回、売上・利益・経費を管理する上で、頭の中に簡単な物差しを持つことが大切だとお話ししました。
今回お話しする予算策定は、「企業活動」を行う上で「目標とする成果の量やその成果を上げるために必要な行動の量」を把握するためにとても重要な物差しになります。
目標に対して得られた結果を対比し振り返ることで、企業活動における現状の問題点や課題を明確にすることができます。
また、「予算」という「目先の目標」を立てることで、予算を達成するために必要な「行動計画」を立てることができます。
ぜひ予算を立てる習慣をつけていきましょう。
2. 予算を立てれば、PDCAサイクルを回す準備ができます
「PDCAサイクルを回す」という言葉をよく耳にされると思います。
PDCAサイクルとは「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(検証)」、「Action(対策)」という4つの段階を踏みながら、成果の質を高めていくマネジメント手法です。
企業活動や事業の育成においてとても合理的な管理手法ですね。
そのスタートは「Plan(計画)」。
今回のお話に当てはめると、あなたの会社の「予算」であり、その予算を達成するための期初の行動計画です。
予算をしっかりと立て、達成するための行動計画を策定することで
・やるべきことが明確になる
・対比する物差しが明確にあることで検証を行いやすい
・目指す状態との差異を定義できるので、対策を立てる際に検討を行いやすい
という状態を作ることができます。
予算と行動計画を立てて活動する習慣をつけることで、あなたの会社でPDCAサイクルが回り始めます。
3. 根拠がある計画があるからこそ進捗管理ができる
予算を立てるとき、何の根拠もなく「よし、今期は10億円売ろう!」という組み方をされる人はまずいないでしょう。
実際に予算を組む際には、
・目標とする売上、利益
・現状確実にあがる売上、利益
・商談中であったり顕在化されている見込売上、利益
・現在の事業の損益分岐点
・現時点で足りない売上、利益
少なくとも上記のようなことを考えながら策定を行うでしょう。
【図1】予算策定の考え方
上図のような考え方に立ったとき、
・「見込売上・利益」の確度はどの程度か
・もしだめだった時はどうするか
・「足りない売上・利益」を獲得するために行う行動はどのようなものか、また、「見込売上・利益」が取れなかった際の補完は可能か
このようなことを具体的に検討し、行動計画やターゲットを詰めながら、目標を根拠あるものに固めていきます。
根拠となる行動計画やターゲットが可視化されることで、具体的な「進捗管理」が行えるようになります。
4. 予算の不思議…絶対に行かなくてはならない数字より高い予算を策定した方が良いワケ
営業等で予算を持ちそれを追った経験がある方はそのような経験をされたことがあるかも知れませんが、
不思議なもので、「予算」に対して100%の行動を抜かりなく行ったとしても、何故か予算は達成できません。
予算を100%達成するためには、少なくとも予算に対して125%の数字を達成する行動計画を立てないと、達成レベルに近づけることができないのです。
企業活動や営業活動には必ず相手があり、場合によっては競合もあります。当然ながら、立てた計画が100%目論見とおりに進む、ということは残念ながらないのです。
組織や人間が目標に向かって行動を起こし実行をしたとしても、行った行動の量に対して成果が出るのは80%程度です。
つまり、経営者であるあなたは、その前提に立って「高い予算」を組まなくてはならないのです。
例えば、事業計画書の月次の平均売上を1億円で設定し、年間12億円の販売見込みを立てて作成していた場合、
実際に月間平均1億円の売上を実現して行くためには、月間の「売上予算」は最低でも1.25億円ぐらいに設定し、
行動の計画は1.25億を達成するために立てなくてはならないわけです。
経営者の建前 ⇒ 「より高い目標を目指して行動した結果、予算にはあと一歩届かなかった。しっかり振り返って
次月こそは予算を達成しよう」
経営者の本音 ⇒ (ただし、必達目標値はなんとか行った)
という状態を実現できるように計画を組んでみましょう。
5. 予算・計画は日次で立て、常に見通しを出せるように
予算は年間の目標、月次の目標、週次の目標、そして日次の目標というようにブレイクダウンされているのが望ましい形です。
ビジネスモデルによっては当然ながら日次で売上発生などしないものもあり、中には年に数回しか売上は立たない、
という方もいらっしゃるかも知れませんが、それでも予算は日次で持つべきです。
何故なら、年に数度、大きな売り上げが立ち、その売り上げを獲得するために日々活動を行っている企業においても、
毎日「経費」は発生しているからです。
予算、計画を日次に分解してあれば、容易に「見通し」を出すことができます。
「このまま行けば、今月は●●で着地だな」と。
そして、日次進捗を追える状態になっていれば、ミーティングの体系やスケジュール等も設定しやすくなります。
「毎月10日と20日は進捗確認と対策の日」という具合です。
10日、20日に進捗確認をし、計画と実績の間に差異が生まれていればその要因を検証し、原因を把握することもできます。足りないということになれば、追加の施策を投下し、行動計画を修正することも可能です。
【図2】予算を日次で管理し、進捗を追えばさまざまな対策を打ちやすくなります
このような管理を行うことで、進捗状況に対して早期に手が打てるようになっていきます。
6. 計画は変わって当たり前、しっかり振り返り、修正しよう
上記のように予算管理を行っていると、中には思ったような成果が出せなかったり、計画とおりに案件を詰めることができなかったりと、立てた予算、計画とおりに事が運ばないこともあると思います。
しかし予算や計画なしに得られた結果だけを検証するのと、計画を立てた上で実行し、進捗管理を行い、
結果として得られた最終結果をもって振り返りを行うのとでは、現状把握の精度がまるで変ってきます。
・上手くいったこと
・上手くいかなかったこと
・ショートの要因
・詰め切れなかった案件(翌月に繋がる案件)
等、さまざまな情報が同時に明確になることで、翌月以降現状に則した「根拠」を持った計画修正ができます。
さらに、金融機関等に提示している事業計画に万一乖離が生じ始めている場合も、そのアラートを早く掴み、
「何故、どこが」ずれ始めているのかを正確に把握できます。
要因が常に明確であるため、対策の立案や計画の修正も早くなるのです。
次回のコラム「経営見える化 Vol.3 日次決算を取り入れよう!」では、日次決算について説明します。経営の最小単位である「日次」ベースで経営数値を可視化する意義、方法などをくわしく解説したいと思います。