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憧れの「スイーツ」を売りたい!
「コーヒー屋さん(田代珈琲株式会社)」さんは、直輸入のコーヒー豆を焙煎して販売するお店です。
このコーヒー屋さんが「スイーツを売りたい!」ということで、商品開発のお手伝いをさせていただくことにしたのです。
よくあるんです。飲 料(お酒含む)販売の店舗さんが、フードの販売を希望するケース。おいしい飲み物を販売しているわけですから、それに合うフードを、と考えるのは実に自然 な流れ。
しかし、一見簡単そうにみえるこの販売方法、実はちょっと「難しい」のです。
ドリンク類の場合は、発送は基本的 に「常温」が多いもの。フードの場合は、というと「常温」「冷蔵」「冷凍」の3種類。
例えば「ワインに合う生ハムを送りたい!」となる と、生ハムは大概が「冷凍スライス」になっているケースが多いので、発送は「冷凍便」ということになってしまいます。
そう、ワインは「冷凍」で は送れないため、これは「同梱」ができない、ということになります。それでは、送料がダブルにかかってしまいますので、お客様は二の足を踏んでしまいま す。
「珈琲豆」の場合、「冷蔵」でも「冷凍」でも送れるように思えますが、実際には「冷凍」で届いた珈琲豆を常温で保管すると、結露が発 生して「カビ」が生えたりするケースがありますので、おススメは出来ません。と考えると、こちらのお店が「スイーツ販売」を希望されるのであれば、ベスト な環境はやはり「常温」。
「常温のお菓子を仕入れて販売しましょう!」ということになり、早速「仕入先探し」が始まったわけです。
「近所に工場を発見したんですが・・・」
とはいえ、結構難しいんです、仕入先 を探すのも。
個性的な商品が欲しい。出来れば、オリジナルなんかだったらすっごく嬉しい。
でも、オーダーで作ってもらう 場合は、ある程度のロットを覚悟しなければならない。それだけの数をさばききれるかどうか?
製造元も、作る以上はリスクを負いますので、 卸しの契約は実に慎重です。ましてネットショップとなると、まだまだ社会的に地位は決して高くないのが現実。「ホントに大丈夫なの?」くらいのことは、軽 く言われてしまいます。(苦笑)
そんなこんなで、商品選定から始めて、メールで喧々囂々とやりあっていたのですが、ある日こんなメールが 届いたのです。
「チーズケーキの売り込みがあったのですが、おいしいけれど高いし、いまさら感も否めません。また近所にバウムクーヘンの工 場があるんです。ドイツW杯人気に乗ってバウムクーヘンはどうでしょうか?」
『バウムクーヘン』
実はこれ、ものすごい大 きな「キーワード」だったのです。
2006年は、W杯がドイツで開催されることもあって、「ドイツ」に対する注目度は非常にあがっており ました。特に、フード関連は、こういうイベントには敏感に反応します。
「ビールとチョリソ!ザワークラウト!」なんてのは定番で、なかでも「バ ウムクーヘン」は、急激にその商品数を伸ばしてきたアイテムの一つだったのです。
「うわ、それ、ありですよあり!いいじゃないですか!ぜ ひ、アポとってみてください!」
と、無責任にアドバイスをしたところ(笑)本当に飛び込んできてくださいました。とおりすがりに、何気にぶ らっと、くらいの勢いで。
「いやー、社長さん、すごくいい方で~。サンプルもどっさりいただいて、試作もしてくださるって・・・」
・・・なんでも、言ってみるもんですよね。
でも、この「偶然」が、大きな「サクセス」を呼ぶことになろうとは。
「連日完売劇場」の幕開けです!
バウムクーヘンは、最初は「コーヒーバウム」なども考えましたが、結局はシンプルにまとまり、「コーヒーとベストマッチの配合」「最高級の材料をふんだん に使ったスペシャルバウム」という方向になりました。ここは、工場の社長さんの心意気で、何度も試作&試食を重ねた結果、濃厚な味でふんわりとした食感 が、このコーヒーには合うだろう、という結論になったのです。
それと同梱するのは、こちらのお店が自信を持って紹介する「ニカラグアコーヒー」 のなかでも、ナンバーワンと評される「ハイランド ティピカ」というコーヒー豆をセット。
焼きたてのバウムクーヘンと、焙煎仕立てのコー ヒー豆を、その日のうちに同梱して発送、という販売方法のため、1週間ごとに受注を区切って注文を受ける形をとりました。
この方式ですと、バウ ムクーヘンは必要個数のみを発注することができるので、双方の負担も軽く、楽なお取り引きができます。実に、恵まれた取り引きパターンと言えるかと思いま す。
で、販売開始後。何が起こったか?
販売イベントなども重なったおかげで、いずれのサイトも、予想をはるかに超える人 気が出て、ヒット商品と呼ぶにふさわしい、数字を収めたのです!
これには店長さんも嬉しい悲鳴!
心から「おめでとうございます!」を 言わせていただきました。
「たまたま近所にあった工場」という偶然。
「たまたま注目し始められた商品だった」という偶 然。
「たまたま、社長がいい人だった」という偶然。
そして、トレンドに敏感に反応し、柔軟に取り入れていく行動力。
でも、あえて言わせていただきます。
「運」は「実力のうち」。
一歩踏み出す勇気が、声をかけてみる勇気が、勝ち得た勝利 だとは、思えませんでしょうか?
「ダメ元」でいいじゃないですか。ぜひ、いろいろなお店や工場の門戸を叩いてみてください。
どこ に「ニーズ」と「ウォンツ」のバランスが隠れているか、わからないんですから!
次の「ヒット商品」が、どこから出るのか本当に楽しみで す!