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「食」に「当たり前」はない!
私には京都で、漬物や 生麩などの京食材を扱っている友人がおりまして。
説明書を作る際にちょっとしたアドバイスをしたところ、ひどく驚かれてしまいました。
「漬 物を盛り付ける際に、水洗いしないでください」と、一言書いておくように伝えたのですが、「そんなん当たり前やん!?」と反論が返ってきたのです。
関東では、漬物というと「浅漬け」や「ぬか漬け」「べったら漬け」などが主流。特に「ぬか漬け」は、ぬか床から引き上げる際にぬかがべったりついています から、それを水洗いしてから切って盛り付けるのが通常。たくわん漬けも、スーパーで売っているものなどは、黄色い漬け汁が入っていたりして、なんかつい 洗ってしまいたくなります。
考えてみると、京都の漬物は「塩系のもの」や「調味液に漬かっているもの」が多いようです。パックになってい ても、そのまま開けてすぐ食べられるものがほとんど。なので、漬物を「洗ってから食べる」という感覚が薄いのです。これも、地域による文化の差であると言 えますね。
しかし、京都の漬物をよく知らない関東の人が、初めてこれを受け取って食べるとしたら、もしかしたらついいつもの習慣で、水で 洗ってしまうかもしれません。洗ってしまえば塩分や旨みも抜けてしまいますし、せっかくの漬物は台無し。でも、その「差」を知り、商品を理解していなけれ ば、決して「ありえない」ことではないんです。
地元の感覚なら「当たり前」で済ませられることが、通販の世界では通用しません。それを正 しく顧客に伝え、理解してもらい、本当の商品の「良さ」をわかってもらわなければ、次にはつながっていきません。
また、そういうことをき ちんと伝え、届いた商品を「正しく再現してもらう」。これなくしては、せっかくの商品も台無しになってしまいます。せっかくのピザも、冷凍餃子も、焼き方 しだいでは天国と地獄ほどの差が出てしまいます。
ですから、そういったほんの少しの「気づき」を、積み重ねて形に変えていく必要があるので すね。
地域ごとに「名前が変わる」食品もある
京野菜を手軽に食べる方法として「塩昆布と一緒に和える」というのを教わりました。確かに、京都の錦市場などを歩くと、そういう「おばんざい」や「一夜漬 け」をよく見かけました。
しかし、ここにも「差」がありました。このことを教えてくれた京都の友人は、京野菜を塩昆布と一緒に和えて食べ ることで「柔らかい甘みのある味」を伝えようとしていました。しかし私は「塩味」を想像していました。
なぜかというと、関東で「塩昆布」 というと、
http://www.rakuten.co.jp/shodoshima/536064/485778/482366/
こういう、塩を吹いたカラカラの昆布のことを指すからです。よく、甘味屋でお汁粉に添えて出されたりするのは、この手の塩昆布が多いのです。
しかし、京都で一般的に「塩昆布」というと、
http://www.rakuten.co.jp/shodoshima/536064/486640/486662/
こういう、柔らかい、いわゆる「佃煮」系の味のものを指すのだとか。確かに、市場で買った「万願寺唐辛子の昆布和え」は、こういう昆布で和えてあったのを 思い出しました。
同じ「塩昆布」という名称でも、これではまったく方向性が異なります。と考えると、アドバイスする側や販売する側が、そ ういう情報をしっかりと持って、お客様に対してアドバイスをしてあげないと、お客様の方は混乱をしてしまいます。
いかに、情報が大切かと いうことがいえるかと思います。
同じような味でも、味の「加減」も異なる
佃煮が例に出たので、もう少しお話してみましょう。
「佃煮」とは、「《もと江戸佃島で作ったところから》小魚・貝・海藻などを醤油・みりんなど で煮つめた食品」(※引用:大辞泉)とあるように、そもそもは関東・江戸前が発祥だったようです。
下町には、今でもあちこちに老舗の「佃 煮屋」があり、醤油の濃い色に煮上がったさまざまな「佃煮」が並んでいます。
でも、いずれも結構味は「濃い目」。塩気も甘みも「強め」、一口でご飯 がしっかり食べられる、一口でお酒ががつんと飲める、そんな食べ物が「佃煮」だと思っていたのです。
しかし、ちょっと最近になって驚いた のがここ。
○小豆島発つくだに屋さん
http://www.rakuten.ne.jp/gold/shodoshima/
グルメな友人から「ここのオリーブの新漬が最高においしい」と紹介されてみてみたお店なのですが、(季節限定のため、現在は販売を終了しています)
http://www.rakuten.co.jp/shodoshima/506514/504678/
オリーブと同梱で何か買おうと思って、「つくだにのセット」を頼んでみて驚いたのです。
「佃煮って、こんなに優しいお味だったっけ?」
じゃこにしても昆布にしても、一口でご飯をバクバク、というよりも、素材の味も生きていて、かつ深みのあるしっかりとしたお味。なんというか、薄味だけど ハッキリと、味がぱーっと立っている、という感じでしょうか。
小豆島だからこその素材のよさも手伝っているのだとは思いますが、実に柔ら かいよいお味で、正直驚いてしまいました。そもそも、小豆島は「醤油の産地」というだけあって、醤油の扱いも絶妙。砂糖をたっぷりと使って柔らかく、角を 立てずに仕上げる味は、四国・讃岐の「醤油豆」にもつながるものを感じました。このお味なら、個人のお客様がキロ単位で佃煮を購入する理由もうなずけま す。
これだけ日々勉強しているつもりでも、まだまだ食の世界は奥が深いです。
精進しなければ!と考えさせられてしまいます。