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「客まかせ」だけでは売れない
セミナーなどで、よくお話する 内容の一つに「万能ソースは売れない」というのがあります。つまり「お客様が好きなように、自由に使ってください」とい う商品は、今は人気が出ないのです。
一時期、「DIY(Do It Yourself)」というのがとてもはやりました。猫も杓子も、「自分で手作り」を楽しんだ時代がありました。しかし、そのブームは今、少し収まりつつ あるようです。
現代社会の中心は「マニュアル世代」と言われる人々が中心。学校教材以外の「参考書」に始まり、「ファッション」「恋愛」 「趣味」に至るまで、ありとあらゆるマニュアル本が書店に並び、みんなむさぼるようにそれを読み漁っていました。旅行に行くなら「るるぶ」を買わなく ちゃ!という、旅雑誌ブームなどもありましたよね。その世代はやがて結婚し「たまごクラブ」「ひよこクラブ」などの「子育てマニュアル」に発展していった わけです。
つまり「やってみる、試してみる」という「行動」の前に、必ず「マニュアル」などによる「事前情報」がないとできない、という 風に教育をされてしまった顧客層に対し、自由度の高い「万能ソース」を与えたところで、使いこなすにはとても高いハードルがあるのです。
ですから、売る側がしなくてはならないのが「◎◎専用」と断言するほどに、商品の使用目的や用途を明確にする、つまり商品が利用される「シーン」を考え る、ということなのです。
明確にした目的からヒントが生ま れる
商品を企画する際に、ある程度、製造側でターゲットを決め、条件付けをしてから始めるのは重要なこと。しかし、そのためには、その 「ターゲット層に響く条件であるのか」という点を、再確認してみなければなりません。
「乳飲み子を子育て中の主婦」が、「こつこつ手作り するためのキット」を喜ぶでしょうか?
「新入社員になったばかりの男性」が、「ゆとりの時間を過ごすためのツール」を買えるでしょうか?
商材によっては、もちろん「その難をおしてでも」というものもあるかと思いますが、一般的には難しいと考えて進めていくのが筋でしょう。
より広く ターゲット化でき、購入に結びつきやすいラインを狙うのが、商品開発の「常」。そのために、その商品を「客観的に見て目的を判断する」ことが必要となりま す。
例えば「お茶漬け」を例にとって考えてみるとしましょう。
「お茶漬け」を食べるシーンは、どんなシーンでしょう?
○ お酒を飲んだ後
○急いで簡単になにか食べたい時
○食事の際、おかずがない時にご飯を食べるために
という ようなシーンが、主なお茶漬けの登場となるシチュエーションだと思います。
となると、「お茶漬け」商品の購入者層として考えられるのは、
○ お酒を飲む年齢の男性・女性
○お酒を飲む人に食事を出す男性・女性
○急いで簡単に食事を取りたい男性・女性
○おかずがなくてもご 飯を食べたい男性・女性
(・・・取り組みが終わった後の力士、というのはこのどこに入るんでしょうね(笑))
もとい、こうやって考えると、この「お茶漬け」商品を購入するターゲットというのは、購入シーンで考えると、非常に幅広い年齢層に対して提供ができる商材 であることがわかります。男性・女性とあえて書いているのは、若年層から年配層まで、広くあるために指定ができないからです。
この商材の 難しさは「幅の広さ」である、と言えるのではないかと。それだけに、どれだけ「商品特性」で差別化を図るのか、そこが商品開発の鍵となる、と思います。
お茶漬け・ヒット商品事例
○壱岐もの屋
http://www.rakuten.ne.jp/gold/iki/
長 崎県の玄海灘に位置する離島、壱岐島の温泉旅館が運営しているネットショップです。
こちらのお店で「島茶 漬け」という、大ヒット商品があります。
そもそもは、旅館で刺身を出した後の残りや切り落としの端材を醤 油などのたれに漬け込んで、まかないとしてご飯にのせてお湯をかけて食べていたものが起源。夜、来館したお客様が希望されたためおだししたところ、大変好 評で、口コミでそれを食べに宿を訪れる人が増えてきたため、商品化した、という商品なのです。
ですから、元々は、シーンなど何も考えずに 始めた商品。後付けで「お酒のあとに」というイメージをつけ、ターゲットを考えずにスタートしてみたところ、マスコミに取り上げられたりしてどんどん販売 が拡大していきました。切り落としの素材で作っていたものが、魚一匹丸々使って「まかない料理」を作る、という状態に(笑)。
そして、気 づいてみると、
「主婦のお手軽&贅沢おひとりさまご飯」
という位置づけに、どっかりと 座っていたのだそうです。
このところ非常に人気のある「高級冷凍食品」というのがあります。「○○料理店シェフのハヤシライス」「××レ ストランのグラタン」など、国内産や輸入物を問わず、1品で700円前後の高め設定のものが、とてもよく売れているのです。
これを楽しん でいるのが、主婦層。
外食ほどの高値でもなく、家事の合間、また趣味の合間に簡単に美味しいものを食べる。このゆとりと贅沢な感じが、よ いのだそうで。確かに、こんな高級冷凍食品を、家族4人で食べたら大変な出費です。しかし、一人分ならば安くつきます。こういう賢い(?)楽しみ方という のが・・・善し悪しはともかく、今の「時代」なんでしょう(苦笑)。
テレビ番組の「奥様鑑定団」なる企画で、五つ星をもらったこの「島茶 漬け」。最近はデパートの催事などにも時折出店しているようです。
食べてみると、なるほど納得のおいしさ。それもそのはず、玄界灘の「天然真鯛」 や「剣先イカ」、その他天然素材ばかりを使用して作っている「ヅケ茶漬け」ですもの。もともとの素材がよければ、おいしくないわけがないんです。
冷凍庫に入れておけば、いつでも食べたい時に簡単に、離島の旅館のまかない料理が食べられる。これぞお取り寄せ、究極の「贅沢」という感じ。そのまま食べ ておいしく、旅館を訪れた経験のある人は、その思い出や光景を思い出しながらさらに味わう。
通販商材が与える「幸せの構図」は、お店の考え 方ひとつでいくらでも広がります。描く「シーン」に則した商品開発、ご理解いただけましたでしょうか。