- 目次 -
パソコン買い換えのタイミング
IT投資というと、どうしても「最新の機械を用意しなければならないのでは?」というように考えがちです。しかし、当たり前のことですが、パソコンを買い 換えただけで突然お客さんが増えるわけではありませんね。この連載でも何度かお伝えしてきましたが、大切なのはどうやって活用するか、ということなので す。
これはITに限ったことではないでしょう。たとえば、日本を代表する経営者である稲盛和夫氏が著書の「実学」の中で、最新鋭の機械が稼働している、アメリカのセラミックメーカーの工場を見学したときの話を次のように書いておられます。
「こ の機械は一台、いくらするんですか」と訊ねると、そこの工場長が、目の飛び出るような値段を答えた。そのときすぐに、私はこう考えた。「こんなに高価な機 械だが、一分間で一体何個つくっているのだろう。京セラで動いている自作の機械でもこの半分は生産している。つまり、生産性は半分はある。この設備の投資 総額に比べて、その何十分の一の値段の機械の生産性が半分あるなら、設備投資の効率から言えば、自作の機械の方が勝っているのではないか」
つまり、目先の派手さにとらわれることなく、本質を考え抜くことが大切だ、ということだと思います。
本当のコストとは何か
それでは、会社にとって本当の意味でのコストとなっているものとは何なのでしょうか。たとえば、会社にとっては「人を雇う」というのは大変なコストとなる 行為です。従業員を雇うことで会社が負担しなければいけないコストが「支払っている給料」だけではないことは、経営者であれば全員ご存じだと思います。一 般的には、給与としてもらっている金額の3倍から5倍の売上を上げて、やっと収支がとんとんになる、と言われていますね。
これは逆に考え ると、従業員ひとりひとりの生産性向上は、重要な問題だということにもなるわけです。せっかく従業員を雇っているのに、貧弱な仕事環境のせいで生産性が低 い仕事しかできないのでは、トータルで見るとお金を無駄にしている、ということにもなりかねません。もちろん、お金をかけた環境を用意してさえやればい い、ということにはなりませんが、目先のお金を出し惜しみすることで、却って大きな無駄を生み出してはいないか、という視点も大切だと思います。
|
Windows フリップ 3D |
そう考えていくと、やはり従業員に対しては、お客様満足や会社の売上に直結する活動に集中できる環境を提供すべきではないでしょうか。今までサーバーやインターネットサービスを利用した情報共有をお勧めしてきたのも、同じ理由です。
サーバーでなくても、従業員が利用しているパソコンそのものでも、同じことが言えると思います。たとえば、ハードディスクの容量が足りないため、わざわざ 要らないファイルを探して削除する、などという作業などは無駄そのものです。そんな時間があればもっと生産的なことに時間を使ってもらうべきでしょう。
たとえば「早朝会議」などで有名な、増収増益を続けるトリンプでは、かなり頻繁にパソコンを買い換えているそうです。社長の吉越浩一郎氏は著書「2分以内 で仕事は決断しなさい」で、「IT関連の投資は安くはありませんが、社員の時間を買っていると思えば、けっして高い買い物ではない」「せこい環境からは、 せこい発想しか生まれない」というように書かれています。
もちろん、会社の体力にもよりけりだと思いますが、従業員の時間を大切にするためならお金の出し惜しみはしないという考えも、経営者として大切なのではないでしょうか。
投資のコストパフォーマンス
仕事環境の充実という意味では、パソコンだけではありません。たとえば、オフィスの立地や、あるいは従業員が使用する机や椅子なども、大切な要素でしょ う。会社の地下にワインバーがある、などという会社もいくつかあるそうですが、環境の充実という意味ではこれもひとつのやり方だと思います。
ところで、みなさんは「チープ革命」という言葉をご存じでしょうか。ベストセラーになった梅田望夫氏の「ウェブ進化論」という書籍に出てきた言葉なのですが、これはパソコンを含めたIT全般の設備の価格が、劇的に下がり続ける現象のことです。
たとえば、パソコンの価格で考えても、数年前は何十万円もしたパソコンでも、今なら数万円で買えてしまいます。逆に言えば、会社の引っ越しや、椅子や机な どの買い換えに比べると、パソコンの買い換えは圧倒的にコストパフォーマンスが高いわけです。また、10万円未満であれば、そのまま費用に計上することも できますね。
もちろん、身の丈に合わない投資は絶対にしてはなりませんが、パソコンに限って言えば、古いパソコンをずっと大切に使う、と いうのは却って無駄なのかもしれませんね。少なくとも、従業員が遅いパソコンをイライラしながら使っているという状態なのであれば、会社として改善するべ きなのではないでしょうか。