経営戦略 Vol.39 「ねじキューピー」に学ぶ!マニアに受けるヒットの王道

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
全国に「ご当地キューピー」が溢れるなか、30年続く港区のねじ専門店が企画した「ねじキューピー」が異例のヒットを記録しているようです。そこには、今どきの商品開発の方向性や、古い業界の殻を打ち破る発想法が見え隠れしています。「ねじキューピー」のヒットに学びましょう。

老舗のねじ屋が「キューピー」でブレイク!?

 「ねじキューピー」がにわかに世間を騒がせているようです。このところ、出張先の土産物屋をのぞくと、全国各地に「ご当地キューピー」が存在し、北は北海道の「まりもキューピー」から、南は沖縄の「ゴーヤーキューピー」まで、そのラインナップはなかなか見事なものがあります。その人気を知った港区のねじ専門店が、キューピーにねじを着せたらどうなるだろう……と、この「ねじキューピー」を思いついたわけです。

 私の主宰する「高収益トップ3%倶楽部」では、日ごろから「世の中は自分のためにお金を出して実験してくれている」を合言葉に、他業界で起きていることを経営のヒントに、より自社のビジネスをブラッシュアップすることを教えているのですが、この「ねじキューピー」のヒットは、まさにそれを地で行くような展開です。

 「ねじキューピー」の生みの親は、東京都港区の「三和鋲螺(さんわびょうら)」の3代目に当る石井健友さんという方のようですが、この会社は30年続く神谷町のねじ専門店で、通常は内装を手がける職人や自動車関係の業者など、“専門職御用達”で、一般消費者が足を踏み入れることはほとんどなかったといいます。ところが、2007年9月にこの「ねじキューピー」を売り出したところ、当の発案者も首をかしげるほどのブレイクぶりなのです。

 

“万人ウケ”は必ずしも正解にあらず

 当初は、「ご当地キューピーが流行ってるので、“ねじキューピー”もあったらおもしろいかな」と、「ほんの思いつき」程度の軽いノリから始まったビジネスでしたが、いざふたを開けてみれば……店先で細々と売るつもりだった1000個が2ヵ月で完売!その後、ネットをはじめとする各メディアに取り上げられたこともあって、入荷のたびに「即日完売」を繰り返し… 今では、次の入荷日が決まると、各ニュースサイトに取り上げられるほどの人気ぶりなんです。

 

 

 

 このねじキューピーには、基本タイプのほかに、実物のねじを手にした「ねじレンジャー」や、頭にリボンのごとく蝶型のナットを付けた「ねじウィング」、キラキラビーズが付いた「ねじキラリ」などのバリエーションがあるんですが、いずれも“家族総出”で内職作業をしているそうです。大量生産とは違った「限定」感と、手作りチックな温かさが、多くの人に受け入れられた秘訣なのかもしれません。購入者は男女を問わず、また年齢層も幅広いのが特徴的で、なぜか年配の男性にもウケているみたいです!(^^)!

 この「ねじキューピー」、冷静に見れば、かわいいんだかかわいくないんだか、ちょっと微妙なデザインですが、その微妙なテイストが、「あるターゲット層」のハートを強く揺さぶるのです。

 じつはここが、今どきの商品開発のキモでもあるのですが、決して「万人ウケする商品が正解ではない」ということです。確率的には300人に1人かもしれませんが、そこには、マニアと呼ぶに近い層のユーザーが存在していて、そこ届いた商品や情報は、またたく間に広がる…これが、今どきの「ヒットの王道」なのです(*^^)v

 

産業資材を一般ユーザーに届けるセンス

 ところで、2007年話題になった商品に「プチプチ」があります。お菓子などの緩衝材に使われるあのシートですが、さまざまなしかけをして、ターゲットを一般ユーザーにシフトしたところ、まったく違ったマーケットが生まれたわけです。

 

 

 

 

 最近は、テレビ番組でも、工場見学をしたり、産業用の機械を使ったりするのをよく目にするようになりました。それを見て私は、今までは一般消費者の目に触れることのなかった機械や素材を直接見せることは、マーケティング上とってもおもしろいと思っていたのですが、この「ねじキューピー」のヒットは、そんな流れからも来ていると思います。

 それにしても、この会社は、ねじキューピーを作ったことで、いったいどのくらいの広告宣伝効果を得たのでしょうか。考えるとちょっと悔しくなりますが(笑)、「キューピー」を自社のキャラクターに起用したのと同じことですから、その効果は絶大なはずです。「三和鋲螺(さんわびょうら)」という、失礼ながらちょっと古臭い社名とのミスマッチも、またいいですよね。今っぽいカタカナ社名の企画会社の製品じゃなく、「老舗のねじ屋さんが作っている」というストーリーに、妙な信憑性をかもし出します。

 こんなふうに、業界の体質が古ければ古いほど、ちょっとしたセンスと工夫で、他社を一気に抜ける戦略が取れるものです。このコラムをお読みの方のなかにも、そういう意味で「成功」に近い位置にいる方も少なくないように思います。ぜひ、この事例を参考に、自分なりのアイデアを絞ってみてください(@^^)/~~~

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