経営戦略 Vol.43 名作文学がヨコ書きに!? コンテンツの再利用で収益を上げるための視点

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
昨今「若者の活字離れ」が進んでいるようですが、そんななか、全文横書き!しかも、本文にもオレンジや緑といったカラフルな文字色を使った「ケータイ名作文学」が登場しました。大手出版社では、表紙にタレントの写真を使うなど、若者の“ジャケ買い”を狙った戦略を採っているようですが、そこにはコンテンツの再利用でヒットを生むために外せない発想が見え隠れしています。

ヨコガキで読む名作文学

 読書の秋とはいうものの、昨今、『若者の活字離れ』が進んでいるようです。そんななか、出版界も“攻めの一手”を投じたようで、先月(2008年8月)、ゴマブックスは『ケータイ名作文学』の刊行をはじめました。なんと全文ヨコ書き!しかも、本文にもオレンジや緑といったカラフルな文字色を使い、書籍化された他のケータイ小説の判型に近い四六判変型を採用した、まさに若者狙いのシリーズです。

 第一弾は夏目漱石の『こころ』と、太宰治の『人間失格』。次いで夏目漱石の『坊ちゃん』、太宰治の『斜陽』、芥川龍之介の『蜘蛛の糸・他8編』の3作が加わったようですが、表紙には、大ヒットした携帯小説『赤い糸』の映画とドラマに主演する南沢奈央さんの写真を使うなど、完全に“ジャケ買い”(=音楽を視聴することなくジャケットから受ける印象だけで CDなどを買うこと)を意識しています。

 同社でも「『タテ書きは教科書のようで読む気がしない』と抵抗感を持つ若い人も多い。片手でさくさく読めるケータイ小説の“軽さ”を書籍でも実現し、若い世代にももっと名作に触れてほしい」と話していますが、これが時代の流れというものなのでしょうか。一瞬、名作文学を“軽く”してどうする…という気がしないでもないですが(――;)。

 

小説も“ジャケ買い”の時代!?

 じつは、こうした動きは、他の出版社でも起きていて、これまでおとなしめの装丁が主流だった名作小説に、大手出版社が次々と斬新な企画を取り入れているようです。角川文庫では、期間限定ではあるものの、太宰治の『走れメロス』などに、俳優の松山ケンイチさんの写真を使用しています。

 また、集英社文庫では、昨年(2007年)の夏に、同じく太宰治の『人間失格』の表紙を、人気マンガ「デスノート」の小畑健さんのイラストに変えたところ、21万部のヒットに繋がった実績を持ちます。その実績を踏まえ、今年も川端康成の『伊豆の踊り子』の表紙を、『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦さんが描くなど、新たに4作品の表紙を若者向けに変えています。

 老舗の新潮文庫でも、この夏の文庫フェアに合わせて、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』など、4作品の表紙を光沢のある青やピンクの単色カバーにしたところ、その高級感が受け、売れ行きが昨年の2倍以上に伸びたそうです。

 いずれにしても、この事例から、小説自体の内容は少しも変わっていないのに、「見せ方」の工夫だけで、マーケットは広がるのだという事実を知ることができます。出版社だけでなく、われわれ一般企業でも、商品やサービスの告知の仕方はもちろんのこと、社内に眠る「コンテンツ」の活かし方の視点として、大いに学ぶべき点がありますよね(*^^)v。

 

ターゲット層の望むカタチで提供せよ!

 一方、音楽業界では、復刻版の動きが活発になってきているようです。今月3日(2008年9月3日)には、『キャンディーズ・タイムカプセル』という19枚組みの完全限定版のCDBOXが発売されました。これまで発売されたオリジナルアルバム、ライブアルバム全15 タイトルを、“紙ジャケ”で完全復刻したほか、全シングルジャケットを完全復刻したブックレットも付いていて、「35,000円」はファンも納得の価格ではないでしょうか。

 また、ジュリーこと沢田研二も『SINGLE COLLECTION BOX Polydor Years』として、ポリドールレコードに所属していた時代の音源を43枚組みのCDにして発売しました。こちらも、価格は30000円ですが、「シングルを1枚1枚1プレイヤーに出したり入れたりするのが面倒臭い」とか「43枚のシングルAB面をギュッと詰め込めば6枚ほどでOKなはず。半額にできるのでは?」といった手厳しい反応が多いみたいです。

 今回挙げた事例を見るにつけ、「ターゲット層の望むカタチにして届ける」という発想がヒットのキーであることがわかります。私は常日頃から「よい商品が売れるとは限らない」と教えています。提供側は得てして「よいものはいずれお客さんがわかってくれる」と考えがちですが、それは幻想に過ぎないのです。経営者である以上、時代の求めるもの、顧客の求めるものと常に正面から向き合う覚悟が必要です。参考にしてください(@^^)/~~~

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