経営戦略 Vol.45 二十五年間売上を伸ばし続ける、水性マーカーの手法とは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
しはらくコラムの執筆をお休みしていましたが、今月から再開しますのでよろしくお願いします(*^^)v。さて、今回の話題は水性マーカー「ポスカ」のマーケティング戦略です。この事例を題材に、今後の日本を襲う「少子化による市場の縮小」にどう立ち向かうかを考えてみたいと思います。参考にしてください。

後発組の「ポスカ」が市場で認知されるまで

 三菱鉛筆の「ポスカ」という商品をご存じでしょうか? インクの発色の良さが特徴の水性マーカーで、発売当初の80年代は、小売店の店頭などで販促用のポップを書くために多く使われていた商品です。この「ポスカ」も発売後25年を迎えるそうですが、今でも着実に売上を伸ばしていると聞いて、ちょっと感心してしまいました(*^_^*)。

 まず、この「ポスカ」の発売当初を振り返ってみると、当時はゼブラの「マッキー」や寺西化学工業の「マジックインキ」などの有力ブランドがあるなかでの参入でした。つまり、後発組として、いかにシェアを獲得していくかが課題だったのです。

 そこで同社が強く打ち出したのが『店頭の販促用ポップがキレイに書ける』という商品特徴です。「ポスカ」はインクの色素として粒子の細かい顔料インクを使用しているので、ポスターカラーのような鮮やかな色合いで書くことができ、その上、異なる色の上にも重ねて書けるのがウリでした。しかも、油性マーカーのように線がにじんだり、裏写りする心配もありません。こうした商品の特徴を十分吟味した結果、ターゲットとして狙ったのが「法人需要」だったのです。

 その狙いはみごと的中しました!店頭販促品(POP)やポスターを描く際の便利さを打ち出したところ、小売店や飲食店、はたまた教育機関などから支持され、独自のマーケットを獲得したのです。その後、商品ラインナップも少しずつ増やし、発売後3年の間に全4品目にまで拡充しました。

 

法人需要にかげりが…「ポスカ」の打った次の一手とは!?

 しかし、90年代に入ると徐々にそのかげりを見せはじめます。パソコンの普及で、店頭ポップを手書きする時代が去ったのです(――;)。開発チームは、次なる需要の開拓を求められることになりました。

 そこで、同社の開発チームが目をつけたのが、「プリクラ」をはじめとする写真シールのブレイクぶりでした。写真は「デコレーション」して当たり前の時代が来ることを予測し、プリントした写真の上に自由にデコレーションできるような極細タイプ(芯径0.7ミリ)を発売したのです。1998年のことでした。

 そして、これも狙いとおり、この極細タイプは、プリクラ世代以降の女子中高生たちにすんなりと受け入れられました。このあたりに同社のマーケティングセンスを感じます。

 さらに、3年後の2001年には描線が光に反射して輝くように、インクにガラス片を入れた「ラメ入りタイプ」も投入し、続く昨年(2008年)10月には、10代の女性向けの新シリーズ「ドゥ!ポスカ」を投入、その地位を磐石なものにしつつあるというわけです。この「ドゥ!ポスカ」は、キャップの一部に凹凸を付けて、複数のペンを連結できるようにした遊びゴコロ満載の商品に仕上がっています。

 もちろん、その陰には、10代の女性に人気のあるファッション誌に広告を載せるなど、大胆なイメージチェンジを図るための広告戦略もありましたが、こうして「ポスカ」の売り上げは再び伸び始めたのです。

 

少子化社会到来!新たな市場をどう読むか

 時代のスピードがますます速まる今、10年間売れ続ける商品を作るのは、至難の業と言えます。そんななか、25年間順調に売り上げを伸ばしているこの「ポスカ」の戦略には、われわれも多いに学ぶべき点があるのではないでしょうか。

 特にこれからの日本は少子化社会になります。どこの業界でも、黙っていたらマーケットは縮小していく一方ですので、現在の商品やサービスが順調に推移しているうちに、経営者は「次の一手」を考える必要があります。

 その戦略には、大きく分けてふたつあります。ひとつは、同じマーケット(つまり同じお客さん)に別のものを買ってもらうという戦略、新商品開発などもこの範疇です。そしてもうひとつが、同じ商品を新しいマーケットに売るという戦略です。売るものを変えずに、マーケットを開拓するという方法ですね。そのどちらを採るかは自社の立ち位置を含め十分検討する必要がありますが、後者の戦略を採る場合、この「ポスカ」のマーケティングは、多いに参考になるでしょう。

 「ポスカ」が法人需要の次に女子中高生を狙ったように、経営者は常にチャレンジ精神を欠かさず、発想力を磨いていく必要があります。この事例を参考に、自社のマーケティングをよりフレッシュな発想で見直してみてはいかがでしょうか?

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