近年、苦戦する外食チェーンが多い中、「塚田農場」などの居酒屋チェーンを経営するエー・ピーカンパニーが、かなり元気なようです。最近マスコミの注目も集めていますが、産地直送の美味しい食材を提供する流通のしくみ、来店リピーターを増やす絶妙なしかけもさることながら、私には同社が、圧倒的な「人の力」で勝っているように見えます。その人材活用術に迫ってみることにしましょう。
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不況の時代も元気な居酒屋…それが「塚田牧場」
最近、テレビ東京の「カンブリア宮殿」にも取り上げられたりと、かなりマスコミ露出度が高いので注目している方も多いと思いますが、株式会社エー・ピーカンパニーが経営する「塚田農場」「わが家」「四十八漁場」「紀ノ重」「芝浦食肉」などの店舗は、苦戦する外食チェーンが多い中、いずれも快進撃を続けているようです。
この時代、お客さんはお店の「コストパフォーマンス」に対して、かなり敏感になっています。しかし、同社は居酒屋1店舗の時代から自社養鶏場を始めたことからもわかるように、生産の“川上”にさかのぼった新業態を創り出し、地鶏の仕入価格を2分の1にまで下げることに成功するなど、他社の追随を許さないポジションを確立したのです。最近では自社で漁船を買い、地元の漁師さんの漁業権を借りて漁業にも本格参入したようです(@_@;)
また、来店リピーター獲得作戦も有名です。「塚田農場」では、いわゆるポイントカードが「名刺」になっているのです。カードの裏には「このカードは塚田農場内でのあなたの役職を証明するものです。(中略)スタンプが貯まると次の役職に昇格。ささやかながら、昇格祝いをさせて頂きます。スピード出世を目指しましょう!!」とあります。つまり、その店にたくさん通うと“出世”できるわけですね。ついつい通いたくなる気持ちもわかります(笑)。
快進撃の裏に「人の力」あり!
こうしたビジネスモデルやマーケティング戦略もさることながら、私が注目しているのは、同社の人材活用術です。ホームページに公開されている情報によると(2011年11月25日現在)、1,467名の従業員で 95店舗を運営しているようですが、 うち、パート・アルバイトが1,212名です。つまり8割以上が非正規雇用のスタッフなわけですが、外食産業では珍しいことではありません。一般的な外食チェーンでは、しっかりとしたマニュアルが完備されているので、1店舗に1人か2人の正社員がいれば、現場は回っていくものです。
しかし、同社の特筆すべきところは、パート・アルバイトさんたちの力を“マニュアルの外”に求めている点です。まさに現場の要であるパート・アルバイトさんたちに一定の裁量権を持たせ、サービスのプロとして“スペシャリスト化しようという企業文化を持っているのです。
「この範囲だったらお客様に好きにサービスしていい」と教えると、みなそれぞれ自分で考えたサービスをお客さんに提供し始めるのだそうです。たとえば、添え物のキャベツをお皿に残しているお客様には「これをアレンジしてきてもいいですか? もちろん無料です!」と声をかけ、ドレッシングで和えてちょっとしたサラダに変身させて持ってきたりします。こんなサービスを受けたら、お客さんのほうがビックリです。その店員さんは、強烈な記憶となって残ります。
“スペシャリスト化”がキーになる時代
時代が右肩上がりで、「効率」ばかりを追い求めていた時代には、マニュアルどおりに働いてくれるスタッフが大量にいる会社が勝っていけました。しかし、これからの日本は少子高齢化時代に突入し、時代は完全に「右肩下がり」にシフトしたのです。
今後は、たとえどんな職種であろうと、“スペシャリスト”になれない人間は生き残っていけないと私は考えています。上司指示のもと、マニュアルどおりの仕事をこなしていればいい、という時代はとうに終わったのです。
その点同社は、たとえパートやアルバイトであっても、「サービスのプロ」として一人前に扱っているわけですね。経営側がそうした姿勢を持つことで、スタッフはみなイキイキと独自の工夫や発想で、お客様を喜ばせるために頑張るようになるのです。 今の時代、人の問題で悩む経営者や組織化できずに苦しむ経営者も多いようですが、同社の事例はかなり参考になるはずです。機会があったら、この年末・年始にお店を利用し、生の刺激を受けてみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~