経営戦略 Vol.79 ひとり専用!? カラオケボックス進化系に注目

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 飲食店や旅行業界では、「おひとり様」向けサービスが誕生して久しいですが、ついにカラオケボックスにも「ひとり専用」スタイルのお店が誕生したようです。昨年(2011年)11月のオープン以来、予想を上回る人気ぶりのようですが、サービスの単位を見直すことで、ビジネスをブラッシュアップするという視点で眺めると、そこには大いなるヒントが隠されているようです。

「ひとり焼肉」「ひとりフレンチ」・・・そして「ひとりカラオケ」!?

 「ひとり焼肉」「ひとりフレンチ」など、近年、お一人様をターゲットにした飲食店が増えているのはご存じのとおりです。定食屋やラーメン店でも、「いかに女性の一人客が来店しやすい店作りをするか」が成功のキーであるかのように言われています。

 旅行業界でも、ひとりで躊躇なく参加できるスタイルのバスツアーが人気を呼んでいたり、今年のお正月には「一人前おせち」が好調な売れ行きを見せたようです。これまで友人グループでワイワイ参加するのが当たり前だったバスツアー、家族や親戚が集まって食べるのが当たり前とされていたおせち料理・・・どちらもサービスの単位を見直したことで、かえって話題になっているのですから、おもしろい世の中になったものです(@_@。

 そんな中、ついに「ひとり専用カラオケ」が登場したのをご存じでしょうか?
 昨年11月、JR神田駅前に誕生したひとりカラオケ専門店「ワンカラ」ですが、仕掛人は、カラオケボックス「カラオケ本舗まねきねこ」を運営する群馬県前橋市の株式会社コシダカです。日中でも1時間600円、夜間は1時間1,100円という、今どきのカラオケボックスにしてはかなり強気な価格設定にもかかわらず、予想を上回る好調ぶりなのだそうです。

ヘッドホン装着! そこはまるでレコーディングブース

 「ワンカラ」は、既存のカラオケボックスとひと味もふた味も違います。まず、ボックスではなく『ピット』と呼ばれるブースには、モニター、ヘッドホン、マイクが設置されていて、よくテレビなどで見かけるレコーディングブースのような状態で、ヘッドホンから流れるカラオケに乗せて、ひたすら歌うわけです♪

 一方、今どきのカラオケボックスは、居酒屋さん顔負けの飲食メニューを揃えていたりしますが、『ピット』内での飲食を禁止している点にも驚きました。その飲食ができない代わりに、疲れたら無料のドリンクバーが用意されているカフェスペースで休憩することができるようシステムになっているのです。そもそもカラオケとは「飲みながら歌う」ものでしたから、その根本をくつがえしてしまったような、結構大胆な発想ですよね(*^_^*)

 しかし、考えてみればこのスタイルを確立したことで、各部屋に飲み物や食べ物を運ぶスタッフはいらなくなりますから、経営面での恩恵もありますよね(*^_^*) 独自のモデルで人件費を削減し、「ちょっぴりプロ気分」を演出することで客単価アップに成功した「ワンカラ」。客単価は、都心の既存店平均の10倍近い日もあるみたいです。

成功の影に「リサーチ」あり!

 競争の激化するカラオケ業界において、これだけの客単価アップはおみごとといわざるを得ませんが、その影には社長のリサーチ力の高さがあったという事実に注目してほしいと思います。
 私は日本企業が海外の企業に簡単に負けてしまう原因は「リサーチ力の弱さ」だと思っているのですが、その点、腰高社長はすばらしいですね。 同社が行った2009年、2010年の来店調査では、約18%もの方が、一人カラオケを楽しんでいたというのです。平日の昼にとある店舗に行くと、すでに満室。そしてそのすべてがおひとり様!という状態も多かったそうです。社長は、これだけニーズがあるんだったら専用店舗があってもいけるんじゃないかと考えるようになったそうですが、そのことに気づいてからは、社長室の前に「実験機」を設置し、開発チームに暇さえあれば歌わせていたようです(笑)。

 その読みどおり、開店から1ヵ月のデータでは、来店数の3割をリピーターが占め、1時間以上の利用客が約6割もいるそうです。3ヵ月間テスト運営を実施し、1日60人くらいの来店を見込めるとわかったら、まずは山手線沿線での出店を考えているそうですよ。この事例からわかるのは、「自社のお客さんはこういう層だ」と決めてかかることの怖さです。経営者が「カラオケボックスは、飲み会の後の2次会、3次会で使われるのが主流」などと思っている限り、こんな発想は出てきませんよね。この事例を参考に、自社の「本当の顧客」は誰か、そしてそれにふさわしい「サービスの単位」を、ぜひリアルからリサーチし直してみてください(@^^)/~~~ 思い込みでビジネスすることほど、怖いものはないのですから…。

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