国内初の本格的な格安航空会社(LCC)「ピーチ・アビエーション」が就航して早3ヵ月が過ぎました。大手の半額以下も当たり前という価格設定ですが、日本の消費者というものはどんなに安くても「自分は客である」という意識が強いようです。そのためトラブルも起こっているみたいですが、そもそもマーケットとは「金額」に紐づいて形成されるべきもの。それを踏まえた「顧客対応」を同社の姿勢から学び取りたいと思います。
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日本の航空業界 新しい時代の幕開けに暗雲!?
わが国も、いよいよLCCの時代が到来しました。LCCとは、これまで運賃に含めていた機内での飲食や座席指定などのサービスを有料化し、その代わりに破格の運賃で営業する航空会社のこと。1967年に米国で設立された「サウスウエスト航空」がその原型とされ、欧米で急成長を遂げました。アジア圏でも、マレーシアの「エアアジア」やオーストラリアの「ジェットスター」が勢力を拡大しています。日本でトップバッターを切ったのが今年(2012年)3月、関西空港を拠点として就航した「ピーチ・アビエーション」です。この7月には、成田空港でも「エアアジア・ジャパン」と「ジェットスター・ジャパン」が運行する予定になっていますから、日本の空も本格的な価格競争の時代へと突入するわけですね。ピーチ社の井上慎一社長は「日本の航空業界の新しい時代の幕開けだ。電車のように手軽な航空輸送サービスが始まる」と宣言! 札幌線が片道4,780~14,780円、同じく福岡線が3,780~11,780円という驚くべき安さもあって、初便はほぼ満席状態だったようです。しかし、早くも3月末に機体トラブルから欠航便を出し、「なぜ他社便に振り替えてくれないのか!」と旅客から多くのクレームが殺到(―_―)!! 幸先のいいスタート直後に、いきなり暗雲が立ち込めた格好となりました。
資本主義社会では、マーケットは「消費金額」に紐づく
そもそもLCCとは、他社便振リ替えなど、融通の利くサービスが受けられないのが世界的な常識となっています。座席指定や機内食は有料、定刻後の搭乗手続きは認めないなど、消費者が「不便さ」を引き受ける代わりに、低価格を実現させているわけです。もちろん「座席が狭い」といった快適さを欠く部分についても、同様の解釈が成り立ちます。そうは言っても、日本の社会には「安かろう、悪かろう」が通じないムードが色濃く存在するのも事実。どうやら世界的に見ても、日本人の「お金を払った以上はお客様だ」という意識の強さは特別みたいですね(*^_^*) また潔癖なほどに「平等や公平」を求める傾向もあります。しかしながら、マーケットとは「消費金額」に紐ついて形成されるべきものなのです。3千円のお客様と3万円のお客様の扱われ方は違って当たり前。これが資本主義社会における基本ルールであり、本当の意味での公平ではないでしょうか。ですから、企業側は臆することなく「この価格にできるわけ」を、自社の顧客に丁寧に教える必要があるのです。それをせずに、顧客に求められるままにサービスを続けていれば、やがては会社の存続さえ危うくなってしまいます(>_<)
謝ったら負け!? ピーチ社の顧客対応に学ぶ
その点、ピーチ社の井上社長の顧客対応の姿勢には、見習うべきものがありました。先のトラブルの際にも、一切謝罪をしなかったのです。得てして日本企業は、とりあえず「申し訳ございません!」と先に頭を下げてしまいがちですが、こうしたケースで、会社が謝ってしまうことは「負け」を意味します。この場合だと、振り替え便を手配すべきだったと、会社が認めることになるからです。 井上社長は、そこをきちんとわかっている経営者だと、私は評価しました(*^^)v それ以降、同社は「経営がいかに大変か」をマスコミにアピールし始めましたよね(笑)。賃料が高いので空港内にオフィスが持てないこと、オフィス家具はすべてリサイクル品であること、文房具にいたってはスタッフの自前であることなどが、ワイドショーなどでもさかんに放映されてました。見方を変えれば、これも「顧客教育の一環」なのです。「会社側は、かっこいいオフィスを持つことをあきらめ、見栄を張らない経営をする代わりに、安全面には手を抜きません。お客様には多少の窮屈さや不便さを引き受けていただくからこそ、これだけの低価格運賃が実現できるんですよ」と、顧客を少しずつ教育しているわけです。自社の顧客には、「経済社会では、自分が支払う金額も、得られるサービスも、自由に『選ぶ』ことができるのだ」という事実を、上手に教えねばなりません。この事例を参考に、自社のお客様との関係性を、楽しく見直してみてください(@^^)/~~~