時代のスピードが速まるに連れ、ビジネスモデルの寿命も短くなっています。ひとつの事業を成功させれば、孫の代まで食べられた時代と違い、今やどんな業種・業態であっても、本業が元気なうちに新規事業を立ち上げておく必要があるでしょう。そこで今回から2回に渡り、新規事業プランに必要な発想法について、具体例を交えながら解説してみたいと思います(*^^)v
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■新規事業プランに必要な2種類の思考法
最近、私のところに持ち込まれる経営相談で、「新規事業の立ち上げ方」に関するものが増えています。
日本には約270万社の会社があり、270万人の社長がいるわけですが、そのうち創業社長はどのくらいいらっしゃるでしょうか? 考えてみれば、社長といえども、2代目・3代目の方や、いわゆる「雇われ社長」も多いですから、純粋にご自分でビジネスモデルを構築された方は、かなり少ないはずです。
しかし、中には一人でいくつもの会社を経営していらっしゃる方もいるわけで、つまりビジネスはその「つくり方」さえわかれば、業種を問わずに成功できる“真のプロ経営者”になれるということなのです。
さて、新規事業プランを立てるための思考法には、「拡大(拡張)」と「集中(絞り込み)」の2つの方向性があります。前者は主に大企業に向く思考、後者は主に中小企業に向く思考法になりますが、まず今回は、後者の事例からみていくことにしましょう。
■『俺フレ』にみる創業社長の強さ
長引く消費不況で苦戦する飲食店が多い中、連日長蛇の列が絶えない店があります。その名も『俺フレンチ』。通称「俺フレ」と呼ばれている、欧風立ち飲み店なのですが、老舗の有名レストランで食べれば、数万円はするだろう和牛ステーキやフォアグラが1,000円代で食べられるうえ、ワインも格安。999円払えばワインの持ち込みも可能で、立ち飲みではあれど、居酒屋チェーン並みの価格で美味しいフレンチを味わえることから人気に火がつき、16時開店を待って、昼過ぎから行列ができるみたいですよ(@_@。
この店の仕掛人は、ブックオフの創業者である坂本孝氏。同社を退いた後、新会社を設立して飲食業界に殴り込みをかけた格好ですが(笑)、昨年(2011年)9月「俺のイタリアン新橋店」オープンを皮切りに、わずか1年ちょっとで9店舗にまで拡大させた手腕はさすがだと思います。坂本氏は、古本市場を制覇した経験と過去に培ったすべてのリソースを使って、絶対に勝てるプランを作り上げたのです。創業を経験した社長は、こうした強さを持っているものです。
■勝因は「食材」への1点集中!?
先ほど、新規事業プランを立てるための思考法には「拡大」と「集中」の2種類があると言いましたが、たぶん坂本氏は、後者の思考法で徹底的に飲食店の存在価値を考え抜いたのでしょう。その結果、「安く美味しい」にたどり着き、そこに向かってすべてを絞り込んでいったはずです。「俺フレ」の食材の原価率は、なんと!4~6割に設定されているそうですが、これは業界の常識では考えられない数字です。
しかしこの店の成功は、経営資本を「食材」に1点集中させたがゆえの勝利であると思います。圧倒的に美味しい料理を、簡素な内装の立ち飲みスタイルで提供することで、他のフレンチレストランが1回転させるのも難しい時代に、連日3回転以上させていると聞きます!(^^)!
こんなふうに「集中思考」でビジネスを発想し、明らかに勝てるプランを構築できれば、ある程度確実に、顕在化しているマーケットを抑えることが可能なのです。こうなると、長引く不況は、店舗や人材を確保しやすくするための追い風にもなるでしょう。
同社は来年、「俺の割烹」という伊勢海老や松茸などの和食高級食材を提供する店の出店を計画中だそうですが、この事例に刺激を受けて、日本に“真のプロ経営者”が増えることを望むばかりです(@^^)/~~~